大腿骨骨幹部骨折例に対する関節可動域運動~癒着を回避せよ~

投稿者: | 2018年8月26日

前回は大腿骨骨幹部骨折例に対する理学療法評価についてご紹介いたしました.

大腿骨骨幹部骨折例においては膝関節屈曲可動域制限が問題となることが少なくありません.

今回は膝関節屈曲可動域に着目して,大腿骨骨幹部骨折例に対する関節可動域運動について考えてみたいと思います.

 

 

 

 

 癒着予防が重要 

大腿骨骨幹部骨折では中間広筋の損傷を合併しやすいので,中間広筋膝蓋上嚢の癒着を合併しやすいといった特徴があります.

特に骨折部周囲の腫張・浮腫を伴っている急性期には,腫張・浮腫に伴う線維化が助長されやすいので,早期から癒着予防を図ることが非常に重要となります.

 

 

癒着予防を図る上では浮腫の管理大腿前面の組織間の滑走性維持・改善が重要となります.

浮腫の管理については弾性包帯による圧迫や下肢の挙上が中心となりますが,理学療法士が関わる時間だけでは不十分ですので,病棟看護師とも協力して,病棟でのポジショニングを徹底することが重要となります.

理学療法ではリンパドレナージを使って,浮腫の軽減に努めます.

広筋群の癒着を予防するためには,徒手的に組織間の滑走性を向上させる以外にも,筋収縮を使用して癒着予防を図る方法が有用です.広筋群を選択的に収縮させるためには,長坐位姿勢での大腿四頭筋セッティングが有用です.

 

 

骨盤を前傾させ大腿直筋を短縮位とした姿勢で行うと,広筋群の収縮が得られやすいので,セッティングは長坐位姿勢で行うことをお勧めします.

 

骨折の機能解剖学的運動療法(体幹・下肢) その基礎から臨床まで [ 松本正知 ]

 大腿前面の伸張性改善に対するアプローチ 

大腿前面の筋群の中でも大腿直筋・大腿筋膜張筋・縫工筋といった二関節筋は膝関節屈曲可動域制限の原因となりますので,これらの筋群の伸張性改善を図ることが重要となります.

筋へのストレッチングは骨折部より遠位から開始し,早期には損傷部に過度な伸張刺激が加わらないように注意が必要です.

骨折部の骨癒合が進めば,modified Thomas positionやEly position等の肢位で大腿直筋や大腿筋膜張筋の伸張運動を時間をかけて行っていきます.

 

 

 

 術式に応じた関節可動域運動 

順行性髄内釘が用いられた場合には,Distal locking screw刺入部の外側広筋に癒着や伸張性低下が生じやすいので,外側広筋の伸張性改善を図ることが重要です.

 

逆行性髄内釘の場合には,術創部の状態を確認した上で,膝蓋骨の可動性を確保しながら,大腿四頭筋セッティングを可能な限り行わせ,膝蓋下脂肪体の柔軟性と膝蓋支帯周囲との癒着を予防します.

 

プレート固定の場合には,骨折に付随する広筋群の損傷に加え,皮膚・腸脛靱帯・大腿筋膜張筋・外側広筋など,各組織間の癒着が問題となります.

広く展開された皮膚切開部より骨折部に至るまでの損傷部位を考慮し,各組織間の滑走性を維持・改善します.

 

極める大腿骨骨折の理学療法 医師と理学療法士の協働による術式別アプローチ/斉藤秀之/加藤浩

 

 

 

今回は大腿骨骨幹部骨折例に対する膝関節屈曲可動域運動について考えてみました.

大腿骨骨幹部骨折では広筋群や膝蓋上嚢の癒着が生じやすいので,早期より癒着予防を図ることが重要となります.

また術式によって関節可動域制限の原因となる組織が異なりますので,関節可動域制限の原因を考えた上でアプローチを行っていくことが重要です.

 

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