変形性股関節症の病期~股関節症の進行を予防するための最新知見~

投稿者: | 2018年7月16日

前回は変形性股関節症の分類について紹介させていただきました.今回は変形性股関節症の病期と変形性股関節症の進行に影響を与える要因について考えてみたいと思います.変形性股関節症に限った話ではありませんが,理学療法を考える上では,対象者がどの病期にあるのかを考えることが非常に重要です.一言で変形性股関節症と言っても前期と末期の股関節症では全く考えることも異なってきます.

変形性股関節症の病期

変形性股関節症の病気は,

前期⇒初期⇒進行期⇒末期

に分類することができます.変形性関節症の分類としてはKellgren-Lawrence分類が有名です.これは関節裂隙の狭小化,骨棘形成の程度,軟骨下骨の効果の程度から関節症の進行を5段階で評価するものです.変形性股関節症の疫学のところでもご紹介いたしましたが,実は変形性膝関節症に関してはこのKellgren-Lawrence分類によって病気や重症度を分類することが多いのですが,変形性股関節症に関しては特にわが国ではこの分類が用いられることが少ないのです.

本邦で用いられることが多いのが,この日本整形外科学会によるX線像分類です.

変形性股関節症の理学療法を論ずる上では,対象者がどの病期なのかを明らかにしておくことが重要ですので,まずはこの分類をおさえておきたいところです.現在のところ前期~初期に関しては運動療法の有効性(股関節症の疼痛,機能障害の改善)が示されておりますが,残念ながら進行期~末期の股関節症に関しては,運動療法の有効性は示されていないのが現状です.またガイドライン上も病期の進行の予測因子に関しては,主に一次性の変形性股関節症(股関節症)を対象とした外国からの文献が多く,わが国からの文献は少ないために,二次性股関節症の進行に関連する要因は明らかになっておりませんでした

変形性股関節症の病期進行に影響を与える要因は何か?

理学療法の目的として変形性股関節症により生じている機能障害(疼痛・可動域制限・筋力低下)を改善させることは重要ですが,それ以上に重要なのは変形性股関節症の進行を予防することです.この点に関して京都大学医学研究科助教の建内宏重先生が非常に面白い研究データを2編ほど報告されております.

歩容と身体活動量が変形性股関節症の進行に影響

この研究では変形性股関節症例50例を対象に,X線から関節裂隙の狭小化を評価し,1年後に関節裂隙の狭小化が大きいグループと小さいグループに分類し,グループ間で異なる要因を調査することで変形性股関節症の進行に関連する要因を明らかにしております.結果は3 次元動作解析から導かれる歩容(股関節への累積モーメント)と一週間の歩数(歩数計)から計算された身体活動量の積で表される股関節累積負荷が変形性股関節症の進行に影響を与える要因として重要であるといったものでした.それまでは変形性股関節症の進行に関わるとされる要因は,年齢や性別など患者さん固有の要因で変えられないものであったり,骨形態の異常など手術によってしか変えられない要因がほとんどでしたが,この研究により歩容の改善や身体活動量の指導によって変形性股関節症の進行を予防できる可能性が明らかになりました.

上の図は歩行時の股関節累積モーメントを矢状面・前額面・水平面といった方向別に表したものですが,悪化している群と悪化していない群で比較をいたしますと,中でも前額面における累積モーメントの差が大きいことがわかります.これは荷重時に股関節が内転している症例ほど変形性股関節症が進行しやすいといった解釈ができると思います.つまり変形性股関節症の進行を予防する上では,立脚期における股関節内転モーメントを減ずることが重要だということです.変形性股関節症例に頻繁に見られるTrendelenburg跛行ですが,Trendelenburg跛行が生じていると股関節は内転位となっておりますので,Trendelenburg跛行を改善させることも股関節内転モーメントの軽減につながると考えられます.一方で頭部・体幹を罹患側へ傾斜するDuchenne跛行に関しては内転モーメント軽減に寄与する歩容であると考えられますので,Duchenne跛行に関してはこのデータから考えるとある程度許容する必要もあるのかもしれません.

姿勢と脊柱の柔軟性低下が変形性股関節症の病期進行に影響を与える

さらにこのグループは立位での脊柱前傾偏位脊柱の柔軟性低下が変形性股関節症の進行に影響を与える要因として重要であるといったデータも公表されております.このデータは先ほどのデータとは異なり矢状面上における臼蓋被覆に関連するものだと思いますが,脊柱の柔軟性が低下している二次性股関節症では十分に臼蓋被覆を代償することができず,股関節症が進行してしまうということだと思います.したがってわれわれ理学療法士が変形性股関節症の進行予防を目的として介入を行う場合には,姿勢アライメントの改善を図るとともに,脊柱の柔軟性を改善させることが非常に重要であると考えられます.

 

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参考文献

1)Tateuchi H, Koyama Y, et al: Daily cumulative hip moment is associated with radiographic progression of secondary hip osteoarthritis. Osteoarthritis Cartilage25: 1291-1298, 2017
2)Tateuchi H, Akiyama H, et al: Sagittal alignment and mobility of the thoracolumbar spine are associated with radiographic progression of secondary hip osteoarthritis. Osteoarthritis and Cartilage26: 397-404, 2018

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