Lateral thrustとは?

投稿者: | 2018年10月13日

本邦における変形性膝関節症例の特徴として内側型変形性膝関節症例が多いといった特徴が挙げられます.

変形性膝関節症例に特徴的な歩容については以前の記事でもご紹介いたしましたが,変形性膝関節症例に特徴的な歩容としてLateral thrustが挙げられます.

今回は変形性膝関節症例におけるLateral thrustについて考えてみたいと思います.

山田英司変形性膝関節症に対する保存的治療戦略 (理学療法士列伝ーEBMの確立に向けて) [ 山田英司 ]

 

 Lateral thrustとは 

Lateral thrustというのは,変形性膝関節症例において臨床的に視認される歩行立脚初期の膝関節の「横ぶれ」と説明されます.

文献的な記述ではlateral thrust以外にもlateral knee motion,varus thrust,外側への動揺膝,脛骨の外側亜脱臼などさまざまであります.

問題なのはlateral thrustという概念が動的な膝関節内反運動を指すものか,脛骨の回旋運動または並進移動を指すものなのかは明確にされていない点です.Changらはlateral thrustをdynamic malalignment and instability(動的マルアライメン卜かつ不安定性)と表現しており,単なるアライメント異常だけではなく関節不安定性という要素を含んでいる可能性を指摘しています.

このように現状では,lateral thrustというのはその定義がはっきりしていない概念と考えることができるでしょう.

 

 Lateral thrustの臨床的意義 

Lateral thrustが臨床上重要視されるは,lateral thrustが変形性膝関節症の進行リスクと強く関連することが明らかにされて居るためです.

Changらは変形性膝関節症例におけるlateral thrustの存在が18カ月後のX線画像評価における変形性膝関節症の進行リスクを3~4倍高めると報告しております.

またlateral thrustを有する症例は,歩行時の外部膝関節内反モーメンが有意に大きいといった報告もあり,lateral thrustは膝関節内側コンパートメントの力学的ストレス増大の一因になると考えられます.

さらに大規模疫学調査によると内側型変形性膝関節症の進行に伴い,lateral thrustの出現率が高くなることが明らかにされております.最も興味深いのは,変形性膝関節症を内反なし群・動的内反群・静的内反群・静的内反+動的内反群の4類型に分類し歩行時の疼痛との関連を調査した報告によると,歩行時痛は静的内反+動的内反群との関連が最も強く,次いで動的内反群との関連が強いことが明らかにされております.

すなわち内反変形が強く,さらに歩行時にlateral thrustが出現する症例が最も疼痛が強いということになります.一方で静的に内反変形が著しい症例であっても動的な内反運動が少ない症例においては,荷重時痛はそれほど大きいものではないと考えられます.

X線における内反変形と疼痛については関連が無いといった点については,以前の記事でもご紹介いたしましたが,やはり疼痛を考える上では動的内反運動の原因となる脛骨の外側方向への不安定性が最も重要であると考えられる結果だと思います.

したがって内側型変形性膝関節症例における運動療法を考える上でも,こういった歩行の特徴別に介入を考える必要があると考えられます.特に動的内反が強い症例においてはOKCでの筋力トレーニングにとどまらず,荷重下で内反運動を制御するような運動パターンへ修正をしていく必要があるわけです.

 

 Lateral thrustへの介入 

前述したようにlateral thrustは変形性膝関節症の進行リスク,重症度,外部膝関節内反モーメントの増大,荷重時痛に関連する所見となります.

lateral thrustへの介入を考える上では,荷重下における内反運動の制御が重要であり,中でも適切な大腿四頭筋の遠心性収縮を用いた荷重応答期における膝関節屈曲運動の獲得,脛骨の回旋アライメントの是正,膝関節内反不安定性の制御が重要であると考えられます.

解剖学的・運動学的に考えると,膝関節周囲筋の筋活動のみで脛骨の回旋アライメントや膝関節の内反不安定性を制御するのは困難であり,頭部・体幹・股関節・足部を含めた脛骨回旋アライメント・膝関節内反不安定性に対する介入が必要であると考えられます.

また場合によっては装具や足底挿板等を用いた機能的な代償が有効な場合も多いので,疼痛を軽減する上ではこういった代償的なアプローチを考慮することも重要です.

 

今回は変形性膝関節症例におけるlateral thrustについて考えてみました.

膝関節痛と関連の強い動的内反すなわちlateral thrustを制御する上で,われわれ理学療法士が果たす役割は非常に大きいと考えられます.

Lateral thrustを制御するためには,膝関節周囲筋のトレーニングにとどまらず,頭部・体幹・股関節・足部の運動制御を含めた介入が必要だと思います.

 

機能解剖に基づいた変形性膝関節症の治療〜3タイプ8パターンの痛みと動作の治し方〜[理学療法 ME200-S 全2巻]

 

 

参考文献
1)Chang A, et al : Thrust during ambulation and the progression of knee osteoarthritis. Arthritis Rheumat50:3897-3903,2004
2)Chang A, et al: Hip abduction moment and protection against medial tibiofemoral osteoarthritis progression. Arthritis Rheumat 52:3515-3519,2005
3)Bennell KL, et al: Influence of Biomechanical Characteristics on Pain and Function Outcomes From Exercise in Medial Knee Osteoarthritis and Varus Malalignment: Exploratory Analyses From a Randomized Controlled Trial. Arthritis Care Res67: 1281-1288, 2015

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