今回は老年症候群の中でも非常に多い尿失禁について考えてみたいと思います.
まずは尿失禁の疫学・特徴・タイプについて整理したいと思います.
目次
尿失禁の疫学~こんなに多いとは思わなかった~
わが国における尿失禁に対する疫学調査は新しいものとしては,日本排尿機能学会によりなされた調査がありますが,これは40歳以上の男女10,096例に対して,無作為で調査をおこなったものです.
この調査によりますと60歳以上の高齢者では約78%が何らかの下部尿路症状(蓄尿症状,排尿症状.排尿後症状)を有することが明らかにされております.
性別による相違としては男性は尿勢低下や残尿感が多いのに対して,女性の場合には腹圧性の尿失禁が多いのが特徴です.
男女共通しては夜間・昼間の頻尿が挙げられます.
女性における尿失禁の有訴訟率を見てみますと,少し古いデータではありますが,加齢とともに尿失禁の有訴症率は増加し,特に70歳代を超えると特に有訴症率が急激に増加することがわかります.
したがって介護予防においては多くの高齢者が尿失禁の問題を有していることを十分に認識しておく必要があります.
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尿失禁の特徴
尿失禁の特徴として他人に相談しにくいといった点が挙げられます.
老年症候群の中でも膝痛や転倒というのは他人や医療機関で相談しやすいわけですが,尿失禁というのは羞恥心のために家族にさえ相談できないといった場合も少なくありません.
一方で尿失禁というのは直接的に生命を脅かすものではありませんので,病院を受診する人が少ないのも特徴的です.したがって困っている人が多いわけですが,そのまま放置されている場合が少なくありません.
尿失禁がひどくなりますと日常生活動作も制限されてしまいますし,介護する立場から言えば介護負担も増加してしまいます.
また意外と気付かれないところですが,オムツの使用などが増えると経済的な負担も増えてしまうわけです.
また尿失禁が原因で外出を控えたり,他者との交流を控えるといった方も少なくありません.
尿失禁が原因で閉じこもりやうつ傾向になり生活の質までもが低下してしまうわけです.
尿失禁のタイプ
ご存知の方も多いと思いますが尿失禁には腹圧性尿失禁,切迫性尿失禁,溢流性尿失禁,機能性尿失禁といった4つのタイプがあります.
中には症状が混在しているということもあります.
泌尿器系の疾病を有しない女性の尿失禁のタイプとしてはほとんどが腹圧性・切迫性この2つが混在した混合性ということになります.
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今回は老年症候群の中でも非常に多い尿失禁について考えてみたいと思います.
まずは尿失禁の疫学・特徴・タイプについてご紹介いたしました.
次回は4つの尿失禁のタイプと理学療法における失禁改善へのアプローチについて考えてみたいと思います.
参考文献
1)本間之夫,他: 排尿に関する疫学的研究委員会排尿に関する疫学的研究. 日本排尿機能会誌14: 266-277, 2003
2)福井準之助: プライマリケアのための高齢者尿失禁マネジメント.医薬ジャーナル,2004.
3)石河修: 妊産婦の尿失禁について-統計的考察とその対策-. 産婦の進歩 44: 235, 1992
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