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理学療法士・作業療法士がクライアント指導に活かすコーチング
日本理学療法士協会の新人教育プログラムの中にもコーチングとティーチングに関する学習機会が設けられておりますが,理学療法士・作業療法士がクライアントの指導を行う上では,コーチングに関する知識は重要となります.
今回は理学療法士・作業療法士の視点でコーチングについて考えてみたいと思います.
コーチングって?
コーチの語源は馬車であることから,コーチングとは「その人が望んでいるところまで送り届ける」といった意味があります.
コーチングとは,相手の自発的行動を促進させるためのコミュニケーション技術のことであり,傾聰・質問・承認がその柱だといわれております.
ここでは傾聰・質問・承認について整理したいと思います.
傾聴とは?
コミュニケーションを図る上では,相手に対する先入観を持たずに会話に望むことがまず重要となります.
こうすればいいのにといった先入観は持つことなく,とりあえず相手の話を最後まで聴くことを心がけることが重要となります(ゼロポジション).
また相手のペースに合わせるというのも重要なテクニックです.
目線や声の調子などを合わせることも重要となります(ペーシング).
また頷きや相づちを適度に会話にちりばめることで話も弾みやすくなりますし,時には相手の話をオウム返しすることも,相手の話をしっかりと聞いているという意思表示になるのでとても有効です.
質問とは?
質問方法には大きく分けてクローズド・クエスチョンとオープン・クエスチョンがあります.
クローズド・クエスチョンは「はい」と「いいえ」で答えられる質問方法であり,後者は相手に考えや感情などを話させる質問方法です.
例えば,「痛くないですか?」と聞くのはクローズド・クエスチョンであり,「昨日,治療が終わった後いかがでしたか?」と聞くのはオープン・クエスチョンとなります.
オープン・クエスチョンはいろいろな情報が得やすいため,コーチング.テクニックにおいては推奨されておりますが,クローズド・クエスチョンにも,簡単に返事ができるため,すぐに結果を得られるというメリットがあります.
また質問においては,未来型・肯定型の質問を活用し,過去型・否定型の質問はあまり有効でないといわれております.
例えば,未来型・肯定型は,「筋力を強くするためには,どんな運動が必要だと思いますか?」など,焦点を未来に向けた,否定語句の含まれない質問のことであり,やる気を引き出す質問方法といわれております.
一方で過去型・否定型は,「なんで,昨日,病棟で歩く練習をしなかったのですか?」などで,このようにいわれてもやろうという気にならないことは簡単に想像がつきます.
承認とは?
承認とは許可をとる枕詞を使うことです.例えば,「これは私からの提案ですが,聞いてもらえますか?」など,指導する際に先に伝えておくと,その後のメッセージが伝わりやすくなります.
これはクライアントにとって耳の痛い話やショックを与えるかも知れないことを伝えるときなどには,特に有効です.
オープン・クエスチョンとクローズド・クエスチョンの使い分け
実際にクライアントに質問を行う際には,オープン・クエスチョンとクローズド・クエスチョンを上手に組み合わせる方法が有効です.
オーブン・クエスチョン→クローズド・クエスチョンの流れでは,「昨日,リハビリテーションの後,いかがでしたか?」とオープン・クエスチョンで尋ねたとします.その際,「楽になりました」などと即答があれば,回答の通りであると推察されます.
しかし-瞬間が空いたり,「まあ.楽になったかなあ…」などと曖昧な返答が返ってくるような場合には,即座に「はい」を期待しないクローズド・クエスチョンを続けてみると良いでしょう.例えば「あまり変わらなかったですかね?」などそうすれば,「はい」と返事が返ってくることが多いです.
クローズド・クエスチョン→クローズド・クエスチョンの流れでは,歩行練習の場面などで,「大丈夫ですか?」と理学療法士や作業療法士が「はい」を期待するクローズド・クエスチョンで質問した場合には,「はい」と即答された場合でも,その後即座に「でもちょっときつかったですかね?」と尋ねると,やはり「はい」と答える場合もあります.
得てして治療者は「はい」を期待する質問をしてしまいがちですが,クライアント側からすれば,こちらの期待感も感じてしまい,「はい」と答えてしまう場合も多いのだと思います.
あえて「はい」を期待しないクローズド・クエスチョンを有効に使っていくことも有効です.
今回は理学療法士・作業療法士がコミュニケーションに活かすコーチングについて考えてみました.
コーチングからは離れますが,私自身は指導する側の理学療法士・作業療法士に余裕がなければ,良い指導はできないと考えております.
当然ですが,われわれ理学療法士・作業療法士が心に余裕を持って仕事をすることが最も重要だと思います.
話し方や表情など,気づかないうちにぶっきらぼうになったり,こわばった表情になっていることもあります.
自分で気づくのは難しいかもしれませんが,常に笑顔で,時折自己を振り返ることが大切だと自分に言い聞かせるようにしてこの記事を終えたいと思います.
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