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天気痛 なんで雨が降ると関節が痛くなるのか?
「雨が降ると膝が痛いんです」,臨床でこんな声って頻繁に聞きますよね.
これってでも本当なのでしょうか?
私自身も気分的なものではないのかなんて考えておりましたが,天気の変化によって関節痛が強くなることは既に科学的にも証明されているのです.
今回は天気痛について,なぜ天候が悪くなると関節痛が強くなるのかについて考えてみたいと思います.
天気が悪くなると関節痛が増悪する機序
テレビの天気予報で聞いた事があると思いますが,雨が降るということは高気圧から低気圧に変化するということです.
つまり天気が悪くなるというのは気圧が下がるということです.
この気圧の変化が実は症状を悪化させる大きな原因になります.
気圧と聞いてもあまりピンとこないかもしれませんが,気圧というのは簡単に言えば空気の重さのことです.
あまり普段の生活の中で空気の重さを感じることはないと思いますが,人間にはたえずこの空気の重さが体に加わっているわけです.
そしてその空気の重さに負けないためには,体の内側から押し返している圧力も存在します.
この体の内側から押し返している圧力を内圧と呼びます.
天気が悪くなるということは低気圧になる訳ですから,この空気の重さが軽くなるわけです.
「体にかかる重さが軽くなるのであれば,逆に関節痛は軽減するのではないか?」とお考えの方も多いと思いますが,気圧が下がるということは,体の内圧の方が気圧よりも強くなってしまうということです.
つまり体の内側から押し返す力が強くなってしまうというわけです.
体の中からとなると,関節も同様ですので,関節内から圧迫する力が強くなるということです.
疼痛の原因が筋肉の問題であれば,気圧によって疼痛が増悪することは無いわけですが,変形性膝関節症のように関節内の疼痛が原因であれば,関節の中の損傷や変形している組織に圧迫が加わり,疼痛が発生してしまうということになります.
水圧と内圧
水圧の話を考えるともう少しわかりやすいかもしれません.
深海に行くと水圧が強すぎるため,もし人間が生身でそんな所にいってしまうと体に加わる圧力が強すぎて体がつぶれてしまいます.
そんな過酷な環境で生活する深海魚の場合は,その水圧に負けないぐらい体の内側の圧力がもの凄く強いわけです.
そんな深海魚がもし地上に出るとどうなるかというと,外の気圧に比べると内圧が強すぎるため,中の内臓が破裂したり目玉が飛び出したりして死んでしまうわけです.
天気が悪くなる程度の気圧の変化で,ここまで極端な反応は人間の体には起こりませんが,雨などによって低気圧になって外の気圧が下がってしまうと人間の本来もっている内圧によって体を中から押し潰してしまうわけです.
こういった現象が天気が悪くなると症状が悪化してしまう正体です。
科学的には検証されているのか?
アメリカのマクアリンドン先生ら全国にちらばっている200人の変形性膝関節症の患者さんの毎日の痛みとその地方の天気との関連性を調べております.
その結果,膝の痛みと最も関係が深かったのは気圧の変化であったと報告されております.
正常の関節内圧は大気圧よりやや低く設定されています.
関節内圧が大気圧と同じになった場合には,股関節は牽引しなければ8mm脱臼すると言われており,関節内圧を高めるためには膝の振り子運動を行う方法が有効であるとされております.
ですので低気圧が近づいてきて,関節痛が強くなってきたら,机に腰掛け膝の振り子運動を行うことが勧められます.
関節内圧以外にも疼痛が強くなる原因がある?
実は最近の研究では気圧が下がると自律神経の調節がうまくいかず,疲労物質がたまりやすいことも明らかにされております.
さらにヒスタミンの作用や湿度の影響で血行が悪くなることも,痛みを悪化させる原因になるようです.
今回は天気痛についてご紹介いたしました.
疼痛というのは原因が分からないと不安が増し,疼痛を強く感じやすいといった傾向があります.
クライアントに気圧が変化することで疼痛が強くなる原因を分かりやすく説明してあげることも,われわれ理学療法士の重要な役割だと思います.
参考文献
1)Mc Alindon T, et al., Am J Med 120: 429-34, 2007
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