先日もご紹介いたしましたが,理学療法士の臨床実習が今後大きく変わります.
臨床実習指導者からすれば臨床実習って不安でしかないといった声も良く聞かれます.
クライアントへの対応に加えて,臨床実習指導を行うというのは楽な仕事ではないかもしれません.
また近年は提示までに臨床実習生を帰宅させる流れが進んでおりますので,クライアント対応と実習指導を就業時間までに終わらせるのは,多忙の時期にはけっこう大変です.
私自身は年間で考えると,臨床における半分以上の時間を臨床実習生とともにしているわけですが,臨床実習を受け入れることで自分自身に大きなプラスがあると考えております.
今回は理学療法士が臨床実習を受け入れることのメリットについて考えてみたいと思います.
目次
どのくらいの施設が臨床実習生を受け入れているのか?
2015年の日本理学療法士協会の調査によると約7割の施設で臨床実習生の受入を行っているようです.
逆に考えれば3割もの施設が臨床実習生の受け入れを行っていないことになります.
これを多いと考えるか少ないと考えるかはさまざまだと思いますが,中には1人職場の施設もあるでしょうし,訪問リハビリテーション事業所等はクライアントのお宅へお邪魔するわけですので,実習生を受け入れにくいといった話も良く聞きます.
現行の制度では実習指導者は免許を受けた後3年以上業務に従事した者であることが唯一の臨床実習指導者の要件だったわけですが,新しいガイドラインによると,臨床実習要件として免許を受けた後5年以上業務に従事した者であり,かつ次のいずれかの講習会を修了した者であることといった要件が追加されます.
- 厚生労働省が指定した臨床実習指導者講習会
- 厚生労働省及び公益財団法人医療研修推進財団が実施する理学療法士・作業療法士・言語聴覚士養成施設教員等講習会
- 一般社団法人日本作業療法士協会が実施する臨床実習指導者中級・上級研修
要するに臨床実習指導者として実習生を受け入れるためのハードルが高くなるわけです.こうなると今後ますます臨床実習の受け入れない施設が増加することが危惧されます.
臨床実習生をどのくらいの理学療法士が担当しているの?
2010年から2015年における臨床実習を担当する理学療法士の割合を見てみますと,何らかの形で実習生を担当するものが過半数を超えていることがわかります.
また臨床実習指導者として担当する学生は年間0人と回答した理学療法士が2010年は49%であったのに対して,2015年では43.9%と低下しております.実習生は増えているにもかかわらず,実習を受け入れる施設に偏りがありますので,経時的に見れば実習生を担当する機会は増えていると考えることができるでしょう.
また私のように年間5名以上の臨床実習生を担当している理学療法士も5%弱ありますが,担当している理学療法士の多くは年間1~2名程度の学生を担当しているといったことが多いようです.
臨床実習で発生するお金の話
冒頭でも述べましたが,臨床実習を担当することに負担感を感じる理学療法士も少なくないようです.
最近は症例報告書の作成も不要となっている養成校が多くなっておりますので,私自身は以前に比較すれば指導者の負担もかなり少なくなったと考えてはおりますが,当然ながら実習生がいる時といない時では日々の時間の使い方も変化します.
実習生の方はご存じないかもしれませんが,臨床実習生を受け入れると病院・施設には1日当たり1,000円前後の実習費が支払われます.
この実習費というのは当然ながら実習指導者個人に支払われるものではなく,あくまで病院・施設の収入となるものです.
実習生を多く受け入れている施設では,この実習費が年間で数十万円にも及ぶわけですが,この費用の利用方法は様々です.
リハビリテーション科に還元され,研修費や書籍・雑誌の購入代に充てられる施設もあれば,まったくリハビリテーション科に還元されない施設もあるわけです.
お金に関することでいえば,実習担当者になって臨床実習指導者会議に出席すれば会議出席の日当を頂けます.
養成校によっては日当が無いこともありますが,5,000円~10,000円が相場だと思います.臨床実習指導者が直接的に頂けるお金はこの日当くらいです.
臨床実習は負担でしかない?
金銭的なインセンティブもないわけですし,実習指導に要する時間というのを考えると実習指導は負担でしかないと考える理学療法士も少なくないと思います.
私が臨床実習生を担当する一番のメリットは,臨床実習生に自分の考えを説明することで知識が整理できるといった点が挙げられます.
普段自分で考えていることってたくさんあると思いますが,やっぱりアウトプットしないと知識として整理できないわけです.
また知識や経験の少ない臨床実習生に自分の考えを伝えるためには,簡単にわかりやすく伝える自分の考えを必要がありますので,そういった意味でも良いトレーニングになるわけです.
また臨床実習生が実習先の病院・施設に就職するといったケースは少なくないと思います.
就職活動の際には筆記試験や面接試験を行って合否を決定するわけですが,面接試験の数分でその学生の人柄であったり学習状況を把握するのってほぼ不可能に近いと思います.
数週間の実習を見れば,おおよそその学生のキャラクターであったり,学習状況を把握できますので,雇用する側からすれば実習にきた学生の就職って一番効率的なわけです.
実践理学療法スーパーバイズマニュアル 写真で学ぶ臨床実習のポイント [ 新田收 ]
今回は臨床実習を受け入れることのメリットについて考えてみました.
新しいガイドラインによって臨床実習も大きく変わることが予想されます.
私自身は卒後に学会や研修会で実習生に声をかけてもらうのを何よりうれしく思います.
また私の施設では私自身が実習を担当して,その後入職した職員も数名おります.
日々の業務の中で,実習生だった彼ら彼女らの成長を感じられることもしばしばで,お金には変えられない喜びを感じられます.
また近日中に臨床実習が始まりますが,有意義な実習を送ってもらえるように頑張りたいと思います.
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