自費リハビリって最近よく耳にしますよね?自費リハビリサービスを提供する理学療法士は年々増えておりますが,そのメリット・デメリットについてご存知でしょうか?
今回は最近増えている自費リハビリについて考えてみたいと思います.
目次
自費リハビリが増える背景
2006年に厚生労働省によって脳血管障害を発症後の理学療法・作業療法の期間が,発症後より最大180日に制限されたのは,記憶に新しいところですが,さらに2008年には入院後半年以内に退院する患者が6割を下回る病院では診療報酬が大幅に引き下げらえました.
結果として重症患者の受け入れを断る病院が増え,平成30年度の診療報酬改定では,月に13単位(1単位は20分)を上限として認められている外来でのリハビリテーションも廃止される話が進んでおりました.
幸いこの月13単位以内での外来理学療法・作業療法の廃止は延期されましたが,平成32年度の診療報酬改定では,この月13単位以内での外来リハビリテーションの制度も廃止される可能性が非常に高い状況です.
2006年にリハビリ難民といった言葉がわれわれの業界で流行したわけですが,この月13単位のリハビリが廃止されれば,さらにこのリハビリ難民が増えることが予想されます.
現在の保険財政を考えれば今以上にリハビリの保険給付が増えるとは考えにくい状況です.
こういった診療報酬の変化の中で,このようなニーズに対応しようとしているのが自費リハビリです.
この数年で自費リハビリ業界は急速に成長しつつあります.
自費リハビリのメリットとは?
自費リハビリの場合には,健康保険の縛りがありませんので,クライアントのニーズに合わせてリハビリ期間を延長することも可能ですし,1日何単位といった縛りもありませんので,患者のニーズにあわせてサービスを提供することができます.
実際に自費リハビリを利用しているクライアントの多くは60代以下の症例であることを考えると,健康保険のような縛りの無いリハビリサービスを提供することができる環境は職場復帰を目的とした世代を対象とするサービスとしては非常に効率的であると考えられます.
診療報酬を抑制し続けなければならない状況で,平成32年度の診療報酬改定を契機にリハビリ難民がさらに増加することを考えると,自費リハビリ業界の成長は厚生労働省にとってもありがたい状況ではないでしょうか.
自費リハビリのデメリットとは? 違法? 料金は?
まず勤務する理学療法士の立場から言えば,効果がなければクライアントが来なくなりまるといった点が挙げられます.
健康保険から費用が支払われる病院でのリハビリとは異なり,クライアントから多額の費用を頂くことになりますので,理学療法士にとっても大きなプレッシャーがかかると考えられます.
これはでメリットのようにも思えますが,病院の中で緊張感のないリハビリを延々と続けるよりは,このような緊張関係が治療成績の底上げに貢献するとも考えられます.
自費リハビリの一番の問題は,クライアントがサービスを受けるために必要な費用です.
ある自費リハビリサービスでは週2回(120分/日)×2ヶ月のサービス提供で275,000円と非常に高額の費用が必要です.
現在の脳血管リハビリテーション料Ⅰの場合には20分が2450円(1割負担で245円,3割負担で735円)ですので120分で14700円,これを2月で16回行えば,235,200円ですので,その他のサービス諸々を含めてこういった費用負担ということなのでしょう.
ここで問題なのは脳卒中後遺症を有する方の場合,症状が改善してそれでリハビリを終了することができる方がどのくらいいるかということだと思います.
2ヶ月のサービスで機能に改善が得られて,それで社会復帰できれば275,000円というのもそれほど高くないと考えられるかもしれませんが,これが継続的に続くとなると,これだけの費用を長期間にわたって負担出来るのは,ごく一部の富裕層に限定されると考えられます.
元の状態に戻りたいという願いには終わりがありませんので,クライアントが利益優先のビジネスにつけ込まれる可能性も考えられます.
安全性についても大きな問題があります.
今後さらに民間リハビリの市場が拡大すれば,低レベルの業者が参入し,経験の浅い理学療法士がサービスを提供すれば自費リハビリ中の事故の発生も危惧されます.事故が起こりメディアに大きく報じられれば厚生労働省も規制せざるを得なくなるでしょう.
特に自費リハビリ施設のほとんどは医師の関与が少ないため,クライアントのリスク管理が不十分になる可能性が高く,医師が定期的にクライアントの状態をチェックするなど,質を担保する体制の構築が求められます.
今回は増える自費リハビリについて考えてみました.健康保険や介護保険で受けられるリハビリに満足できないクライアントにとっては,自費リハビリの登場によって救われたという方も少なくないと思います.
一方で費用面の問題や安全性の問題等の課題も山積しておりますので,今後は医学的な質をどう担保するかという点が大きな課題でしょうか.
いずれにしても理学療法士の1つの職域として今後さらに自費リハビリサービスが増えていくのは間違いありませんね.
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