理学療法士・作業療法士の臨床実習がうまくいかない大きな原因として,実習生と指導者のコミュニケーション不足が挙げられると思います.理学療法士・作業療法士もヒトですので,当然相性というのがあります.学生時代の友人との付き合いというのは相性が合わない同級生とは,付き合わなくてもそれで済むわけですが,実際に社会人として働き始める上では自分と相性が合わない人ともうまくコミュニケーションを図っていく必要があります.例えば相性の合わないクライアントもいれば,相性の合わない上司や先輩と付き合う必要もあるわけです.臨床実習における臨床実習指導者とのコミュニケーションというのは,そういった社会性を磨く上での1つの練習の場と考えても良いでしょう.今回は臨床実習指導者とのコミュニケーションについて考えてみたいと思います.
目次
コミュニケーションとは
コミュニケーションというのは,互いに感情を交わし合い,お互いを理解するためになされる行為です.コミュニケーションがうまく取れないと感じている相手のことは,どんな小さなことも“悪い”方向から考えてしまうかもしれません.それを放置していると,ますます相手を遠ざけ,結果的に愛手からも遠ざけられることになります.一方でコミュニケーションが取れている相手のことは,どんなことでも“よい”方向から考えるようになっていくものです.臨床実習中に同じ誤りを犯しても,ひどく叱責される実習生もいれば,次からは気をつけましょうといった注意でことがすまされる実習生がいるのはそのためです.すなわち普段からのコミュニケーションの状況によって,同じ誤りを起こしてもその後の対応が異なるということです.これを理不尽だと感じる方もおられるかもしれませんが,こういった状況は社会の中ではよくあることです.例えばあってはならないことですが,理学療法士または作業療法士がクライアントを転倒させてしまう事故が起こったとします.普段からクライアントやクライアントのご家族との良好なコミュニケーションがとれていれば,真摯に謝罪をすれば,許していただけることも多いわけです.一方で普段からのコミュニケーションが十分に図れていないような関係性の場合には,こういった転倒事故が訴訟にまで発展してしまうといったケースもあるわけです.普段からのコミュニケーションを通じた信頼関係の構築というのが重要なわけです.実際に臨床実習では,臨床実習指導者やスタッフとのコミュニケーションの良し悪しが,実習の内容や,評価結果にも影響する可能性がかなり多いいです.
臨床実習におけるコミュニケーション
実習の初期の段階では,実習生は指導者のことをよく知らないので,どう接すればよいのか困惑することば多いわけです.実はこれは指導者側にも当てはまるわけで,指導者も実習生のことをよくわからないのでどう接すればよいのか様子を見ている状況なわけです.これはクライアント対応を行う場合も同様です.われわれ理学療法士・作業療法士がクライアント対応をする場合には,少ないクライアントに関する情報の中で,徐々にそのクライアントがどのような人かを評価して,接し方を無意識に変えているわけです.ではどうすれば相手がどんな人か情報を得ることができるかというと,コミュニケーション(言語的なコミュニケーションに限りません)に他ならないわけです.われわれはコミュニケーションを通じて相手からさまざまな情報を得て,相手を理化するというわけです.つまり相手を知るためには受け身な態度ではなく,能動的にコミュニケーションを図り,相手を評価する姿勢が重要です.実習生も臨床実習指導者がどんな人かコミュニケーションを通じて評価すればよいのです(そこまでの余裕はないかもしれませんが…).実際に理学療法士・作業療法士になって職場で働くようになった際にも,結局のところクライアントや職場のスタッフとコミュニケーションを図りながら,その人を評価していろいろな接し方をしていくことになります.こういったスキルを身につけられなければそもそも仕事ができないとも考えることができるでしょう.つまりコミュニケーション能力というのは理学療法士・作業療法士にとって必須の基本的スキルなわけです.
コミュニケーション能力を向上させるためには?
学生時代というのは自分と相性の良い友人とばかりコミュニケーションをとりがちです.前述したように社会に出ると自分と相性の良くない人とも付き合っていく必要があります.学生時代にコミュニケーション能力を向上させるためには,普段接することのない同級生とコミュニケーションをとってみるとか,話しかけにくい養成校の先生とコミュニケーションを図ってみるとか,そういった経験を増やすことが非常に重要だと思います.
実践理学療法スーパーバイズマニュアル 写真で学ぶ臨床実習のポイント [ 新田收 ]
今回は臨床実習指導者とのコミュニケーションについて考えてみました.残念なこと話ですが実際には実習中に指導者に無視されるとか,冷たくあしらわれるとか,そんなケースも少なくないようです.1対1の実習で指導者との人間関係に悩んだ時には,まず第3者に相談することが重要です.やはり一番相談しやすいのは養成校の先生でしょうか.私自身は臨床実習生と実習指導者とのコミュニケーションが取れないというのは何も実習生だけの問題ではないのではないかと考えております.われわれ指導者も改めて実習生とのコミュニケーションの取り方を考えてみる必要があると思います.
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