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ハムストリングスに膝関節伸展作用があるって嘘でしょ
昨年まで行われた日本理学療法士学会が,今年度から完全に分科会学会単独での開催となりました.
平成30年12月15-16日に京都府で第23回日本基礎理学療法士学会が開催されました.
今回はこの第23回日本基礎理学療法士学会の一般演題の中からハムストリングスに膝関節伸展作用を有するといった興味深い研究をご紹介いたします.
ハムストリングスは膝関節を伸展させるか 数理モデルによる検証
ハムストリングスは股関節伸展作用・膝関節屈曲作用を有する筋であることは周知の事実です.
膝関節周囲の悪性腫瘍による大腿四頭筋の広範囲切除によって膝関節伸展筋力は大幅に低下し,椅子からの立ち上がりや歩行などの日常生活動作に影響を及ぼすことが報告されております.
一般的には,大腿四頭筋が膝関節伸展作用を発揮すると考えられておりますが,一部の先行研究ではハムストリングスが膝関節伸展作用を発揮する可能性が提示されております.
しかしながらどのような姿勢でハムストリングスが膝関節伸展作用を発揮するのかは明らかとなっていないのが現状です.
この研究では,数理モデルを用いてハムストリングスが膝関節伸展作用を発揮できる姿勢を明らかすることを検討しております.
研究の方法と結果
この研究では身長180cm,体重80kg の対象者を仮定し,体幹,大腿,下腿から構成される矢状面リンクモデルを構築しております.
膝関節を屈曲0~90°,股関節を伸展 30°~屈曲 90°の範囲内で変位させ,運動力学にシミュレーションを実施しております.
ハムストリングス機能の判定には,シミュレーション開始時と終了時の膝関節屈曲角度の差が用いられております.
結果ですがハムストリングスは膝関節屈曲0°~7°かつ股関節屈曲2°~62°といった条件(条件1)と,膝関節屈曲44°~90°かつ股関節伸展30°~屈曲50 °といった条件(条件2)で膝関節伸展作用を発揮することが明らかにされております.
また条件 1 では膝関節角度が小さいほど,条件 2 では膝関節屈曲角度が大きいほど膝関節伸展作用が強くなる傾向にあったようです.
この研究結果から考えられること
この研究の結果から考えると,ハムストリングスはある一定の角度において膝関節伸展作用を有すると考ええられます。
つまりこの角度での膝関節伸展作用をうまく活用することが出来れば,大腿四頭筋の機能不全を有する者であっても,椅子からの立ち上がりや歩行などの日常生活動作を円滑に遂行できる可能性が考えられます.
大腿四頭筋は膝関節伸展筋群,ハムストリングスは膝関節屈曲筋群だといった教育を受けてきたわれわれ理学療法士にとっては驚きの結果ではないでしょうか.
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