文章力を向上させるために,時折理学療法から離れますが,文章作成に関する記事を作成させていただいております.
われわれ理学療法士・作業療法士も情報提供書の作成をはじめ,仕事をする上で様々な文書を作成する必要があります.
また学会抄録や論文の作成においては,高い文書作成能力が要求されます.
今回はわれわれの業界でよく使われる体言止めについて考えてみたいと思います.
目次
学会抄録にありがちな体言止めの連発
「85歳男性。自宅で右大腿骨頸部骨折を受傷。術翌日に骨接合術施行。翌日より理学療法開始。」
こういった抄録内の記述ってよく見かけませんか?
体言止め,つまり述語を省略して名詞で終わる文章が続いております.
われわれの業界ではこういった文書って非常に多いと思います.
何となく意味も通じますし,問題ないのではないかと考えられる方も多いかもしれませんが,これは情報提供書,抄録や論文といった正式な文書ではNGです.
例えばこれが職場内の申し送り程度のものであれば許容できるかもしれませんが,学会抄録なんかは査読や校正なんかもありませんので,こういった文書のまま学会誌に掲載されているケースも少なくありません.
これを見ただけでこの人は常識を知らないんだなと思われてしまいます.
体言止めって?
体言止めというのは述語を省略して,体言(名詞・代名詞)で文を打ち切ることを指します.
そもそも日本語というのは文章を最後まで読まないと肯定形の文章なのか否定形の文章なのか,はたまた疑問形の文章なのかわからないといった特徴があります.
「~である」であれば肯定形ですし,「~ない」であれば否定形,「~か?」であれば疑問形となります.
そのため体言止めのように名詞で文章が終わっていると,情報としては不足しており,不完全な文章となります.
文章が曖昧となりますので,読み手の情報処理にも負荷がかかり,伝わりにくい文章となってしまいます.
体言止めってどんな時に使うの?
体言止めを使うと効果的な場合もあります.
体言止めを使えば文章にテンポや余韻が生まれます.
オープンしたばかりの通所リハ施設。5名の理学療法士が個別リハを提供。クライアントのニーズに応じたサービスを提供。
体言止めがよく使われるのはこういった広告記事が多いでしょうか.
また新聞や雑誌の記事にもこういった体言止めが使用されていることが多いです.
広告記事や新聞や雑誌の記事というのは文字数が制限されている場合が多く,少ない文字数に多くの情報を盛り込む必要がありますので,こういった場合には体言止めの使用が有効です.
先ほどの学会抄録を修正
「85歳男性。自宅で右大腿骨頸部骨折を受傷し救急入院。術翌日に骨接合術施行。翌日より理学療法開始。」
繰り返しになりますが,正式な文書に体言止めはNGです.
先ほどの文章を修正してみるとこんな表現もできると思います.
「対象は85歳の男性である。自宅で右大腿骨頸部骨折を受傷し救急入院となった。術翌日に骨接合術施行し,術翌日より理学療法開始となった。」
こんな感じで修正すれば正式な場へも提出できる内容となります.
おわりに
特にわれわれの業界では,症例報告などの際に違和感なく,体言止めを使っている方も少なくないと思いますが,基本的には体言止めは避けましょう.
クライアントの情報を的確に伝えるためには,述語をきちんと表記することが重要です.
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