理学療法士・作業療法士の質は低下している?

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理学療法士・作業療法士の質は低下している?

最近の学生は…」,「最近の若い理学療法士は…」,こんな言葉ってよく聞きますよね.

日本理学療法士協会長も理学療法士の質の低下とキーワードをいろいろなところで使用されておりますし,臨床実習指導者会議に参加しても学生の質が低下しているとか,若い理学療法士の質が低下しているとか,ベテラン理学療法士・作業療法士がそういった議論をしている場面というのは少なくありません.

私自身は正直なところ,質が低下しているとは全く思っておりません.

日本理学療法学術大会に参加すると,学部生の発表に度肝を抜かれたことが何度もありますし,優秀な学生は昔以上に優秀だと感じております.

成績が優秀な若い理学療法士・作業療法士または学生がいれば,成績が優秀でない理学療法士・作業療法士または学生がいるというのは昔も同じではないでしょうか?

ただそもそも質って何を指すのでしょうか?

今回は理学療法士・作業療法士の質の低下について考えてみたいと思います.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近年の学生の傾向

日本理学療法士協会の資料によると,理学療法士養成施設数および定員数は制度等の改定に伴う養成校数の増加によって,平成11年以降は急激に増加しております.

平成21年以降は横ばいでの推移となっておりますが,平成28年の段階で,養成校数は258校,定員数は 13,860名となっております.258校の中で4 年制の大学(昼間部)が102校,定員は5,087名であり,3 年制の学校(昼間部)はわずか84校,定員3,790名となっております.

 

 

 

 

学力水準を考えた場合には,一昔前には「分数ができない大学生」という本が話題となりましたが,大学生の学力低下,ゆとり教育の弊害など一時はこういった話題がメディアをにぎわせました.

 

 

特に分数,小数,パーセンテージを苦手とする学生が多く,5000円の商品が70% off と言われても,いくら安くなるのかわからない学生が少なくないわけです.

われわれ理学療法士の仕事を考えても,医師から部分荷重の指示があった際には60kgの3分の2とは40kgであるという計算をして荷重練習を行う必要がありますので,直接的にも仕事に影響があると思われます.

また経済協力開発機構加盟国の15歳を対象に実施した学習到達度調査によると,日本の数学力はトップレベルの水準を示しているわけですが,ITの進歩によって数学への興味・関心・有用性の認識については,世界で最低レベルといったことも明らかにされております.

学力を質と呼ぶかどうかは別として,今の学生の学力は確かに低下しているのかもしれません.

ただこれも冒頭でも述べたようにあくまでも平均的に学力が低下しているにすぎず,国立大学の学生等を見ると本当に優秀な学生もいるので,「最近の学生は…」とまとめて評価するのは個人的にはどうかと思っております

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近年の学生の社会性

これは私の私見にはなりますが,おそらく「質の低下」という言葉が包含するのは,基本的な学力低下のみを指すものでなく,社会性の部分を含めたものだと考えております.メディアなどでも取り上げられておりますが,スマートフォンの普及により,LINEやFacebook,Twitter,Instagram などのネット上で社会的な繋がりを持つことができるサービスSNSを利用している学生は多く,今となってはコミュニケーションツールとして欠かせないものとなっています.

私自身もこのSNSというのは上手く利用すれば自分の可能性を広げる有用なツールだと考えておりますが,一方で人と繋がっていないと不安になるといった一面もあるようです.

ネット上での繋がりが主な繋がりであることが多く,そのため対人スキルが未熟な者が多いのだと考えられております.

私自身は「質がどうこう」といった議論はおそらく学力よりも社会性の低さを元に起こるものだと考えております.

私が臨床実習指導の中で経験した例を挙げてみますと,「遅刻しそうになっても連絡ができない」,「クライアントにタメ口で話す」,「時間が守れない」,こんな学生です.臨床実習指導者会議に参加すると,実習中に考えられないような行動をする学生もいるようですが,私自身はそこまでの学生を担当したことはありません.

 

 

 

 

 

 

今回は学生の学力・社会性の低下について取り上げましたが,学生というのは3年もしくは4年経てば有資格者となり,理学療法士・作業療法士となるわけです.

学力や社会性に問題があった学生が理学療法士・作業療法士になれば,「最近の理学療法士・作業療法士は…」といった話になるのだと思います.

私の職場ではこんなことはありませんが,職場によっては他職種からも「最近のリハビリ専門職は…」といった指摘を受けることも少なくないようです.

ただ考えてほしいのは,学生・若手理学療法士・若手作業療法士にもさまざまな個性があります.

そもそも質が何なのかという議論もありますが,そのまえにひとくくりに「最近の学生・理学療法士・作業療法士は…」と議論するのは少し乱暴な気がします.

また考えなければならないのは学力や社会性に問題があるのは何も理学療法士・作業療法士の学生に限ったことではないということです.

そういった面から考えると,臨床実習もそうですが,「最近の○○は質が低下している」といった議論ではなく,「最近の若者にはどういった教育手法が適当なのか?」,そういった視点で前向きな議論をすることが重要だと思います.

クリニカルクラークシップ等は,近年の若者の変化に合わせた1つの手法なのだと思います.

私はまだ30代後半ですが,年齢を重ねても「自分の時代はこうだった.

最近の若いやつは…」みたいな話をする古い大人にはなりたくないなと思うわけです.

 

 

 

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