理学療法士・作業療法士として勤務する中で,新人理学療法士・作業療法士がとまどうことが多いのがこのリハビリサマリー(理学療法・作業療法情報提供書)の作成です.
添書などとも呼ばれますが,理学療法・作業療法の経過を記載して,他の施設の理学療法士・作業療法士や他職種に情報提供するために,このサマリーを作成するわけですが,このサマリーの作成って慣れないうちはけっこう苦労します.
今回はリハビリ情報提供書の作成について考えてみたいと思います.
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目次
何を書けばいいの?
慣れないうちは何を伝えればよいのかわからないまま,先輩に言われるがまま何とか作成したといった経験をされる方も多いと思いますが,言葉での説明とは異なり,文面だけで多施設のスタッフに担当したクライアントの情報を伝達するというのは非常に難しいものです.
私が情報提供書を作成する際には以下の項目を記載するように注意しておりますので,参考にしていただければと思います.
経過
まずは経過を記載します.急性期であれば,いつどのような形で受傷・発症したのかを詳細に記載します.
特に受傷機転というのは再発予防を考える上でも重要となりますので,詳細に記載することがポイントとなります.またどのような医学的な治療が行われたのかも重要な情報となります.
特に回復期リハビリテーション病院ではCTやMRIといった機器をもちいた精密な検査を行うことが難しい場合が多いので,医学的に検査の結果を踏まえて,どういった治療(手術療法の内容や薬物療法の詳細)を記載します.
読み手からすれば,このあたりの記述を見れば,その理学療法士・作業療法士がクライアントの病態をどこまで理解して理学療法や作業療法を行っていたのかがある程度わかります.
それから身体機能の推移や離床や歩行・日常生活動作能力の経過を記載します.
こういった身体機能の推移や能力の経過に関する情報は,その後の回復状況を予測する上でも非常に重要となります.
発症後から運動麻痺に改善が無い場合と,徐々に改善が得られている場合では,機能予後も全く異なると考えることができるでしょう.
また脳出血例などで発症後早期に機能障害が著しく改善している場合には,脳浮腫の軽減や出血が吸収されて機能が改善したのであろうといった推測もできます.
急性期の場合には安静度についても経過と合わせて,いつから荷重が開始になったとか,いつから離床が許可されたといった情報を記載しておくと良いでしょう.
入院時や初期評価時の状況
クライアントが入院となった疾病の病態を反映する情報としては入院時や初期評価時の情報というのは極めて重要です.
「入院当初は~」「初期介入時は~」といった書き出しで,初期介入時の情報をまとめると良いでしょう.
治療方針やゴールを記載
初期評価結果から,どのような問題点に着目し,どのような治療方針で理学療法・作業療法プログラムを実施したのかを記載していきます.
このあたりの記述を見れば,その理学療法士・作業療法士の頭の中がある程度は可視化できます.
次にゴール設定ですが,主治医の見解もふまえてどういった目標設定でプログラムを実施したかを記載すると良いでしょう.
クライアントの性格
易怒的な方なのか,楽観的な方なのか,理学療法や作業療法に対して積極的な方なのか消極的な方なのかといった性格の部分ですが,これは非常に重要です.
クライアントご本人の意欲に加えて,ご家族の介護力や協力の程度まで記載できるとベストです.
特に高次脳機能障害のある方や認知症を有する方の場合には,こういった応対をすると理学療法や作業療法が円滑に進行できるといった情報があれば,必ず記載しておくと,次施設の理学療法士・作業療法士に喜ばれます.
最終評価結果を記載
最後に次施設へ転院する前の評価結果を記載します.
クライアントによっては環境変化によって能力が大幅に低下する場合もありますので,転院前にどのような状況であったかを記載しておくことは重要です.
初期介入時に比較して機能がどのように改善したのか,動作能力にどの程度改善が得られたのかなどを記載しましょう.
宛名は?
宛名ですが以下のような記述方法が一般的です.
○○法人○○病院 担当理学療法士・作業療法士 様 御机下
○○法人○○病院 担当理学療法士・作業療法士 様 御侍史
*御机下(ごきか/おんきか)というのは,直接渡すほどの立派なものではありません,恐れ多いので机の下にそっと忍ばせておきますといったような謙遜の意味を含みます.
*御侍史というのも同様に,先生に直接お送りするなんて滅相も御座いません.お付きの人に送るのが精一杯ですといったような謙遜の意味を含みます.
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送付先の相手の職種を考えよう
送付先が担当介護支援専門員や看護師の場合には,あまり専門的なことを記載しても全く内容が伝わりませんので,専門用語は控えましょう.
一般的な日常生活動作能力を記載するとともに,運動麻痺の程度に関してもBrunnstrom Recovery Stageを使用せずに,重度の運動麻痺といったような表現を使った方が伝わりやすいです.
理学療法士・作業療法士同士であっても,ある特定の手技の中でのみ用いられるような専門用語はこういった文書の中での使用は控えましょう.
○○手技の○○テクニックというのがどこまで標準的なものかを考えてから記載することが重要です.
今回はリハビリ情報提供書の作成方法について考えてみました.
一番は数をたくさん記載するということが重要です.何例も記載していると自分の中でおおよそのテンプレートというのが出来上がってきます.
情報提供というのは非常に重要な仕事の1つですが,こればかりに時間をかけてクライアントへの応対時間が短縮されてしまっては本末転倒です.短時間で重要なポイントを絞って応報が提供できるとよいですね.
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