第7回日本運動器理学療法学会開催までに読んでおきたい研究紹介 人工膝関節全置換術関連2

投稿者: | 2019年10月3日

 第7回日本運動器理学療法学会開催までに読んでおきたい研究紹介 

 人工膝関節全置換術関連2 

一昨年まで行われた日本理学療法士学会が,昨年度から完全に分科会学会単独での開催となりました.

令和元年10月4-6日に岡山県で第7回日本運動器理学療法士学会が開催されます.

今回はこの第7回日本運動器理学療法士学会の一般演題の中から人工膝関節全置換術関連の面白そうな研究をいくつかご紹介いたします.

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 TKA後の膝関節屈曲ROMと膝蓋骨位置に理学療法が与える影響について 

 

 研究の目的 

人工膝関節全置換術(TKA)後,膝屈曲可動域は術後治療成績を左右する重要な要素の一つです.

この演題の演者らはTKA後の膝屈曲可動域にはTiltingangle(TA)と外側裂伱間距離が関与すること報告しております.

しかし,その膝蓋骨位置は理学療法によって影響を受けたのか定かではありません.

この研究の目的は理学療法によって術後の膝屈曲可動域と膝蓋骨位置が変化するかを検討することとしております.

 

 

 

 

 

 

 

 

 研究の方法 

対象は2016年1月から2018年11月の間に当院にてTKA後,理学療法を施行された症例309膝のうち基準を満たした症例からランダムに100膝を選出し対照群(男性14名,女性86名,平均年齢73.1±8.3歳)としております.

通常の理学療法に加えて膝蓋骨の外側軟部組織に対する理学療法を追加した10膝を追加群(男性1名,女性9名,平均年齢73.7±7.9歳)としております.

包含基準は術前診断が変形性膝関節症と診断された症例,術後3ヶ月以上外来理学療法を実施した症例,術後3ヶ月以降にskyline viewが撮影された症例としております.

除外基準は膝蓋骨コンポーネントの非置換例,関節リウマチ症例,人工膝関節再置換術症例,TKA施行後の関節授動術施行症例,FTAが175度以下の症例としております.

膝屈曲可動域は術後3ヶ月時点としております.

測定項目は単純X線よりコンポーネント設置角度,PCO,Joint Line,Insall Salvati ratio,膝蓋骨厚,TA,Lateral Shift,膝蓋大腿関節の外側及び内側裂伱間距離としております.

裂隙間距離は左右の大腿骨顆部の最頂点を結んだ線に対して垂線を引き,膝蓋骨関節面の両端を結んだ線に接する位置までの距離としております.

計測は3回行いその平均値を採用しております.

統計処理は対応のないt検定を用い,有位水準は5%未満としております.

 

 

 

 

 

 

 

 

 研究の結果 

平均屈曲ROMは対照群122.7±10.5°,追加群131.5±7.1°(p=0.00),TAは対照群5.0±3.4°,追加群1.0±2.8°(p=0.00),外側裂伱間距離は対照群0.44±0.22,追加群0.28±0.11(p=0.00)でそれぞれ有意差が見られております.

その他の項目に有意差はありませんでした.

 

 

 

 

 

 

 

 研究の結論 

対照群と比較して追加群は膝屈曲可動域が高値を示しました.

追加群のTAは低値を示し,外側裂隙間距離は高値を示しております.

先行研究では膝屈曲可動域が制限されている症例は膝蓋骨が外旋し外側裂隙間距離は狭小化しております.

追加群は膝蓋骨の外旋が軽度であり外側裂隙間の距離は保たれていたことが良好な膝屈曲可動域獲得に関与したと推察されます.

膝蓋骨の外側に付着する軟部組織は膝蓋骨を外旋方向へ牽引し外旋拘縮を惹起すると考え,膝蓋骨の外側に付着する軟部組織への理学療法を追加しております.

その結果,追加群の膝蓋骨外旋拘縮は軽度であったことから,理学療法は外旋拘縮の予防に有効であると考えております.

TKA後の良好な膝屈曲可動域の獲得する理学療法のひとつとして,膝蓋骨外側軟部組織の滑走性や柔軟性を維持し外旋拘縮を予防することが重要でありました.

 

 

 

 

 

 

 

 

 感想 

この研究は第6回に発表された内容をさらに発展させた内容となっております.

以前からの仮説と同様に膝蓋骨外側軟部組織の滑走性・柔軟性が屈曲可動域を獲得する上では重要であると考えられます.

経験的には膝蓋骨外側軟部組織の滑走性や柔軟性の重要性は理学療法士であれば誰もが認識されていると思いますが,この研究の素晴らしいのはそれをきちんと証明しているところです.

改めて素晴らしい研究ですね.

 

 

 

 

 

 

 

 人工膝関節置換術後患者のデュシェンヌ現象を出現させる因子の検討 

 研究の目的 

人工膝関節置換術(以下,TKA)患者で,荷重時に体幹を患側へ 傾けるデュシェンヌ現象を呈する症例を経験します.

一般的に,デュ シェンヌ現象は中殿筋の筋力低下や股関節内転の可動域制限によっ て出現するという報告を散見されます.

しかし,デュシェンヌ現象についての研究は股関節疾患が多く,他関節への検討や TKA 患者を対象 とした報告は少ないのが実際です.

この研究では,TKA 術後患者のデュシェンヌ現 象を出現させる因子を股関節・膝関節・足関節の 3 要素から検討することを目的としております.

 

 

 

 

 

 

 

 

 研究の方法 

対象者は2018 年 10 月から2019 年 4 月までに TKA を施行した患者で,再置換術例,他関節疾患合併例,受動術施行例を除 いた 28 名 34 膝(両膝 TKA 施行患者 6 名を含む)となっております.

対象者の内訳ですが男性 1 名,女性 26 名,平均年齢 73.1±7.3 歳,身長 150.7±5.1cm,体 重 59.7±8.9kg,在院日数 28.9±8.7 日となっております.

評価項目は,退院時のデュシェンヌ現象の有無,股関節内転可動域,股関節外転筋力,術後大 腿脛骨角(以下,FTA),術前膝関節伸展制限,膝関節伸展筋力,膝伸展不全(Extension Lag:Lag)の角度,足関節舟状骨沈降度 (Navicular Dropping Test:NDT)について調査しております.

デュシェ ンヌ現象の有無は,患側の片脚立位時に患側への体幹傾斜が認められる場合をデュシェンヌ現象陽性としております.

膝関節伸展筋力と股関節外転筋力はアニマ社のµTasF-1 を用いて,2 回測定した平均値をアーム長で乗じた関節モーメントを筋力値(Nm)としております.

Lag は端座位での膝関節伸展における自動・他動可動域の差を計測しております.

NDT は荷重・非荷重位にて舟状骨粗面と床面の距離を測定し,その差を算出しております.

統計解析はデュシェンヌ現象有無を従属変数,他の項目を独立変数とし,ステップワイズ法による多重ロジスティック回帰分析を行っております.

統計処理には R2.8.1 を使用し,有意水準は5% とした.

 

 

 

 

 

 

 

 

 研究の結果 

デュシェンヌ現象陽性群は24 例,無し群は10 例となっております.

デュシェンヌ陽性群の平均は,股関節内転可動域 11.7±3.9° 股関節外転 筋力 25.7±9.6Nm,術後 FTA172.7±2.2°,術前膝関節伸展制限 5.8 ±5.5°,膝関節伸展筋力 37.0±16.6Nm,Lag3.9±4.9°,NDT7.4±6.8 mm でありました.

多重ロジスティック回帰分析の結果抽出された変数は,股関節内転可動域:OR1.20,95%CI0.92‐1.58,股関節外転筋力: OR1.11,95%CI0.97‐1.27,術後 FTA:OR0.69,95%CI0.48‐0.99, Lag:OR1.61,95%CI1.04‐2.06 でありました.(モデル X 二乗検定:P <0.01)

 

 

 

 

 

 

 

 研究の結論 

オッズ比から,特に Lag はTKA 術後患者のデュシェンヌ現象への影響が大きいことが示唆されました.

羅患期間における他関節の機能低下も考えられますが,膝機能に着目した最終伸展域での支持機能獲得が重要であると考えられます.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 感想 

デュシェンヌ現象の出現には従来通り,股関節内転可動域と,股関節外転筋力が重要であると考えられますが,これらに加えてlagの改善が重要であると考えられます.

ただ変数間の単位が異なるのでオッズ比でどうこうというのは誤りでしょうね…

デュシェンヌ現象を考える際にはどうしても前額面の要因ばかりに着目しがちですが,矢状面のlagに着目した介入が重要であることが示唆される内容だと思います.

 

 

今回はこの第7回日本運動器理学療法士学会の一般演題の中から面白そうな研究をいくつかご紹介いたしました.

学会に参加される方は学会までに抄録をしっかり読み込んで参加したいですね.

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