第7回日本運動器理学療法学会開催までに読んでおきたい研究紹介 人工股関節全置換術

人工股関節全置換術
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 第7回日本運動器理学療法学会開催までに読んでおきたい研究紹介 

 人工股関節全置換術 

一昨年まで行われた日本理学療法士学会が,昨年度から完全に分科会学会単独での開催となりました.

令和元年10月4-6日に岡山県で第7回日本運動器理学療法士学会が開催されます.

今回はこの第7回日本運動器理学療法士学会の一般演題の中から人工股関節全置換術関連の面白そうな研究をいくつかご紹介いたします.

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 THA前後における股関節可動域と歩行中最大関節角度の関係 

 研究の目的 

人工股関節全置換術(以下THA)後では,長期的に歩容異常が残存することが知られており,術後の歩行機能を改善することが理学療法の重要な目的の一つとなります.

特にTHA後の歩容は,立脚期の股関節伸展角度や内転角度の低下が特徴とされ,これらは術前後の筋力低下や疼痛,脚長差などと共に関節可動域制限が大きく関与していると考えられます.

しかし,臨床的には関節可動域が獲得されていても,歩行中に関節角度が減少している症例を経験するなど,可動域と歩行中の関節角度がどの程度関与するかは不明であります.

この研究の目的は,術前及び術後の伸展・内転可動域と歩行中最大伸展・内転角度の関係性をそれぞれ検討することとなっております.

 

 

 

 

 

 

 

 研究の方法 

対象は,当院にTHA目的に入院した変形性股関節症患者25例,25股となっております.

男性7例,女性18例,年齢66.4±9.1歳であり,在院日数は22.3±7.0日でありました.

股関節以外の下肢関節に著しい変形を有するもの,独歩困難な症例は除外されております.

術式は全例後外側アプローチであり術後翌日にドレーンを抜去した後,早期に荷重と歩行練習を行っております.

評価は,THA術前と術後当院退院時に行い,歩行立脚期の矢状面・前額面の最大関節角度(伸展・内転)と伸展・内転可動域を評価しております.

伸展・内転可動域は,日本リハビリテーション医学会の測定法に基づきゴニオメーターを用いて評価が行われております.

矢状面・前額面の歩行中最大角度は,三次元動作解析装置(VICONMX,ViconMotionSystem社)と床反力計4枚(OR6,AMTI社)を用いて評価が行われております.

赤外線反射マーカーセットはPlug-In-Gaitモデルを使用し全身に35個貼付し,歩行は裸足での自由歩行としております.

一歩行周期を100%で正規化し,立脚期の股関節最大伸展・内転角度を抽出しております.

統計解析は,Pearsonの積率相関係数を用い有意確率は5%としております.

 

 

 

 

 

 

 

 

 研究の結果 

歩行中の立脚期最大伸展角度と伸展可動域は,術前(r=0.413,p=0.040)術後(r=0.480,p=0.015)ともに有意に正の相関を示しております.

一方,歩行中の立脚期最大内転角度と股関節内転可動域は,術前は有意に正の相関を示した(r=0.575,p=0.003)ものの,術後は有意な相関関係を認めておりません(r=0.244,p=0.240).

 

 

 

 

 

 

 

 

 研究の結論 

この研究では,伸展可動域と歩行中伸展角度は術前後とも有意な関係性を認め,歩行中の伸展は可動域の影響を受ける可能性が考えられます.

一方,内転可動域と歩行中最大内転角度において術前は関係を認めたが術後は関係を認めておりません.

術後早期の歩行中最大内転角度は可動域以外の要因の影響を受けている可能性があると考えられます.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 感想 

非常に興味深い結果ですね.

この結果から考えると歩行中の股関節伸展可動域を拡大させるためには,伸展可動域の拡大を図るアプローチが先決となりますが,歩行中の内転可動域を拡大させるためには,臥位での可動域運動にとどまることなくcloseのポジションで荷重位での股関節内転角度を増加させる必要がありそうですね.

荷重位での内転運動を獲得する上でキーになるのは中殿筋をはじめとする股関節外転筋群の遠心性収縮機能でしょうか.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 THA術後1ヶ月時の自覚的脚長差に関わる術前因子の検討 

 研究の目的 

人工股関節全置換術(THA)後のQOLに影響する因子の一つとして術後の自覚的脚長差が重要であるとされております.

自覚的脚長差は手術により股関節中心が下方へ引き下げられることで股関節外転筋(外転筋)が伸張され,股関節内転制限や術側への骨盤側傾が増加することが要因であると考えられております.

また,近年では術前からの理学療法介入によりTHA後の身体機能が向上するとの報告もあります.

つまり,術後の自覚的脚長差に関わる因子を把握することは術前からの効率的な理学療法介入の一助になり得ると考えられます.

しかし,術後の自覚的脚長差に関わる術前因子を検討した報告は見当たりません.

この目的は,THA後1ヶ月時の自覚的脚長差に関わる術前因子を検討することとなっております.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 研究の方法 

2週クリニカルパスの初回片側THAを実施した41例41股(女性39例,男性2例,平均年齢66.80±8.43歳,全例後側方アプローチ)を対象としております.

検討項目は術後1ヶ月時の自覚的脚長差と術前の外転筋弾性率,VAS,股関節可動域(屈曲・伸展・外転・内転),股関節外転筋力(ハンドヘルドダイナモメーター,ベルト固定法),X線正面像における骨盤側方傾斜角となっております.

自覚的脚長差有りの判断はブロックテストにてX線学的脚長差より5mm以上脚長差を感じている場合としております.

外転筋弾性率は剪断波エラストグラフィを用いたデータから弾性率を求め,5回測定し平均値を用いております.

測定肢位は背臥位で股関節屈曲10°,内外転・内外旋中間位としております.

測定部位は上前腸骨棘と大転子の中点での筋縦断面としております.

THA後1ヶ月時の自覚的脚長差と各項目の相関関係をPearsonおよびSpearmanの相関係数で求めております.

 

 

 

 

 

 

 

 研究の結果 

自覚的脚長差(1.71±2.84mm),外転筋弾性率(13.60±8.64kPa),VAS(62.49±14.61mm),股関節可動域(屈曲87.44±14.86°・伸展3.17±6.32°・外転12.32±6.26°・内転2.80±7.65°),股関節外転筋力(0.60±0.08Nm/kg),骨盤側方傾斜角(1.12±2.27°)でありました.

THA後1ヶ月時の自覚的脚長差と術前の外転筋弾性率(r=0.50,p<0.01)において有意な中程度の相関関係が認められております.

その他の項目については有意な相関関係を認めておりません.

 

 

 

 

 

 

 

 

 研究の結論 

THA後1ヶ月時での自覚的脚長差と術前の外転筋弾性率に有意な相関関係がありました.

術前の骨性制限や疼痛は手術により即時的に改善することが多いです.

しかし,脚短縮などで外転筋の柔軟性が低下し,術後1ヶ月においても柔軟性の改善が乏しい場合には自覚的脚長差が残存すると考えられます.

これらのことから術前に脚短縮を認め,手術により脚延長が生じる症例には術前から外転筋の柔軟性を改善させる理学療法を行うことにより,術後の自覚的脚長差が早期に軽減する可能性があります

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 感想 

これまでの人工股関節全置換術例における自覚的脚長差に関連する研究は術後データを用いて行われているものがほとんどでしたが,この研究では術前機能に着目して研究が行われております.

術前から股関節外側のタイトネスに対して介入を行うことで術後の機能的脚長差の発生を予防できるかもしれませんね.

 

 

 

 THA前後における股関節周囲筋の筋萎縮と筋内脂肪変性の経時的変化 

 研究の目的 

人工股関節全置換術後(以下,THA)における股関節周囲筋の筋力は歩行能力を左右する要因であることから,術後の理学療法では筋力の向上に取り組むことが重要となります.

一般に,筋力は筋萎縮などの量的変化および脂肪変性などの質的変化の影響を受けます.

そのため THA 術後患者に対して効果的な筋力の向上を図るためには,筋萎縮や脂肪変性といった筋機能の術後における回復状況の特徴を把握しておくことが必要となりますが,術後の経過を詳細に分析した報告は少ないのが現状です.

この研究の目的は,THA 術前後における股関節周囲筋の筋萎縮および脂肪変性の経時的変化と健側と患側の股関節周囲筋の左右差を検討することとなっております.

 

 

 

 

 

 

 

 

 研究の方法 

対象は当院整形外科で 2016 年 3 月から 2018 年 4 月に片側の変形性股関節症により初回 THA を施行された女性 40 名(年齢 66.5± 10.7 歳)となっております.

術前後の股関節周囲筋の定量的評価として CT 画像を用いております.

筋萎縮の指標である筋断面積と筋内脂肪変性の指標である CT 値は,仙腸関節最下端での水平断像と上下 1 枚の計 3 スライスから大殿筋,中殿筋,小殿筋,腸腰筋,梨状筋の平均値を算出しております.

また測定時期は術前と術後 1 年としております.

統計は患側の術前後の比較と術後 1 年における健側と患側の比較を Shapiro-wilk検定にて正規性を確認し,対応のある t 検定または Wilcoxon の符号順位検定を用いております.

 

 

 

 

 

 

 

 研究の結果 

患側の股関節周囲筋の筋断面積は,術前(中殿筋 2042±460mm2 ,腸腰筋 713±178mm2 )と比較して術後(中殿筋 2479±486mm2 ,腸腰筋 903±172mm2 )に有意に高値を示した.一方,小殿筋は術前(777 ±210mm2 )と比較して術後(638±160mm2 )で有意に低値を示しております.

大殿筋と梨状筋の筋断面積は変化を認めておりません.

患側の股関節周囲筋の CT 値は,術前(大殿筋 18.9±12.3HU,中殿筋 30.6±10.5HU,腸腰筋 40.9±8.5HU)と比較して術後(大殿筋 23.7±11.7HU,中殿筋 38.8±8.6HU,腸腰筋 51.4±8.4HU)で有意に高値を示しております.

一方,小殿筋は術前(21.3±13.5HU)と比較して術後(13.5±13.4HU)で有意に低値を示しております.

梨状筋の CT 値は変化を認めておりません.

また,THA 術後 1 年では中殿筋の筋断面積のみ左右差が認めておりません.

その他の筋断面積と CT 値は健側と比較して患側で有意に低値を示しております.

 

 

 

 

 

 

 

 研究の結論 

術後 1 年で中殿筋の筋萎縮と脂肪変性は術前よりも改善し,特に筋萎縮については健側と同等まで回復することが明らかとなりました.

一方,股関節の深層に位置する小殿筋や梨状筋の術後 1 年における回復状況は不良であることが示されました.

これらの結果より,THA 術後の機能向上を効果的に行うために,小殿筋や梨状筋などの機能に着目した評価や介入が重要であることが示唆され,理学療法プログラムの立案の一助となると考えられます.

 

 

 

 

 

 

 

 感想 

術後1年が経過すれば表層筋群の筋萎縮に改善が見られるものの深層筋群の筋委縮の改善には至らないといった結果は非常に興味深いと思います.

梨状筋や小殿筋といった深層筋群にターゲットを絞って自主トレーニングを継続することが,長期的な人工股関節全置換術例のアウトカムや満足度を向上させることにつながりそうですね.

 

今回はこの第7回日本運動器理学療法士学会の一般演題の中から面白そうな研究をいくつかご紹介いたしました.

学会に参加される方は学会までに抄録をしっかり読み込んで参加したいですね.

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