膝蓋骨骨折例に対する筋力トレーニング~骨折部に負担をかけずに筋力を強化するには?~

投稿者: | 2018年8月14日

前回は膝蓋骨骨折例に対する関節可動域運動についてご紹介いたしました.今回は関節可動域運動と合わせて,理学療法で実施することの多い筋力トレーニングについて考えてみたいと思います.

膝蓋骨骨折例における膝関節伸展筋力低下

膝蓋骨骨折例では膝蓋骨の可動性が低下することに加えて,大腿四頭筋の収縮により膝蓋骨骨折部を離開させる方向のストレスが加わりますので,膝関節伸展筋力が低下してしまうことは容易に想像がつきます.膝関節伸展機構の再建は膝蓋骨骨折例における理学療法における重要な目的の一つとなります.

 

膝蓋骨骨折例における筋力トレーニング

膝蓋骨骨折例における筋力トレーニングですが,ただ闇雲にトレーニングをすればよいかというと,そういった話ではありません.膝関節伸展作用を有する大腿四頭筋の中でも,大腿直筋は股関節と膝関節をまたぐ二関節筋です.したがって大腿直筋が過活動を引き起こすと,股関節と膝関節を分離して運動することが難しくなってしまいます.大腿直筋は二関節筋なので関節運動を担う筋ですが,二関節筋である大腿直筋が円滑な関節運動を生み出すためには,単関節筋である広筋群や膝窩筋によって関節の安定させる役割が重要となります.広筋群がうまく機能せず,大腿直筋が過剰に活動すると,歩行時の運動の拙劣さ(stiff knee gait:歩行時のdouble knee action)や膝蓋大腿関節障害に伴う疼痛の原因にもなります.

 

大腿直筋の活動を抑えた上で,広筋群を活動させるためには,骨盤前傾位でトレーニングを行うことが重要となります.例えば大腿四頭筋セッティングを行う場合にも,右図のように長坐位姿勢で大腿直筋を短縮位としてトレーニングを行うと,広筋群の活動を賦活することができます.

骨折の機能解剖学的運動療法(体幹・下肢) その基礎から臨床まで [ 松本正知 ]

骨折部への負担を考慮した筋力トレーニング

膝蓋骨骨折例における筋力トレーニングを考える上では,関節角度別の膝蓋大腿関節への負荷を考える必要があります.膝蓋大腿関節への負荷は非荷重位(Open Kinetic Chain:OKC)と荷重位(Closed Kinetic Chain:CKC)でも異なりますので,その点にも注意が必要です.

膝蓋大腿関節への機械的負荷はOKCでは膝関節伸展位でより大きくなりますが,CKCでは膝関節屈曲角度が大きくなるに伴って大きくなります.したがってOKCでは膝関節屈曲位で,CKCでは膝関節伸展位で膝関節伸展筋力のトレーニングを行うことが重要です.

Extension lag

膝蓋骨骨折例の膝関節伸展筋力を考える上で非常に重要なのが,extension lagです.Lagに関してはさまざまな定義がありますが,座位で膝関節を完全伸展できないものをlag(伸展可動域制限がある場合も含みますが,これは広義のlagと呼びます)と呼ぶ場合もありますが,伸展可動域が保たれているにもかかわらず膝関節を完全伸展に出来ないものをlag(狭義のlag)と呼ぶのが一般的です.ここでは狭義のlagの原因について考えてみたいと思います.

①膝蓋骨低位

骨折後の安定・固定により膝関節伸展筋群の収縮を行わない期間が長期化すると,膝蓋骨が低位化してしまいますので,lagが生じやすくなります.

極める膝・下腿骨骨折の理学療法 全身的・局所的視点からみた新たな理学療法の本質 (臨床思考を踏まえる理学療法プラクティス) [ 斉藤秀之 ]

②関節原性抑制

腫張が強い時期には物理的・神経生理学的に大腿四頭筋に反射性の抑制が加わりますので,膝関節伸展位での筋力発揮が困難となります.

extension lagがあるときには原因を考えて対処することが重要となります.またOKCにおけるlagがあってもCKCで膝関節が十分に伸展できていれば問題にならない場合も少なくありませんので,CKCにおけるlagの有無を確認することも重要です.

今回は膝蓋骨骨折例における筋力トレーニングについて考えてみました.膝蓋骨骨折では骨折部に負担をかけないように膝関節伸展筋群の再建を図ることが重要です.骨折型によっても筋収縮に伴う機械的ストレスは変化しますので,骨折を良く把握した上でトレーニングを行うことが重要です.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です