最近よく耳にするMCIって何?

投稿者: | 2018年10月11日

私がここ数年で驚いたニュースの1つですが,2016年度の国民健康栄養基礎調査で,要介護原因に占める認知症の割合が第1位となりました.

この国民健康影響基礎調査というのは古くから行われておりますが,常に第1位は脳卒中であったのですが,ついに脳卒中を抜き認知症が要介護原因の第1位となったわけです.

実際に働いていても認知症例が増えているなといった変化を肌で実感するわけですが,データを見ると改めて認知症例の増加に驚きを隠せません.

言うまでもなく認知症は罹患してしまうと,今の医療では進行をある程度遅延させることはできても,完全に治癒させるということは困難なわけです.となるとやはり予防が重要なわけです.

ここ数年認知症予防に関連して注目されている概念としてMCI(mild cognitive impairment)が挙げられます.今回はこのMCIについて考えてみたいと思います.

 

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 MCIの定義 

MCI(mild cognitive impairment)というのは,認知機能評価を行って認知症には該当しないものの,通常の加齢によるもの以上の認知機能低下を認める状態と定義されております.

MCIの定義にはさまざまなものが報告されておりますが,最も広く用いられているものの一つとしてPetersenの定義があります.

このPetersenの定義は多くの研究がその基準を踏襲しており,MCIを理解する上では,まずこのPetersenの定義を理解しておく必要があります.

 

 

MCIの定義は以下の4つを満たすものとされております.

 認知機能低下の訴え 

認知機能低下の訴えについては「主観的記憶力低下の訴え」や「もの忘れの訴え」で判断します.

具体的には「他の人に比べて記憶力が落ちたと感じますか?」などの質問項目に対して訴えがあるような場合には認知機能低下の訴えがあると判断します.

 日常生活の自立 

日常生活の自立においても,質問紙を用いて基本的な日常生活動作が自立しているかどうかの確認を行います.

 認知症ではない 

この項目については医師から「認知症」の診断を受けていないことが前提となります.必要に応じてDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (DSM)の基準を参考に判断します.

 正常な認知機能ではない 

正常の認知機能ではないという項目は実施される研究や事業において定義はさまざまです.

一般的によく使用されている定義としては,年代別や人種・性別ごとに算出された標準値より1.5SDより大きく認知機能低下がみられる場合を認知症とするといったものが多いです.

標準値は人種や性別に算出されているものを参照することが理想です.

また認知機能を評価する場合には,記憶だけでなく注意情報処理機能・遂行機能・言語機能などさまざまな種類の認知機能評価をできるだけ実施した上で判断します.

 

MCIは同じ年代の高齢者よりも大きな認知機能低下を有していることから認知症への移行リスクが大きい反面で,ある一定の割合で正常な認知機能に戻る場合があるため,認知症予防を目指した取り組みが非常に重要となります.

MCIを早期に発見し,介入していくことが認知症予防を考える上では非常に重要であり,最近ではこのMCIを対象としたさまざまな介入研究が行われております.

 

 

 MCIの疫学 

MCIの有訴率は地域で調査されたものや病院ベースで調査されたもので少しばらつきがあり,MCIの定義も報告によって異なりますので,解釈をする際には調査方法を十分に把握しておく必要があります.MCIに関するシステマティックレビューによると,MCIには高齢者の3.0~42.0%と非常に幅広い広い数字が報告されています.本邦におけるMCIの有病率としては,18.8%であったといった報告もあります.厚生労働省の研究班による2012年の報告では,わが国におけるMCI高齢者の推定人数は約400万人にのぼると推測されております.

またMCIのうちどの程度の割合が認知症に移行しているかについても明らかにされております.

2年間における認知症への移行率は正常な認知機能を有するもので約1%とされておりますが,MCIでは約6~9%と認知症への移行リスクが高いことが明らかにされております.

また特にMCIの中でも認知機能低下が進行している者ほど,認知症に移行しやすいといった特徴があります.

これらの結果を考慮するとMCIの中でも認知機能低下の程度ができるだけ軽度な状態のときに,積極的に介入し,できるだけ早期に正常レベルへの移行を促すことが重要であると考えられます.

 

 

 

 MCIに対する介入の実際 

MCIに対する認知機能向上を目的とした理学療法としては,運動療法を用いたものが効果的な方法の1つと考えられております.

運動の種類としては,有酸素運動を用いたもの,筋力トレーニングを用いたもの,運動に認知的課題を組み合わせたdual-taskのような課題設定を行った方法などが介入方法として用いられております.

有酸素運動としてはウォーキングを用いたものが多く,自転車エルゴメーターや踏み台昇降運動などを使った有酸素運動が行われることもあります.有酸素運動を実施する際に,重要なのは運動強度です.

高齢者に対して運動療法を実施する場合には個々の状態にばらつきが多く運動強度を統一するのは難しいのです.

一般的には中等度もしくは中強度以上の運動強度での有酸素運動が推奨されますが,最大心拍数(HRmax)の60%が一つの目安になります.

今回はMCIについてご紹介いたしました.

冒頭でも述べましたが,認知症を発症すると介入によって症状を改善することは難しい場合が多いです.

早期からMCIを抽出し,有酸素運動やdual-taskトレーニング等を積極的に導入することで,予防的な介入を図ることが重要です.

最近は理学療法士・作業療法士も介護予防事業に参画する機会が増えておりますので,認知症予防に向けて積極的に関わっていく姿勢が求められます.

 

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