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重心動揺計を使ったバランス機能評価
バランス機能低下は理学療法・作業療法の対象となる機能低下の1つですが,バランス機能評価の方法も様々です.
バランス機能評価については以前の記事でもご紹介させていただきましたが,Timed up & Go testやFunctional Reach testのようなパフォーマンステストの他にも重心動揺計をはじめとする機器を使ったバランス機能評価も多く報告されております.
今回は機器の中でも使用頻度の高い重心動揺計を使ったバランス機能評価について考えてみたいと思います.
静的バランスの測定方法
重心動揺計による重心動揺の測定は,元来めまいや平衡機能障害の診断を目的に使用されてきた歴史があります.
立位姿勢における身体重心(Center of gravity:COG)から投影される足圧中心(Center of pressure: COP)の動揺を計測でき,平衡機能の維持に働く各器官(視覚系・前庭系・体性感党系)と,それらを制御する中枢神経系の機能を把握します.
通常,COPはある一定の範囲内で揺らいでおり,重心動揺移動距離(距離因子),重心動揺面積(面積因子)などを評価をすることでリハビリテーション,体育・スポーツの幅広い分野でも利用されます.
検査には開眼・閉眼で計測した値を使用しますが,開眼・閉眼の比を算出することでロンベルグ率を使用できます.
ロンベルグ率を使用すれば,バランス測定における視覚の影響の有無を評価することができます.
立位姿勢の安定度評価指標
重心動揺計を用いた立位姿勢の安定度評価指標として,Log[(安定域面積十重心動揺面積)/重心動揺面積]が開発されております.
これは前後左右の最大重心移動での重心動揺を計測する方法で,姿勢の安定性を反映しており,その他のバランス検査やADL能力との関連性の検証で,高い信頼性が確認されております.
重心動揺計を使用したバランス機能測定の適応
計測する時間にもよりますが, 30秒間の立位保持が可能なすべての人で適応となります.
特に,重心動揺の各年代の正常値は多くのデータをもとに構築され,その基準値と比較するため信頼性の高い検査方法です.
また,各疾患の特徴となる重心動揺の波形も明確となっており,平衡機能障害のあるクライアントを評価する上では非常に有益な情報が得られます.
利点と欠点,注意点
重心動揺計は,今や非常に精度の高い検査機器として認知されています.
重心動揺計はJISにも規定されているように,位置の誤差は±1mm以内であり,読み取り値は±0. 1mmまでの精度をもった精密機械です.
各関節の動きによる重心の変化,各筋緊張の変化でもたらされる重心位置の変化,呼吸や心拍までもが,重心の変化に影響しています.
このように複雑な情報がすべて入っている重心動揺情報をどのように解析するのかが問題となります.
また,重心動揺計は高価であるため,一般的に市販されているWii (任天堂)などを代替的に使用した研究もみられます.
パフォーマンステストと重心動揺計によるバランステストの違い
バランス機能評価として,臨床の理学療法士になじみがあるのは,Timed up & Go test・Functional Reach test・開眼片脚起立時間測定のようなパフォーマンステストだと思います.
ではこれらのパフォーマンステストと重心動揺計を使ったバランス機能測定では何が異なるのでしょうか?
Timed up & Go test・Functional Reach test・開眼片脚起立時間測定のようなパフォーマンステストは,あくまでパフォーマンスを測定しているにすぎません.
つまりバランス機能を構成する主要素である平衡機能以外の筋力,感覚機能,可動域等のさまざまな運動機能の影響を受けます.
重心動揺計を使用したバランス機能測定も当然ながら平衡機能以外の平衡機能以外の筋力,感覚機能,可動域等のさまざまな運動機能の影響を受けるわけですが,パフォーマンステストに比較すると,平衡機能にターゲットを絞ってバランス機能を測定できるといったところに大きな利点があります.
今回は機器の中でも使用頻度の高い重心動揺計を使ったバランス機能評価について考えてみました.
リハビリテーションにおける評価機器の中でも重心動揺計というのは古くから用いられてきたものであり,診療報酬上も耳鼻科領域で重心動揺計による平衡機能検査が評価されていることから,重心動揺計を有する施設も少なくないと思います.
これを機会に重心動揺計によるバランス機能検査について考えてみてはいかがでしょうか?
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