マイクやコップを持った際に小指が立つのはなぜ?

投稿者: | 2018年9月29日

先日たまたまテレビをつけていたらマイクやコップを持った際に小指がなぜ立ってしまうのかについて取り上げられておりました.面白い内容だったので改めてなぜコップやマイクを持った際に小指が立ってしまうのか考えてみたいと思います.

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小指がなぜ立つのか?

道具の使用というの人類の進化の過程で無視することのできない行為の1つです.特に大脳皮質が今のように大きくなったのは道具の使用の影響が大きいとさえ考えられております.われわれ人間が道具を使用する場合には,道具を持つといった動作が必要になることが多いわけですが,物体を持つ動作には「握る」・「つまむ」・「つかむ」といった3つの動作に分類できます.

握る

「握る」というのはイメージ的にはかなり強く物体を把持する場合です.手すりを握るとか,買物袋を握って持つとか,比較的重量のあるものを扱う場合には,この「握る」といったパターンで行為が行われます.「握る」動作では強く力を加える必要がありますので,母指・示指・中指・環指・小指といった5本の指の屈筋に強く力を入れる必要があります.

つまむ

「つまむ」というのはいわゆる対立動作をイメージするとわかりやすいと思います.母指と他の4指を組み合わせて小さなものを把持する場合に使われる動作パターンですね.豆をつまむとか洗濯ばさみをつまむとかそういった行為がこの「つまむ」動作に該当します.「つまむ」動作の場合には屈筋に合わせて母指対立筋・小指対立筋が使用されます.

つかむ

「つかむ」という動作は大きな重量が無いので「握る」必要ないけれども,「つまむ」動作では力が不十分な場合に使用される動作のパターンになります.比較的重量は軽いけども大きさとしてはそんなに小さくないもの,例えばコップを持つとかマイクを持つとかいった場合には,この「つかむ」といった動作のパターンを使用することになります.「つかむ」動作では手指の屈筋に力を入れる必要がありますが,重量は比較的軽いものですので,そんなに大きな力を入れる必要はありません.そのため通常は母指・示指・中指といった3指で把持すれば十分な場合が多いわけです.環指・小指の屈筋まで力を入れてしまうと,力が加わりすぎて物によっては握りすぎて壊れてしまうといったこともあります.ですので「つかむ」動作の場合には,母指・示指・中指で把持し,薬指は添える程度で良いわけです.また小児期に見られる把握反射に関しては成長とともに消失するわけですが,われわれの手掌には非常に多くの固有受容器が存在しますので,環指・小指の掌側が物体に接触していると屈曲方向に力が入りやすくなってしまいます.また環指の伸展運動というのは総指伸筋によって行われますので,示指・中指を強く屈曲した状態で環指のみを独立して伸展することは通常できません.小指に関しては小指伸筋という立派な固有伸筋が存在しますので,小指を伸展することで小指による屈曲力を軽減するとともに,小指の伸展を介して環指の屈曲力を軽減させるといった働きを果たすことができます.さらに小指・環指の掌側面を物体から離すことで握りこむように力を強く入れずにすみます.このように小指を立てる動作にはちゃんと意味があるのです.

小指を立てる動作のイメージ

日本では小指を立てる動作ってあまりイメージが良くありませんよね.特に男性が小指を立てているのを見ると,ナルシストに見えたり,気取っているように見えます.カラオケなんかで独りの世界に入っている時なんかはまさにそうですが,講演なんかで講師の先生が小指を立ててマイクを持ってたりすると,講演内容が頭に入ってきません.

ちなみに日本では小指を立てる動作は「女性や,彼女」を指しますが,中国では小指を立てると「ヘタクソとかしょうもない」といった意味になります.さらにインドでは小指を立てると「トイレに行きたい」といった意味になりますので注意が必要です.国によってここまで意味が違うんですね.

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小指が立たないようにするには

前述したように小指を立てる動作には解剖学的には意味があるわけですが,そうはいっても小指が立ってしまうのって恥ずかしいですよね.小指が立たないようにするにはいくつか方法があります.1つははなから握りこんでしまうということです.こうすると小指が立ってしまうことはありませんが,数時間も講演のマイクを握りこんでいると非常に疲れてしまいます(カラオケ程度であればよいですが).またコップなど握りこみすぎるとまずいようなものもあるでしょう.私が実践しているのはPIP・DIP関節を伸展しMP関節を屈曲するようにしてマイクを把持する方法です.これはPNF(Proprioceptive Neuro Facilitation)における虫様筋握りと呼ばれるものですが,こうすれば強く握りこむこともなく小指が立つこともありません.

今回はマイクやコップを持った際に小指がなぜ立ってしまうのかについて考えてみました.無意識に小指が立ってしまうははずかしいので皆さんも注意しましょう.

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