寝たきりになるとどのくらい筋力が低下するのか?

介護予防
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 寝たきりになるとどのくらい筋力が低下するのか?

理学療法士・作業療法士であれば「寝たきりになると筋力が低下しますよ」,こんな指導ってクライアントにこんな指導をすることって少なくないと思います.

寝たきりになることで筋力が低下するというのは周知の事実ですが,寝たきりになるとどのくらい筋力が低下するのでしょうか?

かつてはベッドレスト研究といって寝たきりになるとどのくらい筋力が低下するかといった研究は少なくなかったわけですが,ここ最近は日本では倫理的にこういった研究を行うことが難しくなっております.

今回は理学療法士の視点で寝たきりによる廃用性筋力低下について考えてみたいと思います.

 

 

 

ベッドレスト(寝たきり)による筋力低下

ベッドレスト(寝たきり),免荷,ギプス固定などの不活動により筋萎縮と筋力低下が起こることは周知の事実です.

筋力は筋断面積に比例するため筋萎縮に比例して筋力低下が起こります

また正常な状態であっても,日常生活における運動不足は筋萎縮と筋力低下を引き起こします.

高齢者の筋萎縮や筋力低下の程度は,高齢になるほど個人によるばらつきが大きくなり,加齢による影響だけでなく日常生活の活動量や運動習慣による影響も受けます.

ベッドレスト後の膝伸展筋力の低下は、14日間で約15%, 20~35日間で約20%と報告されております.

さらには42日間のベッドレストで膝伸展筋力が約29%減少したとも報告されております.

また足底屈筋力に関しては,35日間のベッドレストで約25%低下したと報告されております.

一般に抗重力筋である足底屈筋力,膝伸展筋力がベッドレストの影響を受けやすく,非抗重力筋である足背屈筋力や上肢の筋力は影響を受けにくいといた特徴があります.

つまり寝たきりになっても低下しやすい筋力と低下しにくい筋力があるということです.

 

 

 

筋委縮と筋力低下

寝たきりによる筋委縮と筋力低下との関係に関してですが,筋量と筋力は常に同程度に低下するわけではありません

一般的に筋力低下の程度は筋断面積の低下よりも大きく,神経性の要因と筋萎縮両方の要因により筋力低下が起こるのが一般的です.

つまり筋萎縮が起こっている場合には,同時に神経性要因が原因で筋力低下が起こっている可能性が考えられます.

さらに等速性筋力の低下を検討した報告では,高速度と低速度の等速性筋力を比較すると低速度のほうが筋力の低下率がより大きいことが明らかにされております.

このように寝たきりによる筋力低下というのは筋委縮→筋力低下といった単純な話ではないわけです.

 

 

 

寝たきりによる筋萎縮

前述したように寝たきりによる筋力低下や筋萎縮は抗重力筋に起こりやすいといった特徴があります.

寝たきりによる筋萎縮に関しては,これまでMRI・CT・超音波を使用して筋のサイズを計測した検討が行われており,それらの報告の多くは下肢筋に焦点が当てられております.

特に抗重力筋が寝たきりによる影響を受けやすいとしたものが多く,筋力の変化と同様に筋萎縮の変化も寝たきり後早期から起こっていることが明らかにされております.

臥床期間が続くと大腿部の筋は,7日間で3%,20日間で7~10%,30日間で5~11%,42日間で14~17%減少することが明らかにされております.

下腿部の筋萎縮についても検討がなされており, 臥床期間が続くと,17~20日で10~12%,30~35日で6~12%減少することが報告されております.

 

 

 

 

冒頭でも述べましたが,本邦ではこういった寝たきりによって,筋量や筋力がどの程度低下するかといった研究は実施が難しくなっております.

ですので,こういったデータは本当に貴重だと思います.

重要なのは特に抗重力筋に筋力低下が起こりやすいといった点,筋委縮が起こっている際には同時に神経性要因が原因で筋力低下が起こっているといった点です.

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