大腿骨近位部骨折例における合併症

投稿者: | 2018年7月6日

 大腿骨近位部骨折の合併症 認知症・片麻痺だけが問題じゃない 

大腿骨近位部骨折は高齢者に多いことから,リハビリテーション(理学療法・作業療法)を行う上でも術前後の合併症が問題となる場合が少なくありません.

看護やリハビリを行う上で問題となる大腿骨近位部骨折例の合併症としては,認知症や片麻痺が挙げられますが,今回は大腿骨近位部骨折の術前後に二次的障害として生じる合併症に着目して,大腿骨近位部骨折例の合併症について考えてみたいと思います.

 

Must & Never 大腿骨頚部・転子部骨折の治療と管理 [ 安藤 謙一 ]

 大腿骨頸部骨折の合併症 大腿骨頭壊死症 

頚部骨折例で骨接合術(ピンニング)が施行された場合には大腿骨頭壊死が起こることがあります.

骨折による骨端部への血行の遮断により大腿骨の骨頭への血流が遮断され,骨端部の骨が壊死に陥ってしまいます.

その結果,骨は陥凹し関節の表面が変形してしまいますが,これをLSC(Late Segmental Collapse)と呼びます.おおよそGarden分類Ⅰ~Ⅱで5%程度, Garden分類Ⅲ~Ⅳで8~30%に起こるとされております.

特に若年者でGardenⅢ~Ⅳにの頸部骨折に対して骨接合術が施行された場合には骨頭壊死の発生に注意が必要です.

ちなみに骨頭壊死とは病理学的所見で,LSCは形態学的所見を指します.

この2つの用語は捉え方が異なりますが,内容的には同じようなことを表現している用語にすぎません.

大腿骨頭壊死症は6ヶ月以上が経過してから起こることが多く,退院後に股関節痛を訴えて来院されるといったケースが多いようです.壊死というのは英語でNecrosis(ネクローシス)と用語があてられますが,医療機関では骨頭壊死が起こった場合に「ネクッタ」といった表現をすることがあります.

これも覚えておいて損はないですね.

 

 

 大腿骨頸部骨折の合併症 脱臼は予防が重要 

頸部骨折例で人工骨頭置換術が施行された場合には,脱臼にも注意が必要です.

人工骨頭置換術後の脱臼発生率はガイドライン上は2~7%とされております.前外側アプローチと比較して後方アプローチで発生率が高く,後方アプローチでは深層外旋筋群の修復によって脱臼発生率は少なくなるとされております.

また人工骨頭置換術に比較して人工股関節全置換術で関節包の展開も大きくなりますので,脱臼率も高くなります.一般的に前方アプローチでは股関節伸展・内転・外旋の複合動作が,後方アプローチでは股関節屈曲・内転・内旋の複合動作が禁忌肢位となります.あくまで複合動作が禁忌であるといった点に注意が必要です.

脱臼に関しては人工股関節全置換術例における脱臼に関する記事をご参照ください.

 大腿骨頸部・転子部骨折の合併症 カットアウト・骨頭穿破 

頚部骨折例でピンニングによる骨接合術が施行された場合や,転子部骨折例で骨接合術が施行された場合に起こります.

骨粗鬆症が進んでいる場合や,不安定型骨折例では,骨が挿入した金属の強度に耐えられなくなり,挿入した金属が骨から飛び出してしまいますが,このような現象をカットアウトとよびます.

骨頭穿破はpenetrationとも呼ばれますが,カットアウトの一種で,挿入した金属が骨頭を突き抜けていく現象を指します.このような状況になった場合,多くは何らかの再手術が必要となります.

 大腿骨近位部骨折の合併症 深部静脈血栓症 

外傷や術後の不動により,下肢の静脈に血栓(血液の塊)ができてしまうことがあります.

深部静脈血栓症の5∼10%は肺血栓塞栓症を発症し,発症するとその症状は重篤であるため予防が極めて重要となります.

サッカーの高原選手や熊本の震災の際に問題となったいわゆるエコノミー症候群ってやつですね.

大腿骨骨折例の多くは術前後に不動を強いられておりますし,加えて手術によって血管壁に損傷を受けるため深部静脈血栓症のリスクが高いとされております.

 

深部静脈血栓症の診断ですが通常はD-dimmerと呼ばれる血液検査マーカーを使って行われることが多いです.

D-dimmerは1.0μg/ml以下が正常ですが,この値より高値となった場合には深部静脈血栓症が疑われます.

D-dimmerの特徴として陰性的中率が高くD-dimmerが正常であれば深部静脈血栓症を否定できるのですが,陽性的中率は高くないので,D-dimmerが高くても深部静脈血栓症でない場合もある

なぜこんなことが起こるのかと言いますと,D-dimmerというのは体中の血液凝固に反応するマーカーですので血管内のみならず骨折後に起こる骨折部周囲の血腫にも反応してしまいます.

ですのでD-dimmerが高値の場合には体のどこかの血液凝固が亢進していると解釈できますが,血管内の反応なのかどうかはD-dimmerのみではわからないというとになります.

ですので最終的には下肢エコーを撮影して確定診断を行います.

先ほども述べましたが,深部静脈血栓症から肺血栓塞栓症を発症すると生命の危機に陥る可能性もありますので,とにかく予防が重要です.

深部静脈血栓症の予防

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