脛骨近位端骨折例に対する関節可動域運動~深屈曲可動域獲得を目指して~

投稿者: | 2018年8月21日

前回は脛骨近位端骨折例における理学療法評価についてご紹介いたしました.今回は脛骨近位端骨折例に対する関節可動域運動について考えてみたいと思います.

脛骨近位端骨折例における関節可動域の予後

一般的には脛骨近位端骨折例の関節可動域の予後は良好であるとされております.特に関節内に骨折が及んでいない場合には,十分な膝関節屈曲可動域が獲得可能なことが多いです.急性期には関節可動域を拡大しながらも,骨折部位へのストレスを減じながら可動域運動を行うことが重要となります.特に脛骨関節面後方に骨折部が位置している場合には,膝関節屈曲可動域の拡大に伴い,損傷部位へのストレスが増大する可能性があるため注意が必要となります.

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脛骨近位端骨折例における関節可動域制限の原因

脛骨近位端骨折例の膝関節屈曲可動域は比較的獲得しやすいとされておりますので,ここでは屈曲120°以上の深屈曲可動域獲得に関して考えてみたいと思います.特に膝関節深屈曲運動時には,膝関節前面と膝関節後面に疼痛を訴える症例が少なくありません.深屈曲位では,多くの組織の柔軟性・伸張性・滑走性が必要となります.整復不良による骨性因子を除くと,膝関節前面に疼痛を訴える場合には,関節可動域制限の原因として術創部を含む皮膚の伸張性低下,浮腫や関節水腫,大腿四頭筋の柔軟性や伸張性の低下,膝蓋支帯や膝蓋大腿靭帯等の膝蓋骨周囲組織の柔軟性低下,膝蓋下脂肪体の柔軟性低下等が挙げられます.

膝関節前面に疼痛を訴える場合には,疼痛の出現部位を確認し,上述した制限因子の中から制限因子を特定することが重要です.

膝関節後面における疼痛の原因としては,脛骨の前方移動制限下腿内旋可動域制限半月板や関節包などの後方組織のインピンジメントが考えられます.実は健常人でも内側大腿骨後面と脛骨関節面との間で半月板や後方関節包といった軟部組織がインピンジメントすると報告されております.

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脛骨近位端骨折例における関節可動域獲得のポイント

深屈曲域の可動域練習では,大腿骨に対する脛腓骨の内旋誘導が重要となります.屈曲・内旋誘導の際に膝関節前面に疼痛を訴える場合には,その制限因子を評価した上で伸張性と滑走性を改善することで,膝関節前面の疼痛を除去することが重要となります.特に膝蓋支帯や膝蓋大腿靱帯等の膝蓋骨周囲組織の伸張性改善として膝蓋下脂肪体のモビライセーションが有効です.

深屈曲運動に伴う膝関節後面に疼痛を訴える場合には,半月板や関節包などのインピンジメントが原因と考えられますので,外側では膝窩筋と関節包との連結を,内側では半腱様筋と関節包との連結を考慮して,膝窩筋や半膜様筋の筋収縮を利用し,関節包や半月板のインピンジメントを改善する方法が有効です.また膝関節後面に疼痛を訴える場合には,脛骨を前方に引き出しながら屈曲可動域運動を行うとインピンジメントに伴う疼痛が軽減される場合が少なくありません.自主トレーニングとして屈曲可動域運動を行う場合には,膝窩部に丸めたタオルを挿入して運動を行うと有効です.

今回は脛骨近位端骨折例における膝関節屈曲可動域運動について,特に深屈曲可動域運動を中心に考えてみました.日本で暮らすためには深屈曲可動域の獲得は重要なので是非参考にしていただきたいです.

参考文献

1)山本謙吾, 他: 脛骨高原骨折に対する骨接合術.整形・災害外科 51: 809-816, 2008

2)Smith PN, et al.: Development of the concepts of knee kinematics. Arch Phys Rehabil 84: 1895-1902, 2003

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