今回からは数回に分けて,大腿骨幹部骨折例における理学療法についてご紹介いたします.
大腿骨骨幹部骨折は大腿骨近位部骨折ほど多くはありませんが,救急病院に勤務している理学療法士であれば頻繁に遭遇する骨折の一つです.
また大腿骨骨折は回復期リハビリテーション病棟の適応疾患でもあるため,大腿骨骨幹部骨折例を担当する機会は少なくないと思います.
目次
大腿骨骨幹部骨折の特徴
交通事故などの高エネルギー外傷として受傷する骨折で青壮年期に多いのですが,若年者でも転落などで起こりうる骨折です.また高齢者においても,転倒によって大腿骨骨幹部に骨折が起こることがあります.
特に近年増加傾向にあるのが,人工股関節全置換術後の人工股関節ステム周囲骨折です.
大腿骨骨幹部骨折の好発部位は大腿骨中央部が最も多く,次いで近位1/3,遠位1/3の順となります.人体最大の長管骨でありますので,骨折に伴う出血量が多く,骨折に伴い血圧低下やショック,脂肪塞栓症候群を合併する場合があります.
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大腿骨骨幹部骨折における周辺筋群による骨片転位の方向
大腿骨骨幹部骨折例の理学療法の考える上で,骨折周辺の筋群による骨片転位の方向を考えることは非常に重要となります.
骨折部位と筋の停止の関係を考え,筋収縮が骨片転位を増悪させる可能性を考慮することが非常に重要です.大腿骨にはさまざまな筋が付着しておりますので,付着筋の作用により,骨折の部位によって特異的な転位・変形をきたしてしまいます.
また骨折部位によって整形外科的治療の方針や手術療法の方法も異なりますので,骨折部位を詳細に把握しておくことが重要となります.
近位1/3の骨折
近位骨片は股関節外旋筋群による外旋,腸腰筋による屈曲,中殿筋による外転位をとり,遠位骨片は内転筋により内転短縮位をとりやすいのが特徴です.
大腿骨中央部の骨折
近位骨片は軽度屈曲・外転位,遠位骨片は内転・後方の位置に転位しやすい特徴があります.
遠位l/3の骨折(顆上骨折)
近位骨片は内転転位を,遠位骨片は腓腹筋の作用により後方回転転位を呈しやすい特徴があります.
大腿骨骨幹部骨折の分類
骨折の機能解剖学的運動療法 その基礎から臨床まで 体幹・下肢
大腿骨骨幹部骨折の分類としてはAO分類が用いられます.
AO分類では受傷時に加わる外力の強さや骨折の分類により, A1~3, B1~3, C1~3の9つに分類されます.Aは単純骨折で螺旋骨折(Al),斜骨折(A2),横骨折(A3)に分類されます.
Bは第3骨片を伴う楔状骨折で,螺旋骨折(B1), 屈曲骨折(B2), 外角片骨折(B3)に分類されます.
Cは複雑骨折であり,螺旋骨折(C1),分節骨折(C2),不規則骨折(C3)に分類されます.
今回は大腿骨骨幹部骨折の特徴についてご紹介いたしました.次回は大腿骨骨幹部骨折例に対する手術療法について考えてみたいと思います.
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