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歩行速度測定のポイント~まさか秒数だけ記録してないですよね?~
歩行速度測定はリハビリテーションの効果判定のために,また移動能力を評価する目的で,さまざまな場面で用いられます.
理学療法士が行う評価の中でも頻度が高いので,臨床実習においても測定機会の多い評価の1つだと思います.
したがって測定方法についてきちんと整理しておくことが重要となります.
今回は歩行速度を計測する上でのポイントについてご紹介いたします.
歩行速度測定の方法
一般的には歩行速度は10mの歩行路にて測定が行われます.
10mの前後に約3m(場合によっては2m)の予備区間をとり,定常速度の10m区間の歩行にかかる時間をストップウォッチで測定して,速度を算出します.測定する距離が長い方が,データの信噸性は高くなりますが,測定スペースの関係上,近年では2.4mの歩行路での歩行速度の計測が行われる場合も少なくありません.
2.4mの歩行路においても測定における高い信頼性が示されております.
靴を履くか,裸足での計測かは測定環境に合わせて決定しますが,どの対象者も同じ条件で測定することが重要です.
またアクシデントなどで途中で止まったりする場合には,再度計測します.
検者はなるべく対象者の後側方に位置し,できるだけ正確に計測するとともに転倒リスクに備えます.
基本的には快適速度で測定しますが,場合によっては最大速度で計測を行うこともあります.
歩行速度の基準値・カットオフ値
歩行速度は高齢者にとっては,その後の転倒や死亡率を予測する重要な因子であり,歩行速度が0.7m/秒未満になると転倒しやすいことが明らかにされております.
しかしながら歩行速度が速ければ転倒しないというわけではなく,0.6m/秒未満の歩行速度は屋内での転倒と関係するものの,1.3m/秒以上の歩行速度は屋外での転倒と関連することが報告されております.
すなわち歩行速度が速くなれば,その分活動量が増え,バリアの多い環境で生活する時間が増えますので,転倒の危険性も増えてしまうということになります.
高齢者機能評価では1.0m/秒もしくは0.8m/秒を下回る場合に歩行速度が低下していると定義するものが多いです.
実はこの1.0m/秒といった基準は,横断歩道を青信号の間に横断するために必要な速度としても有名で,1.0m/秒以上であれば屋外活動を行うにも十分な速度と考えてよいと思います.
片麻痺患者においては,歩行速度によって日常生活の自立度に差が出ることも明らかにされております.0.4m/秒未満は屋内での移動のみ,0.4~0.8m/秒は屋外での限られた移動は可能,0.8m/秒より速ければ屋外での歩行が完全に自立と分類されております.
片麻痺例においては歩行速度よりも歩容が重要視される傾向にありますが,歩行速度が低下すると活動範囲もかなり狭くなってしまいますので,リハビリテーションの移動に関するアウトカムとして歩行速度が用いられるのも頷けるところです.
実は日本では歩行速度を算出することなく,10m歩行の秒数を記録することが多いのですが,必ず速度を算出して標準値と比較することが重要です.
またフィールドによっては10mの歩行路が確保できない場合も少なくありませんが,速度であれば歩行路が多少短い場合でも,基準値やカットオフ値との比較ができますので,歩行速度を算出することが重要です.
今回は理学療法士が行う評価の中でも頻度が高い歩行速度に関して,計測する上でのポイント,標準値・カットオフ値についてご紹介いたしました.
歩行速度を測定すると同時に時間的・空間的な因子である歩幅やケイデンスを合わせて測定することも重要です.
次回は時間的・空間的な因子である歩幅やケイデンスの測定方法とその意義についてご紹介いたします.
参考文献
1)Load S, et al: Gait variability in older adults: A structured review of testing protocol and clinimetric properties. Gait Posture34: 443-450, 2011
2)Quach L, et al :The non linear relationship between gait speed and falls: the Maintenance of Balance, Independent Living, Intellect, and Zest in the Elderly of Boston Study. J Am Geriatr Soc59: 1069-1073, 2011
3)Perry J, et al: Classification of walking handicap in the stroke population. Stroke26: 982-989, 1995
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