理学療法士の視点で見る加圧トレーニング

運動療法・物理療法
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 理学療法士の視点で見る加圧トレーニング 

数年前から加圧トレーニングを使った筋力トレーニングが,さまざまな場面で取り入れられるようになってきておりますが,私も含めて理学療法士の間で,まだまだ加圧トレーニングの本質が十分に理解されている状況にはないと思います.

われわれ理学療法士も筋力トレーニングの1つの方法論として加圧トレーニングについて理解しておく必要があります.

今回は理学療法士の視点で加圧トレーニングについて考えてみたいと思います.

 

 

 

 

 

 加圧トレーニングはいつ開発されたのか? 

加圧トレーニングとは加圧により軽負荷,短期間で筋が肥大するとして数年前に注目された筋力トレーニングの方法です.

加圧トレーニングは約40年前に佐藤義昭氏((株)サトウスポーツプラザ)によって開発されたものです.

最近は加圧トレーニングに関するエビデンスも少しずつ出されてきておりますが,研究成果がパブリッシュされている今でもまだ多くの人が加圧トレーニングに対して半信半疑という状況かもしれません.

 

 

 

 

 

 

 

 加圧トレーニングによる筋力増強のメカニズム 

加圧トレーニングといえばまず重要なのが血流制限です.

血流制限を伴う軽負荷を用いることで,通常の高負荷トレーニングと同等の筋肥大・筋力増強効果の認められることが明らかにされております.

基本的には四肢の基部を圧迫してトレーニングを行うこととなります.

これらのトレーニング方法による筋肥大誘発メカニズムには血流制限による低酸素環境が関係していると考えられています.

血流制限による低酸素環境下での運動は,局所的な乳酸などの無酸素性代謝物の蓄積を促し,成長ホルモンなどの内分泌系の活性を亢進させます.

成長ホルモンや,成長ホルモンの刺激によって肝臓や骨格筋より分泌される IGF1は筋肥大を誘発します.

血流制限による局所的な低酸素環境によって筋内の酵素活性が上がることも明らかにされております.

大静脈遮断による慢性的な血流制限によって筋肥大を起こしたラットの筋で,一酸化窒素濃度が有意に上昇していることが観察されております.

一酸化窒素は筋の幹細胞である筋サテライト細胞の増殖・分化を促進します.

トレーニングによる筋肥大率が大きい速筋線維は,サイズの原理に準じて,軽負荷のレジスタンスエクササイズではあまり動員されないとされておりますが,血流制限下での運動においては,血流制限を行わない高強度の運動時と同程度の筋電図の振幅を示すことも明らかにされております.

これは低酸素環境下では有酸素性のエネルギー供給を主に行う遅筋線維が十分に活動できなくなるため,速筋線維の追加動員による補償が起きているためではないかと考えられております.

 



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 加圧トレーニングによる速筋線維動員のメカニズム 

筋力トレーニングの負荷が強くなると,筋収縮時間が伸びて,その間は筋線維周辺の血流が阻止されます.

運動が繰り返されているので,間欠的に血流が得られますが筋線維全体として徐々に酸素不足(虚血)状態に陥ります.

この仕組みを使って,トレーニング筋の血流を人工的に阻止すると,筋内在性の酸素(ミオグロビン結合酸素)が不足し,優先的に速筋線維の活動を引き出されます

これが加圧トレーニングの原理です.

加圧トレーニングの方法はさまざまですが,一般的にはターゲットする筋に対してマンシェットを巻いて,1RMの50%負荷を用い,大腿部筋の場合約200mmHgの加圧,上腕部筋の場合100 mmHgの加圧を付加して行います.

この方法でトレーニングを行えば,軽い負荷でも筋力の改善が期待できるわけです.

しかし,トレーニング負荷は軽くても筋肉の代謝性物質の蓄積が亢進するので,代謝性受容器からの血管運動中枢への投射が,実際の負荷に働く神経性ドライブよりも高くなります.

 

 

 

 

 

 

 加圧トレーニングの適応とならない状態は? 

前述したように適度に血流を制限することで,低負荷にもかかわらず,多くの筋線維を刺激し,筋肥大と筋力増強が得られますので,加圧トレーニングは筋力トレーニング法として非常に有用であると考えられます.

加圧トレーニングではその名の印象から血圧上昇を招きやすいととらえられることが多いですが,実は加圧トレーニングでは,日常活動レベルの低負荷強度が用いられることが多く,高強度筋力トレーニングに比較すると,トレーニング中の血圧上昇は低く抑えられることが多いです.

したがってあくまで血圧が上昇しやすいといったのは,加圧トレーニングの名前から連想される印象的なものだと考えられます.

一方,血流制限という特殊な状況で行うトレーニング法であり,その適応については十分注意する必要があります.

深部静脈血栓症,先天性血栓性素因,抗リン脂質抗体症候群を合併する場合には,加圧トレーニングは禁忌であり,重篤な心疾患患者も専門施設でなければ実施できません.

低負荷強度ではありますが,筋力トレーニングである以上もちろん血圧上昇の危険性も考慮した上でトレーニングを行う必要があるでしょう.

 

 

 

 

 

 

 加圧によるその他の効果 

加圧によって筋力トレーニングが効率的に実践できるというのが加圧トレーニングの利点なわけですが,加圧には筋力トレーニング以外にも利点が多くあります.

例えば市販の加圧シャツを装着することで脊髄小脳変性症の失調症状が軽減されたといった報告もあり,加圧によって感覚入力が増えることで動作パフォーマンスを改善する効果も考えられます.

 

今回は理学療法士の視点で加圧トレーニングについて考えてみました.

比較的新しいトレーニング法ですが理学療法士の引き出しの1つとして持っておきたいトレーニング方法ですね.

コメント

  1. […] 理学療法士の視点で見る加圧トレーニング数年前から加圧トレーニングを使った筋力トレーニングが,さまざまな場面で取り入れられるようになってきておりますが,私も含めて理学療 […]

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