身体機能評価バッテリー(SPPB: short physical performance battery)とは

投稿者: | 2018年8月30日

介護予防分野で使用される身体機能評価の方法にはTUG,FR,片脚起立時間測定など様々な方法が報告されておりますが,ここ数年で報告が増えているのが身体機能評価バッテリー(SPPB: short physical performance battery)と呼ばれるバッテリーです.

実は海外では,かなり古くからSPPBを使用した報告が数多く存在するわけですが,本邦ではなぜSPPBに関する報告が少なかったという実用があります.

今回は近年使用が増えており,今後さらに使用が増えると思われるSPPBについてご紹介したいと思います.

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 SPPBとは? 

SPPBとはバランステスト歩行テスト椅子からの立ち上がりテストの3つのテストから構成される身体機能評価バッテリーです.

SPPBのバランステストは閉脚立位→semi-tandem立位→tandem立位の順番で各10秒間姿勢を保持できるかどうか,歩行テストは4mの通常歩行時間,椅子からの立ち上がりテストは5回立ち座り時間で評価されます.

バランステスト・歩行テスト・椅子からの立ち上がりテストの成績は,それぞれ0~4点でスコア化され満点は12点となります.特徴としては,いずれのテストも短時間で簡便に実施できるため,簡易身体機能評価バッテリーとして多くの研究で利用されているのです.

さらに特殊な道具・環境がなくとも評価が可能であるといった点からも,臨床のみならず地域の介護予防事業でも使用しやすいバッテリーです.

 

 

SPPBはEuropean Working Group on Sarcopenia in Older People(EWGSOP)におけるサルコペニアの診断基準の1つである身体機能を評価する指標としても用いられており,SPPB scoreの8点が身体機能低下のカットオフ値とされております.

またSPPBは将来的な機能低下や生命予後の予測指標としても有効であるとされております.4年後に活動能力が低下してしまう危険性はSPPBスコア10~12点の群と比較して,4~6点の群で4.2倍7~9点の群で1.6倍に高まるとされております.

 

検者内信頼性についてもICCが0.80以上と高い信頼性が確認されております.

妥当性については,高齢者の歩行障害や炎症性サイトカインの異常分泌,身体組成の加齢変化との関連性が指摘されております.

下肢機能や身体パフォーマンスを評価するのみならず,予後予測の指標としても多く使用されており,高齢者の退院後の ADL 低下・再入院・死亡を予測する要因としても重要であると報告されております.

まだまだ本邦での使用は少ないので,今後は日本人を対象としたデータの蓄積が期待されます.

 

 

 

 バランステスト 

閉脚立位→セミタンデム立位→タンデム立位の順で各 10 秒間保持し,実施困難となったところで歩行テストに移行します.

いずれも実施困難であれば 0 点,閉脚立位まで可能であれば 1 点,semi-tandem立位まで可能であれば 2 点,tandem立位まで可能 であれば4 点と評価します.

閉脚立位やtandem立位はイメージがつくと思いますが,semi-tandem立位というのはあまり聞きなれない用語かもしれません.

semi-tandem立位というのは上の図のように母趾と踵部内側を接触させたような姿勢のことです.

 

 

 

 歩行テスト 

4m歩行時間(通常歩行速度)を 2 回計測し,良い方の結果を採用します.

4m歩行が困難な場合を 0 点,8.71 秒以上を1 点,6.21-8.70秒の場合を2 点,4.82-6.21秒の場合を3 点,4.82 秒未満の場合を4 点とします.

 

 

 

 

 

 椅子立ち上がりテスト 

腕を組んだままで“できる限り早く”椅子からの起立-着座を5回繰り返します.

5回続けて起立-着座が困難な場合を0点,16.70秒以上要する場合を1点,13.70-16.69秒の場合を2点,11.20-13.69秒の場合を3点,1.20 秒未満の場合を4 点とします.

5回立ち上がりテストの詳細は以前紹介させていただきましたので,今回は省略させていただきます.

 

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今回は近年使用が増えており,今後さらに使用が増えると思われるSPPBについてご紹介いたしました.

是非おさえておきたい評価の一つです.

 

 

 

参考文献
1)Guralnik JM, et al: A short physical performance battery assessing lower extremity function: association with self-reported disability and prediction of mortality and nursing home admission. J Gerontol 49: M85-94, 1994
2)Guralnik JM, et al: Lower-extremity function in persons over the age of 70 years as a predictor of subsequent disability. N Engl J Med 332: 556-561, 1995
3)Guralnik JM, et al: Lower extremity function and subsequent disability: consistency across studies, predictive models, and value of gait speed alone compared with the short physical performance battery. J Gerontol A Biol Sci Med Sci55: M221-231, 2000
4)Penninx BW, et al: Lower extremity performance in non disabled older persons as a predictor of subsequent hospitalization. J Gerontol A Biol Sci Med Sci55: M691-697, 2000
5)Onder G, et al: Measures of physical performance and risk for progressive and catastrophic disability: Results from the Women’s Health and Aging Study. J Gerontol A Biol Sci Med Sci60A: 74-79, 2005
6)Ostir GV, et al: Lower body functioning as a predictor of subsequent disability among older Mexican Americans. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 53: M491-495, 1998

 

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