徒手筋力計を使った筋力評価~使い方を間違うと…~

理学療法評価
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前回は筋力測定におけるMMTの問題点についてご紹介いたしました.

前回の記事でもご紹介いたしましたが,MMT4以上の場合には徒手で抵抗を加える必要がありますので,絶対的な基準が存在せず,信頼性の高い量的評価が困難であるといった問題があります.

そこで一般的にはMMT4以上の場合には,筋力測定機器を用いた筋力評価が勧められます.

今回はHand Held Dynamometerを使用した筋力評価の利点や注意点について考えてみたいと思います.

 

 

 

 

目次

 徒手筋力計(Hand Held Dynamometer:HHD)を使用した筋力評価 

筋力測定機器にはさまざまなものがありますが,Hand Held Dynamometer は操作が簡便で,安価で可搬性に優れている点で臨床における筋力測定機器とし手広く使用されております.

特に固定用ベルトを使用したHand Held Dynamometerによる筋力測定は,計測値の信頼性・再現性が高く,現在のところベルト固定法を使用したHand Held Dynamometerによる筋力測定は臨床における筋力測定法のgold standardになりつつあります.

 

 

 

 Hand Held Dynamometerを用いた筋力測定に影響を及ぼす要因 

Hand Held Dynamometerを用いた筋力測定をする場合には,さまざまな要因が測定値に影響を及ぼすことを考慮する必要があります.

最も正確に筋力評価を行うには,筋収縮によって引き起こされる筋張力を計測すればよいわけですが,生体では直接的に筋収縮によって引き起こされる筋張力を計測することは難しいので,通常は関節を運動中心とした肢節の角運動の大きさ,すなわち関節トルクとして間接的に筋力を計測することとなります.

 

そのためHand Held Dynamometerで測定した筋力の結果はkgN(ニュートン:kgに重力加速度9.8m/s2を乗じた数値)として表示されます.

またHand Held Dynamometerの圧センサーをあてる位置によっても測定値が変化するため,必ず圧センサーを当てる位置をから関節中心までの距離(アーム長)を測定し,トルク(測定した筋力(kgfまたはN)×アーム長(m))として記録することが重要となります.

したがってHand Held Dynamometerを使用して筋力測定を行った場合には,筋力の単位は測定値であるkgやNではなく,「kgmNm」で表記しないと,筋力値としては役に立ちません.

 

また関節の角度によっても筋力値は異なりますので,比較する場合には関節角度を統一しなければいけません.

動作の方向にセンサーの向きをあわせて, センサー部をしっかり固定をして測定することも重要です.

さらに関節近位部を固定するかどうかによっても測定値は変わるので,検査者は十分配慮する必要があります.

力の強い大きな筋の測定では,検者の最大筋力も重要な因子となります.

検者の最大筋力が対象者より劣る場合には,検者の最大筋力までしか測定ができません.

そのため 伸縮性のない測定用の固定ベルトの使用が推奨されております.

大腿四頭筋などの大きな筋群の測定では,急激に強い力が発揮されますので,腰痛や関節障害など外傷を引き起こす危険性を伴っていることに留意することも重要です.

 

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 測定値は体重比で標準化しよう 

測定した筋力測定値を体重比(筋力/体重)で標準化することも重要です.

体重比というのは筋力(Nm)を体重で割った値(Nm/kg)のことです.

例えば,Aさん(体重100kg)とBさん(体重50kg)の等尺性膝伸展トルクを測定すると,同じ100Nmであったとします.

トルクのみを比較するとAさんもBさんの筋力値にも違いは無いわけですが,体重比で比較をするとAさんは1.0Nm/kg,Bさんは2.0Nm/kgとBさんの体重比が2倍強いことになります.

このように体重比の方がその個人の能力を反映できる数値といいえます.実際に歩行能力(歩行速度)やジャンプカなどの運動能力は,膝関節伸展筋力(Nm)よりも膝関節伸展筋力の体重比(Nm/kg)との相関が高いとされています.

 

 

上の図は膝関節伸展筋力測定の方法を図式化したものです.

Hand Held Dynamometerを使用して測定した筋力値をF(N),膝関節中心からセンサー接触部までの距離をl(m),被験者の体重をW(kg)とすると,膝関節伸展筋力体重比はFl/W(Nm/kg)となります.

 

 

 

 測定はmake testで行いましょう 

Hand Held Dynamometerを使用して筋力測定を行う場合には,センサー部の接触の方法も重要となります.

検者がセンサーを固定するような方法や検者が被験者が保持している体節をブレイクするような方法(break test)では検者の力によって測定値にばらつきが出てしまいます.

ベルト固定法ではベルトで固定されたセンサー部に向かって被験者が力を入れ,その際に発揮されたトルクを測定します.

この方法はベルト固定の工夫は必要ですが,検社の力によって測定値にバラツキが生じることが少ないので,より客観的な評価を行うことが可能です.

 

 

 

 

 妥当性・信頼性が確認されている測定方法がまだまだ少ない 

現在のところHand Held Dynamometerを使用した筋力測定方法として,その妥当性や検者内信頼性・検者間信頼性が確認されているものは少ないのが現状です.

最も使用頻度が高い膝関節伸展筋力については,多くの報告で妥当性や信頼性が確認されており,動作獲得に必要なカットオフ値についても明らかにされております.

股関節外転筋力に関してもいくつかの報告で妥当性や信頼性が確認されてはおりますが,股関節屈曲筋力・股関節伸展筋力・股関節回旋筋力・膝関節屈曲筋力・足関節背屈筋力・足関節底屈筋力に関してはまだまだ測定方法が統一されていないのが現状です.

 

 

徒手筋力検査ビジュアルガイド 臨床の質を高める技術と機能評価

 

 

今回はHand Held Dynamometerを使用した筋力評価の利点や注意点について考えてみました.

Hand Held Dynamometerは10万円程度と非常に安価になっておりますので,理学療法士が使用する機会も少なくないと思います.

使用方法によっては測定値が意味をなさないこともありますので,使用方法としっかりとおさえておきましょう.

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