変形性膝関節症例のアライメントの診方~どこからがO脚?~

変形性膝関節症
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変形性膝関節症の理学療法評価を行う上で欠かせないのがアライメントの評価です.アライメントを評価する上では静的アライメントと動的アライメントの両者を評価することが重要となります.今回は変形性膝関節症例のアライメント評価について考えてみたいと思います.

臨床実践変形性膝関節症の理学療法 (教科書にはない敏腕PTのテクニック) [ 橋本雅至 ]

目次

変形性膝関節症とアライメント

変形性膝関節症例における下肢アライメントと変形性膝関節症の進行には密接な関係があり,膝関節内反アライメントの増大は膝関節裂隙の狭小化骨棘の増加に影響を及ぼすことが知られております. TanamasらによるSystematic reviewによると,膝関節マルアライメントは変形性膝関節症の危険因子であると結論付けられております.内側型の変形性膝関節症例においては膝関節内反アライメントが増大し,変形性膝関節症の進行とともに大腿脛骨外側角(femorotibial angle :FTA)は増大します.一般的には,FTAは正常では166~179°ですが,180°以上となると内反膝,165°以下になると外反膝と判断します.

また歩行時の立脚中期に生じるLateral thrustも変形性膝関節症の進行の危険因子となります.Changらは内側型の変形性膝関節症例を対象に,18ヵ月後の変形性膝関節症の進行度を調査しておりますが,変形性膝関節症の悪化はLateral thrustのない変形性膝関節症例が15%であったのに対し,Lateral thrustを有する変形膝関節症例は40%に達したと報告しております.膝関節内反アライメントが進行すると,荷重時の床反力が下肢軸の内側を通るため膝関節内側面に対する負荷が増大し,疼痛だけでなく内反変形が増強するという悪循環に陥ってしまうのです.したがって理学療法評価に際しては, 内反アライメントの程度を見極めることが重要となります.

 

静的アライメントの評価

アライメントの評価は,静的アライメント評価と動的アライメント評価に分類できます.静的アライメントに関して,膝関節ではO脚とQ-angleを,足部・足関節ではfoot angleと足部アーチを評価すると良いでしょう.

O脚

通常は脛骨内果を接触させた状態で,大腿骨内側顆に3横指以上距離があればO脚と判断します.

Q-angle

上前腸骨棘-膝骸骨中心-膝蓋腱で作られる角度を測定します.

foot angle

背臥位で膝蓋骨を上に向けた状態で足長軸(踵骨中央と第2中足骨頭を結ぶ直線)の傾きを測定します

極める変形性膝関節症の理学療法 保存的および術後理学療法の評価とそのアプローチ

動的アライメントの評価

動的アライメントに関しては,両脚スクワット時の膝関節内外反,骨盤前後傾,重心位置を確認することが重要です.片脚立位が可能で痛みの軽度な中高年に対しては,片脚スクワットや片脚カーフレイズを用いた動的アライメントテストを実施します.疼痛が強く困難な場合には平行棒を上肢で支持してテストを行う等の方法が有効です.評価のポイントは膝関節屈曲時に内反または外反するかをみるだけでなく,片脚立位から最大内・外反位までの膝の軌跡を追うことでtibial trackingを推定することも重要となります.

若年者の大多数は,片脚スクワット時に膝外反が生じます.一方,膝OAでは膝内反例が多く,膝屈曲時に外反する場合でも伸展位で内反する例が認められることが多いです.また動的Trendelenburgテストを用いて,股関節外転筋機能を評価することも重要です.動的Trendelenburgテストは片脚スケワット時に対側骨盤が水平位より下降するものを陽性(+),水平または挙上するものを陰性(-)と判断するテストです.また対側骨盤の過剰な挙上や体幹側屈が認められるものをDuchenne typeと判定します膝OAでは動的Trendelenburgテストが場性であっても膝内反が生じる症例や,Duchenne typeも少なくありません.またLateral thrustを有する症例は,片脚立位になった瞬間に膝内反の増大が認められる場合が多く,歩行の立脚期を反映している可能性が高いです.

今回は変形性膝関節症例のアライメント評価について考えてみました.疼痛や立位・歩行を考える上でもアライメントの評価は非常に重要です.今回は前額面のアライメントを中心に紹介させていただきましたが,当然ながら矢状面のアライメント評価も重要ですので,忘れず評価しましょう.

参考文献
1)Yoshimura N, et al: Prevalence of knee osteoarthritis. Lumbar spondylosis, and osteoporosis in Japanese men and women: the reseach of osteoarlhritis / osteoporosis against disability study. J Bone Miner Mctab27: 620-628. 2()09
2)Chang A, et al: Thrust during ambulation and the progression of knee osteoarthritis. Arthritis Rheum50: 3897-3903, 2004

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