最近よく耳にする歩行比って何?

投稿者: | 2018年9月3日

前回は歩行速度測定におけるポイントについてご紹介させていただきました.ストップウォッチを使用して歩行速度を測定する場合には,歩行速度以外にも時間的・距離的因子の簡易的な計測が可能です.今回は歩幅・歩行率・歩行比といった歩行速度と合わせて測定しておきたい歩行パラメーターの測定方法についてご紹介させていただきます.

歩幅・歩行率の測定

時間的・距離的因子の代表としては,歩幅や歩行率が挙げられます.10mの測定区間にかかった歩数をカウントしておくと、歩幅や歩行率(ケイデンス)を算出することができます.

  • 歩幅=10m(歩行距離)÷歩数

  • 歩行率=歩数÷歩行時間

歩幅や歩行率をより正確に測定する方法には以下の方法も勧められます.まずは1歩行周期に要する時間(平均値)を測定します.1歩行周期に要する時間は,接地の瞬間にストップウォッチを押し,10歩に要する時間を測定して,それを5で割ることで求めることができます.また歩行速度(m/秒)に1歩行周期時間(秒)を乗じることで,ストライド長(簡単に言うと左右の歩幅の合計)の平均値(m)が求めることができます.このストライド長を2で割れば歩幅(m)を算出することも可能です.歩行率(cadence)は10歩に要する時間(秒)を測定して1秒当たりの歩数(steps/秒)を算出し,60(秒)を乗じることで求めることが可能となります.ただし正確な歩幅や歩行率を測定したい場合や,歩幅の左右差のある対象者で左右別のステップ長を求めたい場合などは,長さのスケールと一緒に歩行をビデオカメラで撮影する必要があります.また立脚時間や遊脚時間をより正確に求めるには,フットスイッチや床反力計,加速度計などの特別な機器を用いた測定が必要となります.

高齢者理学療法学 [ 島田裕之 ]

最近よく耳にする歩行比って何?

上述いたしました歩幅と歩行率というのは男女差があることでも知られております.男性は女性よりも歩幅を大きくして歩行速度増加させるのに対して,女性は男性よりも歩行率を大きくして歩行速度を増加させる傾向にあります.このように歩行速度が同じでも歩幅が大きくて歩行率が低い方もいれば,歩幅は小さくて歩行率が高い方もいるわけです.近年,時間的または空間的パラメータを組み合わせた指標として歩行比という概念が用いられることが増えてきております.歩行比というのは歩幅を歩行率で除したものであり,その値は歩行速度を変化させても広い速度範囲で一定であるとされております.歩行比は歩幅と歩行率という2 つのパラメータの変化を 1 つのパラメータで示すことができ,歩行評価に時間的・空間的パラメータとは異なる視点を提供できます.仮に歩幅が小さく歩行率が高い,あるいは歩幅が大きく歩行率が低いという通常とは異なる歩行を患者が示した場合,歩行比は変化します.歩行速度を規定しない場合に,歩幅と歩行率という個別のパラメータからは検出できない問題を歩行比では検出することができ,歩行比を見ることで歩幅と歩行率の相対的な関係について定量化が可能となります.歩行比は歩幅と歩行率の関係によって変化するため,歩行速度とは異なる歩行時の下肢運動の協調性というような視点について表現することが可能となります.

 

先行研究では,日本人における快適歩行速度における歩行比の値は,平均年齢 25.9±4.1 歳の男性では 0.0070±0.0010,平均年齢 20.6±1.4 歳の女性では 0.0066±0.0011 と報告されています.また日本人の大学生年代の男女では,平均年齢 19.9±0.8 歳の男性は 0.0069±0.00083,平均年齢 19.6±0.6 歳の女性では 0.0060±0.00080 と報告されております.オランダ人では男性で 0.0065~0.0078, 女性で 0.0054~0.0064,65 歳から 89 歳までの日本人高齢者では自由歩行時には 0.0040~0.0059 を示し,加齢とともに歩行比が減少することが報告されています.また歩行比と転倒との関連性についても明らかにされており,快適速度から最大速度に移行した際,歩幅が短く歩行率が高いというような,いわゆる歩行比の低い高齢者では転倒リスクが高いことが明らかにされております.

 

今回は歩幅・歩行率・歩行比といった歩行速度と合わせて測定しておきたい歩行パラメーターの測定方法についてご紹介させていただきました.特に歩行比に関しては近年耳にする機会が増えておりますので,確実におさえておきたいですね.

 

参考文献

1)Nagasaki H: Walking patterns in human free walk. Gait and Posture. 1995; 3(4):268-68.
2)Nagasaki H, et al: Walking Patterns and Finger Rhythm of Older Adults. Perceptual and Motor Skills. 1996; 82: 435-47.
3)Sekiya N, et al: Optimal walking in terms of validity. J Orthop Sports Phys Ther. 1997; 26(5): 266-72.
4)外里冨佐江, 他: 歩行能力の評価 10 メートル歩行テスト. 作業療法. 2003; 22(5): 471-76.
5)MolenNh, et al: Fundamental characteristics of human gait inrelation to sex and location. 1972; 215-223.
6)Callisaya ML, et al: Risk of falls in older people during fast-walking-The TASCOG study. Gait & Posture. 2012; 36(3): 510-15

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