なぜ内側型変形性膝関節症に対する人工膝関節全置換術後に鵞足疼痛症候群が起こるのか?

変形性膝関節症

なぜ内側型変形性膝関節症に対する人工膝関節全置換術後に鵞足疼痛症候群が起こるのか?

内側型変形性膝関節症例に対して行われる人工膝関節全置換術後に経験することが多いのが,術後の膝関節内側の疼痛です.

もちろんmidvastus approachやmedial parapatellar approachでは膝関節内側の筋群に侵襲が加えられますので,術後早期には膝関節内側に侵襲に伴う侵害受容性疼痛が出現します.

しかしながら術後数週が経過しても膝関節内側に疼痛を訴える症例は少なくありません.

人工膝関節全置換術を行ったのになぜ膝関節内側に疼痛が残存するのかといった疑問を持たれる理学療法士・作業療法士もいらっしゃるかもしれませんが,この膝関節内側の疼痛の原因の1つとして鵞足由来の疼痛が考えられます.

 

人工膝関節全置換術例の疼痛-なぜ術後も膝関節内側が痛いのか?-
人工膝関節全置換術例の理学療法を考える上では,術後の疼痛は避けて通れません.人工膝関節全置換術例は人工股関節全置換術例に比較しても,術後の疼痛を訴える症例が多く,疼痛の原因を考えた上でアプローチを行うことが重要となります.今回は人工膝関節全置換術例の疼痛について理学療法士の視点で考えてみたいと思います.

 

今回は内側型変形性膝関節症に対する人工膝関節全置換術後に生じた鵞足疼痛症候群の予測因子に関する報告をご紹介させていただきます.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回ご紹介する論文

Int Orthop. 2020 Feb 11. doi: 10.1007/s00264-020-04498-w. [Epub ahead of print]

Pes anserinus pain syndrome following total knee arthroplasty for degenerative varus: incidence and predictors.

Algarni AD1.

今回ご紹介する論文は2020年に掲載された新しい論文です.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

研究の目的

Pes anserinus pain syndrome (PAPS) is a well-described condition in the native knee; however, its incidence after total knee arthroplasty (TKA) is unknown. This study aimed to determine the incidence of PAPS after primary TKA, identify potential risk factors, and assess its response to treatment. Few case reports have been published until now; to our knowledge, ours is the first study assessing the incidence and predictors of post-TKA PAPS.

鵞足疼痛症候群は正常膝でもよく出現する症状の1つですが,人工膝関節全置換術後に生じる鵞足疼痛症候群についてはあまり報告は多くありません.

この研究では初回人工膝関節全置換術後に生じる鵞足疼痛症候群のリスク要因を明らかにし,介入に対するその効果を明らかにすることを目的としております.

これまでにも少数例に関するケースレポートは報告されておりますが,人工膝関節全置換術後の鵞足疼痛症候群に関する報告というのは少ないのが現状です.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

研究の方法

A total of 389 primary TKAs performed for degenerative varus knee at a single institution by the same surgeon were analyzed. We recorded demographic variables, medical comorbidities, and clinical, radiographic, and surgical data. Specific predictors of interest were compared between post-TKA PAPS and controls.

退行性の内側変形性膝関節症に対して同一術者が施行した初回人工膝関節全置換術例389例を対象としております.

基本的属性,医学的合併症,臨床的・放射線・手術関連のデータを収集しております.

特異的な予測因子を対照群と人工膝関節全置換術後に鵞足部疼痛症候群を発症した症例で比較しております.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

研究の結果

The incidence was 5.6% (22/389). On univariate analysis, female sex (p = 0.03), body mass index (BMI) (41.3% ± 7.9; p < 0.001), and absence of pes anserinus release (p = 0.04) were significant predictors. On multivariable regression analysis, only BMI was a significant independent risk factor (p = 0.01). All patients were treated non-operatively; 81.8% responded to nonsteroidal anti-inflammatory drug-physical therapy program and 18.2% required an additional local steroid injection.

まず人工膝関節全置換術後の鵞足疼痛症候群の発生率は5.6%でありました.

単変量解析の結果,女性でBMIが高く,鵞足リリースを行っていない群ほど鵞足疼痛症候群の発生率が高い結果でありました.

多変量解析の結果,BMIのみが鵞足疼痛症候群の発生を予測する有意な関連因子として抽出されました.

鵞足疼痛症候群を発症した症例全例が非観血的治療で対応がなされ,81.8%はNSAIDS内服,18.2%はステロイド注射による治療が行われておりました.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

研究の結論

PAPS occurs after TKA; the incidence was found to be 5.6%. BMI seems to be an independent risk factor. It is a benign condition and can be effectively treated conservatively in most cases.

人工膝関節全置換術後の鵞足疼痛症候群の発生率は5.6%でありました.

BMIが予測因子となることが明らかとなりました.

全て非観血的治療で改善が可能でありましたが,今後はさらに効果的な治療について議論がなされる必要があります.

 

今回は内側型変形性膝関節症に対する人工膝関節全置換術後に生じた鵞足疼痛症候群の予測因子に関する報告をご紹介させていただきました.

残念ながらBMIといった不可変的要因しか抽出されておりません(可変的な要因ではありますがなかなか難しいのも実際ですよね)が,もう少し理学療法によって介入が可能な要因も含めた調査が必要ですね.

それにしても5.6%というのは意外に少なかったですね.

術後早期には内反アライメントの修正に伴う鵞足部の伸張痛を訴える症例は非常に多いですもんね.

本邦は高度な内反変形を呈する変形性膝関節症が多いといったことを考えると本邦で調査を行うとまた異なる結果が得られるでしょうね.

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