たった2分の運動でも健康に有益?

投稿者: | 2018年12月14日

 たった2分の運動でも健康に有益? 

理学療法士はさまざまな場面で有酸素運動をはじめとする運動指導を行う機会があります.

皆様はクライアントに運動指導を行うときに運動の継続時間に関してはどのような指導をされているでしょうか?

今回は運動指導における継続時間に関して最新の研究をご紹介しながら考えてみたいと思います.

 

 

 

 運動の継続時間は? 

数十年前までは,血糖降下や脂肪の燃焼のためには30分以上継続して運動を行う必要であるというのがわれわれの業界での常識でした.

これが十数年前に細切れの運動であっても合計時間が重要であるといった認識に変わったわけですが,それでも最低10分は運動を継続しましょうといった指導をすることが多かったと思います.

 

 

 

 

 米国心臓協会年次集会で発表された最新版ガイドライン 

これまで米国の身体活動ガイドラインでは,運動は10分以上継続することが推奨されてきました.

これは米国に限ったことではなく本邦におけるエクササイズガイド等を見ても,やはりある程度継続して運動を行う必要があるといった内容の記述がみられます.

今回,米国心臓協会年次集会(AHA 2018,11月10~12日,米シカゴ)で発表された最新版のガイドラインでは,たった2分程度の歩行であっても運動することは健康に有益とする見解が示されました.

さらにこのガイドラインの詳細は米国の権威ある雑誌である「Journal of the American Medical Association(JAMA)」のオンライン版に掲載されております.

 

 

 

 

 米国における運動不足の弊害 

皆様も良くご存じのように米国における運動不足による健康被害は深刻です.

米国保健福祉省によると,米国では早期死亡の原因の10%を運動不足が占め,4人に1人が運動不足を解消すれば約7万5,000件の死亡を回避できるという計算になります.

米国保健福祉省の調べでは,週当たりの推奨運動量を実行しているのは男性では26%,女性では19%,10歳代の若者では20%に過ぎません.

運動不足が原因となる医療コストは年間で10兆円を超えると推計されているわけです.

 

 

 

 

 改訂されたガイドライン 

今回のガイドラインの改訂では,成人の週当たりの推奨運動量に変更はなく,これまでと同じく150~300分の中強度の有酸素運動または75~150分の高強度運動に加え,筋力トレーニングを週2日以上行うことが推奨されております.

また成人だけでなく3~5歳の子どもは成長と発育のため活動的であるべきで,6~17歳になると中強度~高強度の運動を毎日60分以上行うことが勧められております.

さらに妊婦や産後の女性は中強度の有酸素運動を週に150分以上行い,高齢者は有酸素運動と筋力トレーニングのほかにもバランストレーニングを行うことを推奨しております.

加えてこのガイドラインでは,慢性疾患がある患者であっても運動は必要であることが示されており,このガイドラインの対象にならない人はいないとすら考えられます.

 

 

 

 運動する時間が無いといった言い訳は通用しなくなる 

このガイドラインの一番の衝撃はたった2分の歩行でも運動を行うことは健康に有益であるという点です.

運動指導を行う中で,運動実践や運動継続を妨げる要因として,運動を実践する時間が無いといった要因が挙げられます.

このガイドラインの内容を考えると,運動する時間が無いといった言い訳は通用しなくなるということになります.

例えば仕事の中で移動にエレベーターを使用していたところを階段を昇って移動する習慣を身につけるとか,スーパーへ行った際にあえて遠くの駐車場に駐車してそこから歩くとか,短時間で運動に取り組むことのできる工夫は多くあるわけです.

ウォーキングやランニングなどのいわゆるエクササイズのみならず,日常生活の中での身体活動量を意識して,NEATを増やすことが非常に重要であると考えられます.

今後,われわれ理学療法士が運動指導を行う上でも非常に重要な視点であると考えられます.

われわれはウォーキングやランニングの方法を指導することにとどまらず,クライアントの1日の生活の流れを考えた上で,日常生活の中でどこに運動を取り入れられるか(短時間の移動等も含め)をクライアントと一緒に考えていく,そういった運動指導の方法が求められると思います.

 

 

 

1)Katrina LP,Richard PT, Rachel MB,Susan AC:The Physical Activity Guidelines for Americans.JAMA 320: 2020-2028. 2018

 

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