理学療法士実習生の自殺が後を絶たない

投稿者: | 2018年9月14日

9月13日付で日本理学療法士協会から以下のような警告が会員へ向けて発信されました.

残念な話ですが理学療法士を目指す実習生の自殺が後を絶ちません.

今回は臨床実習のあり方について改めて考えてみたいと思います.

 


 日本理学療法士協会から出された警告(ニュース) 

理学療法士を目指す学生が自殺したのは臨床実習中のパワーハラスメントが原因として,ご遺族が養成校と実習先へ損害賠償を求めた訴訟で,平成30年6月28日大阪地裁は、パワハラと自殺の因果関係ならびに養成校と実習先の安全配慮義務違反を認め,全額支払いを命じた判決がありました.

後進の育成は,我々理学療法士に課せられた大切な使命のひとつです.

会員諸氏はぜひこの判例をご一読いただいた上で,今後とも国民の皆様の医療・保健・福祉の増進に寄与する為,引き続き知識・技術の更なる研鑽を積んでいただくとともに,臨床実習については養成校との密な連携の上、十分に情報共有しながら学生の指導にあたっていただくようお願い申し上げます.

 

 ①実習時間内での日誌・課題作成等の完結 

日誌・課題作成等については,理学療法士作業療法士養成施設指導要領に基づき,臨床実習時間内にて完結できるよう,養成校と実習先施設との十分な打ち合わせに基づき計画し,実施ください.

 ②個人情報保護の遵守 

養成校では臨床実習前に,学生に対し,必ず個人情報保護教育を受けさせるようにしてください.

また、実習先施設では患者情報の持ち出しのみならず,個人情報の取り扱いについては全ての面で慎重に行うよう指導してください.

 

 実習時間内での日誌・課題作成等の完結 

私が最も気になったのはこの実習時間内での日誌・課題作成等の完結といった部分です.

私の施設では数年前からクリニカルクラークシップ形式で臨床実習を行っておりますが,まだ実習時間内での日誌・課題作成の完結には至っておりません.

特に課題というのも課してはおりませんが,これは調べておいた方がいいよとか,ここを考えてきましょうといったくらいの指導は行っておりますので,学生はポートフォリオの中で自己学習している状況です.

そもそも実習時間内に業務が終わっていないことすらある私の場合には,学生とともに日誌・課題作成を業務時間内に行うことなど不可能に近いです.

われわれも雇用されている身ですので,患者さんの対応して単位を稼いでというのが組織の中では求められていることですので,業務時間内に学生指導に時間をさける余裕のある施設も少ないのが現状ではないでしょうか.

結果として学生は帰宅後に調べ物をしたりするわけですが,この文面からは自宅学習がNGということにならないでしょうか?

また実習時間内で日誌・課題作成とはいっても書籍やインターネットも無い環境では課題も作成しようがありませんし,学生は日誌・課題作成のために施設へ個人PCを持ち込むということを協会は想定しているのでしょうか?

On the job trainingが理想であることは理解できますが,理想と現実が乖離しすぎているのが現状ではないでしょうか.

 

 

 伝統的なレポート漬け実習 

理学療法士の実習といえば睡眠時間を削って何十枚ものレポートを作成するというのが伝統になっておりましたが,クリニカルクラークシップ形式の実習に変わってから,私の施設では症例レポートを書くといった実習形態はとっておりません.

私自身はレポート作成能力というのは理学療法士に必要な技能の1つだと思っております.論文を作成するにしても,他院の理学療法士と情報を共有するにしても,レポート作成能力というのは非常に重要な能力だと考えております.

ただ実習中にわざわざ時間を割いて行うものではないと思っております.

こういった能力は養成校で磨けばよいものだと思いますし,睡眠時間を削ってレポートを作成して,実習中にぼーっとして時間を過ごすのでは本末転倒だと思います.

 

ただ臨床実習生を見ていると非常に優秀な学生にも稀に出会えるわけで,こういった優秀な学生にとってはレポートを書かないことや,自宅内での学習時間が制限されることは,本当に不利益だなと感じることもあります.

要領の良い学生は効率的に学習できますので,睡眠時間もきちんと確保した上で,それなりに自己学習もできるのです.

自己学習の無いまま,指導者のフィードバックも不十分なまま(定時に帰宅させるとなると患者対応に追われてばかりの職場では十分な対話はできないのが現状です)といった実習では2ヶ月の実習を終えても何も得られずに見学だけで実習が終わってしまうということもあり得るのではないかと思います.

 日本の教育の体質 

日本ではできない子に焦点があてられることが多いので,できない子に合わせて課題を減らしましょう,睡眠時間を確保しましょうと底辺に教育水準を合わせる体質があります.

運動会のみんなでゴールしましょうなんていうのがまさにそうですね.

ここまで自殺者がたくさん出て,裁判でも損害賠償請求が認められたわけですから,どうしようもありませんが,優秀な学生を育成する上では最悪な環境だなとよく感じます.

結局は指導者側に学生を評価する能力がないから,こういったさまざまな問題が起こるわけですが,課題にしろ目標にしろ学生個人に合わせて設定することが重要なわけです.

臨床実習が全てではないと思いますが,底辺に合わせる理学療法士教育を見ていると今後の理学療法士の未来ってどうなんだろうと思ってしまいます.

 

今回はぼやきみたいな内容になりましたが,理学療法士の臨床実習について考えてみました.

理学療法士はクライアントを評価して,クライアントに合わせて理学療法プログラムを立案しますよね.

実習も同じだと思います.学生の能力を適切に評価して,学生のレベルに応じた水準で指導を行うことが重要だと思います.理学療法士であればそういった視点が持てるはずですが…

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