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看護師・理学療法士必見 転倒による4大骨折
転倒して不運にも骨折をしてしまうと日常生活動作が制限されることが少なくありません.
ここでは高齢者の4大骨折をお示ししております.
特徴といたしましては大腿骨近位部骨折が後期高齢者に多いのに対して橈骨遠位端骨折は前期高齢者に多いといった点です.
これは前期高齢者の場合には,まだ反応速度が保たれている方が多いので転倒した際に反射的に受け身を取ろうとして手をつくことができるからです.
後期高齢者の場合にはこういった受け身を取ることが難しいのでそのまま腰の横の方から転倒して大腿骨の付け根を骨折してしまうのです.
実はこの大腿骨近位部骨折は寝たきりとの関連性が非常に高いことで知られております.昔に比べれば早期に手術をして,早期にリハビリを開始する流れになっておりますので,骨折をされる前の状態にまで回復される方もおられますが,高齢者の場合には一般的に骨折を受傷される前の8割程度の能力までしか回復が難しいと考えられております.
わかりやすくいうと杖を使わずに歩いていた方が杖が必要になったり,杖を使って歩いていた方がシルバーカーが無いと歩けなくなったりといった感じです.
- 歩行補助具非使用(受傷前)⇒1本杖(受傷後)
- 1本杖(受傷前)⇒シルバーカー・伝い歩き(受傷後)
- シルバーカー(受傷前)⇒寝たきり(受傷後)
もちろん個人差が大きいのですが簡単にするとこんなイメージです.
たかが転倒,されど転倒
転倒が怖いって言っても「転倒が命を奪うわけではないでしょ?」とお思いの方もおられると思いますが,実は転倒というのは間接的に死亡原因になることもあるのです.
私は医療機関で勤務しているので,患者様の最期に携わることもあるのですが,最終的に肺炎で亡くなられたご家族にお話を聞いておりますと,実は5年前に転倒をして,そこから活動量が減少して,結果として寝たきりになって,最終的に肺炎で亡くなられるという場合も少なくないのです.
転倒というのは直接的に人の命を奪うものではありませんが,こう考えると非常に怖いなと思っていただけると思います.
骨折しても転倒しなければいい?
骨折をしても転倒しなければいいじゃないかと考えられる方もおられると思いますが,それはその通りです.
七転び八起きで何度転倒しても骨折しない方も実際にはおられるようです.
ですが実は骨折に至らなくとも一度転倒してしまうと「転倒後症候群」に陥る場合があります.
本邦においてもリハビリ業界はもちろん,看護の業界においても転倒後症候群を問題視する論文が多くあります.
転倒後症候群とは何か説明をいたします.
転倒を経験されたことのある方は経験されたことがあるかもしれませんが,一度転倒してしまうと「また転倒してしまうのではないか…」といった恐怖感に苛まれることがあります.
恐怖感から外出を控えたり,閉じこもりがちになってしまうのです.閉じこもりがちになると活動量が少なくなってしまいますので,結果として足の力が衰え,最終的に足の力が衰えることで寝たきりになったり,転倒してしまったりということがあります.
ですので転倒は結果であるとともに,転倒が原因で転倒するということもあるわけです.
さて今回は転倒の怖さをご紹介いたしました.ここまでで何となく転倒を予防する必要があるなと思っていただけたと思うのですが,転倒を予防するためには転倒の原因を考える必要があります.
リハビリの専門家である理学療法士や作業療法士も転倒後症候群といった概念を頭に入れた上で,転倒予防に携わる必要があると思います.
次回は転倒を引き起こす原因について考えてみたいと思います.
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