仕事中の身体活動量の増加は健康には結びつかない? デンマークの一般住民10万人超の疫学研究

運動療法・物理療法
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仕事中の身体活動量の増加は健康には結びつかない? デンマークの一般住民10万人超の疫学研究

理学療法士・作業療法士がクライアントに対して身体活動量に関して生活指導を行う機会は多いと思います.

最近は脳卒中や運動器疾患を対象として身体活動量に焦点を当てた研究論文も多いですね.

身体活動量の指導を行う際に疑問に感じるのが,仕事中の身体活動が十分であれば,仕事とは別に身体活動量を向上させるような指導を行う必要があるのかどうかといった点です.

今回は仕事中の身体活動量の増加は健康には結びつかない可能性を示唆するデンマークの一般住民10万人超の疫学研究をご紹介させていただきます.

仕事中の身体活動量が多い人も、健康のために行う運動は、仕事とは別に行った方が良いかもしれない。身体活動に関する現行のガイドラインは、余暇時間の運動と仕事上の身体活動を区別していないが、新たに発表された研究によると、健康への影響は両者等しいとは言えないようだ。

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今回ご紹介する研究

The physical activity paradox in cardiovascular disease and all-cause mortality: the contemporary Copenhagen General Population Study with 104 046 adults

Andreas Holtermann, Peter Schnohr, Børge Grønne Nordestgaard, Jacob Louis Marott

European Heart Journal, Volume 42, Issue 15, 14 April 2021, Pages 1499–1511, https://doi.org/10.1093/eurheartj/ehab087

Published: 09 April 2021

今回ご紹介する研究は2021年に掲載された論文です.

 

 

 

 

 

 

 

研究の目的 

Leisure time physical activity associates with reduced risk of cardiovascular disease and all-cause mortality, while these relationships for occupational physical activity are unclear. We tested the hypothesis that leisure time physical activity associates with reduced major adverse cardiovascular events (MACE) and all-cause mortality risk, while occupational physical activity associates with increased risks.

余暇時間の身体活動は,心血管疾患および全死亡リスクの低減と関連することが知られておりますが,職業的身体活動におけるこれらの関係は不明であります.

この研究は余暇時間の身体活動は主要有害心血管イベント(MACE)および全原因死亡リスクの低減と関連し,職業的身体活動はリスクの増加と関連するという仮説のもと実施されております.

 

 

 

 

 

 

 

 

研究の方法

We studied 104 046 women and men aged 20–100 years in the Copenhagen General Population Study with baseline measurements in 2003–2014 and median 10-year follow-up. Both leisure and occupational physical activity were based on self-report with four response categories. We observed 7913 (7.6%) MACE and 9846 (9.5%) deaths from all causes. Compared to low leisure time physical activity, multivariable adjusted (for lifestyle, health, living conditions, and socioeconomic factors) hazard ratios for MACE were 0.86 (0.78–0.96) for moderate, 0.77 (0.69–0.86) for high, and 0.85 (0.73–0.98) for very high activity; corresponding values for higher occupational physical activity were 1.04 (0.95–1.14), 1.15 (1.04–1.28), and 1.35 (1.14–1.59), respectively. For all-cause mortality, corresponding hazard ratios for higher leisure time physical activity were 0.74 (0.68–0.81), 0.59 (0.54–0.64), and 0.60 (0.52–0.69), and for higher occupational physical activity 1.06 (0.96–1.16), 1.13 (1.01–1.27), and 1.27 (1.05–1.54), respectively. Similar results were found within strata on lifestyle, health, living conditions, and socioeconomic factors, and when excluding individuals dying within the first 5 years of follow-up. Levels of the two domains of physical activity did not interact on risk of MACE (P = 0.40) or all-cause mortality (P = 0.31).

コペンハーゲン一般人口調査の20~100歳の女性および男性104 046人を対象として,2003~2014年にベースライン測定を行い,中央値で10年間の追跡調査を行っております.

余暇および職業上の身体活動は,いずれも4つの回答カテゴリーによる自己申告に基づいていた.

7913人(7.6%)のMACEと9846人(9.5%)の全死因による死亡を観察しております.

余暇時間の身体活動が低い場合と比較して,MACEの多変量調整済み(ライフスタイル、健康、生活環境、社会経済的要因)ハザード比は,中程度で0.86(0.78~0.96),高いで0.77(0.69~0.86),非常に高いで0.85(0.73~0.98)でありました.

一方で職業的身体活動が高い場合には,ハザード比それぞれ1.04(0.95~1.14),1.15(1.04~1.28),1.35(1.14~1.59)でありました.

全死因死亡率については余暇時間の身体活動が高いと対応するハザード比は,0.74(0.68-0.81),0.59(0.54-0.64),0.60(0.52-0.69),職業性身体活動が高いと対応するハザード比はそれぞれ1.06(0.96-1.16),1.13(1.01-1.27),1.27(1.05-1.54)でありました.

同様の結果はライフスタイル,健康,生活環境,社会経済的要因に関する層,および追跡調査の最初の5年以内に死亡した人を除いた場合も同様の傾向でありました.

身体活動の2つの領域のレベルは,MACEのリスク(P = 0.40)および全死亡のリスク(P = 0.31)との関連は認めませんでした.

 

 

 

 

 

 

 

研究の結論

Higher leisure time physical activity associates with reduced MACE and all-cause mortality risk, while higher occupational physical activity associates with increased risks, independent of each other.

余暇時間の身体活動が多いと,MACEおよび全原因死亡リスクが減少し,職業的身体活動が多いとリスクが増加し,余暇的な身体活動とと職業的な身体活動はそれぞれ独立していることが明らかとなりました.

 

今回は仕事中の身体活動量の増加は健康には結びつかない可能性を示唆するデンマークの一般住民10万人超の疫学研究をご紹介させていただきました.

この結果から考えると仕事中の身体活動量が多い場合にも,健康のために行う運動は仕事とは別に指導を行う必要がある可能性があります

身体活動に関する現行のガイドラインでは,余暇時間の運動と仕事上の身体活動が区別されておりませんが,こういった結果を考えると余暇時間と仕事での身体活動は分けて考える必要がありそうですね.

これは労働者が平日に定期的な運動を行えるような環境づくりを企業に働きかけるデータとして活用できますね.

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