変形性股関節症例の疼痛の特徴~変形の程度と疼痛の強さは一致しない~

変形性股関節症
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前回は変形性股関節症例に対する理学療法評価についてご紹介させていただきました.今回からは理学療法評価の対象となる疼痛・脚長差・可動域・筋力・姿勢・歩行について変形性股関節症例の特徴を考えてみたいと思います.

目次

変形性股関節症例の疼痛はX線画像と一致しない

変形性股関節症の疼痛を考えるときに非常に重要なのは,疼痛がX線画像における関節の変形の程度と相関しないといった点です.これは変形性膝関節症でも同様の結果が報告されておりますが,変形が高度であっても疼痛の訴えが全く無い症例もいれば,変形は軽度にもかかわらず強い疼痛を訴えられる方もおられます.

左上のX線写真の症例は右股関節に軽度の亜脱臼を認め,関節裂隙がほぼ消失している状況にあり,荷重時に強い疼痛を訴えらえている症例です.一方で右上のX線写真の症例は両側に高度の骨頭の圧潰,さらに両側ともに外上方への著しい亜脱臼を伴っているにもかかわらず,ほとんど疼痛を訴えられることがありません.この2症例の疼痛の違いを考えるときに重要なのは関節の不安定性です.左側の症例は変形は軽度ですが右寛骨臼形成不全が著しく骨頭の外上方への不安定性を十分に代償できていません.一方で右側の症例は骨頭の圧潰は高度ではありますが,骨頭の亜脱臼は止まっているようにも見えます.このように変形=疼痛という方程式は成り立たないことを理解しておく必要があります.

 

変形性股関節症例の疼痛部位は?

変形性股関節症例の疼痛ですがどの部位の疼痛が出現しやすいかといった点に関しても様々な検討がなされております.本邦における報告によりますと以下のような疼痛の部位が多いことが明らかにされております.

圧倒的に多いのは鼠径部痛です.それから殿部の疼痛が続きますが,大腿前面・膝・腰部など実は股関節以外の疼痛が多いというのも特徴的です.これは変形性股関節症が股関節だけでなく隣接関節へ与える影響が非常に大きいことを物語る結果だと思います.Hip spine syndromeとかCoxitis kneeと呼ばれるような病態は股関節にとどまらず隣接関節へ悪影響を与えることがわかります.

変形性股関節症例の疼痛部位に関する海外の報告では本邦における結果とはまた異なる傾向が見られます.最も訴えが多いのは大転子周囲で77%を占め,鼠径部痛は約半数程度であったと報告されております.次いで大腿前面や大腿外側,殿部,大腿後面の疼痛も多かったと報告されております.本邦における変形性股関節症は寛骨臼形成不全に伴う二次性股関節症例が多いので,そういった違いが疼痛部位にも影響を与えているのかもしれませんね.

 

 

 

参考文献

1)Juhakoski R, et a: Factors affecting self-reported pain and physical function in patients with hip osteoarthritis. Arch Phys Med Rehabil 89: 1066-1073, 2008
2)Nakamura J, et al: Distribution of hip pain in osteoarthritis patients secondary to developmental dysphasia of the hip. Mod Rheumatol 23: 119-24, 2013
3)Poulsen E, et al: Pain distribution in primary care patients with hip osteoarthritis. Fam Pract 33:601-606, 2016

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