前回は変形性膝関節症の疫学についてご紹介いたしました.前回ご紹介したように変形性膝関節症は非常に多いので,理学療法士であれば必ず知識を整理しておきたいところです.今回は変形性膝関節症の分類について紹介させていただきます.分類方法も様々ですが,一口に変形性膝関節症といっても分類によって全く病態が異なりますので,まずは分類をしっかりとおさえておくことが重要です.
目次
一次性変形性膝関節症と二次性変形性膝関節症
変形性膝関節症は一次性変形性膝関節症と二次性変形性膝関節症に分類することができます.一次性関節症は明確な原因がないにもかかわらず起こるものをいいます.一次性関節症は,加齢による経年変化によって50歳から60歳ぐらいに好発します.一方で二次性変形性関節症は化膿性関節炎,骨折,脱臼などをきっかけに発症する場合が多いです.本邦における変形性膝関節症で多いのは圧倒的に一次性です(ちなみに変形性股関節症は二次性関節症が圧倒的に多いです).また一次性関節症は両側性に発症することが多いのに対して,二次性関節症は片側性に発症しやすいといった特徴もあります.
一次性変形性膝関節症の原因としては以下のようなものが挙げられます.
- 加齢
- 肥満
- 0脚やX脚
- 筋力低下
- 膝の酷使
- 体質
二次性変形性膝関節症の原因としては以下のようなものが挙げられます.
- 前十字靱帯損傷
- 半月板損傷
- 膝蓋骨脱臼
- 膝関節内骨折
内側型・外側型・膝蓋型・混合型
膝関節は3つの関節から構成されているといったことはご存知でしょうか.
膝関節は脛骨大腿関節(Tibio-Femoral joint),膝蓋大腿関節(Patello-Femoral joint),近位脛腓関節(Proximal tibio-fibular joint)の3つの関節から構成されます.変形性膝関節症を考える際には,脛骨大腿関節内側コンパートメント,脛骨大腿関節外側コンパートメント,膝蓋大腿関節といった3つの部分に変形性関節症が起こる可能性があるといったことを念頭に置く必要があります.近位脛腓関節の関節症も皆無ではないでしょうが,ほとんど聞いたことがありません.
変形性膝関節症は罹患部位によって内側型・外側型・膝蓋型・混合型に分類できます.本邦では約6割が内側型,約4割が膝蓋型(混合型含む)ですが,有訴訟率は圧倒的に内側型が高いのが特徴です.膝蓋型は膝関節屈曲位で荷重するような動作で疼痛が発生しやすいのですが,膝関節伸展位では疼痛の訴えが少ないのが特徴です.階段昇降や立ち上がりの際に膝関節屈曲位で荷重すると疼痛を伴うわけですが,代償動作によって疼痛を回避している症例も少なくありません.一方で内側型は膝関節伸展位での荷重時にも疼痛を伴いますので,有訴訟率が高く,医療機関受診者の9割以上が内側型という実情です.一方で欧米では医療機関に通院する膝関節症患者のうち内側型は6~7割とされており,残りの2~3割が膝蓋型とされております.本邦で内側型が多いのは静的アライメントがO脚の割合が多いことに起因するものと考えられます.
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重症度分類
変形性膝関節症の重症度分類といえばKellgren Lawrence分類が有名です. 本邦では以前は腰野の分類といった変形性膝関節症の重症度分類が用いられておりましたが,最近は使用されることが少なくなってきております.
GradeⅠ:微小な骨棘形成(疑),関節裂隙狭小化(−)
GradeⅡ:微小な骨棘形成,関節裂隙狭小化(残存裂隙1/2以上)
GradeⅢ:骨棘形成,関節裂隙狭小化(残存裂隙1/2以下)
GradeⅣ:著名な骨棘形成,関節裂隙狭小化(裂隙閉鎖あり)
本邦ではKellgren Lawrence分類といえば変形性膝関節症の重症度分類といったイメージがありますが,Kellgren Lawrence分類は変形性関節症の分類ですので,実は変形性股関節症や変形性足関節症の分類として用いても誤りではありません.日本では変形性膝関節症以外の分類として使用されるのは少ないのが現状ですが…特に股関節症の場合には関節裂隙の狭小化だけで関節症を評価しにくいところがあります.関節裂隙と合わせて骨頭の外側亜脱臼の程度を評価する必要があるので,あまりKellgren Lawrence分類が用いられないわけです.変形性足関節症はそもそも遭遇する機会自体が少ないので,あまり分類としても耳にしないのかもしれませんね.
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今回は変形性膝関節症の分類について紹介させていただきます.分類方法も様々ですが,一口に変形性膝関節症といっても分類によって全く病態が異なりますので,まずは分類をしっかりとおさえておくことが重要です.
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