知っているようで知らない体重の評価

投稿者: | 2018年11月20日

われわれ理学療法士もクライアントの減量を目的に運動療法を行う機会は少なくないと思います.

厚生労働省は2000年に国民の健康増進の総合的な推進を図るための基本的な事項を示し,21世紀における国民健康づくり運動,いわゆる「健康日本21」を開始いたしました.

その活動の中で運動については「健康づくりのための運動基準2006」を作成し,2013年には運動のみならず日常生活活動にも着目し,名称を「健康づくりのための身体活動基準2013」と変更し,糖尿病や心疾患,ロコモティブシンドローム等の予防,生命予後改善につながる身体活動の基準を設けました.

このような社会的な動きを考えると,理学療法を行うにあたっても身体活動や体重管理に着目することは重要であると考えられます.

今回は理学療法士に重要な「体重」の知識について整理してみたいと思います.

 

 

 

 体重の正常値および異常値は? 

日本人の標準体重は,国際的な標準指標であるBMI(body mass index:体重/身長(m2))から算出され,男女ともに標準とされるBMIは22.0とされております.

この22.0は,統計上で心血管疾患や脳血管障害の危険因子となる糖尿病,高血圧,脂質異常症の有病率が最も低い数値とされております.

またBMI25.0を境に死亡率が顕著に上昇するとの報告があります.

このBMIの数値をベースに世界保健機関は肥満の分類を設けており,BMI30以上を肥満としているのに対して,本邦では日本肥満学会がBMI25以上を肥満の基準としております.

この差は,欧米に比較して日本人が瘠せ型であること,それにもかかわらずBMI25~30で肥満の起因となる合併症の有病率が欧米よりも高いことによります.

つまりBMIにおける肥満の基準は欧米よりも日本の基準の方が厳しいというわけです.

 

 

 

 肥満以外に体重が増加する原因がある? 

実は肥満以外でも体重が増加することがあるので注意が必要です.

肥満というのは脂肪組織に脂肪が蓄積した状態ですが,それ以外の体重増加の要因として体内の体液貯留が考えられます.

体液貯留をもたらす病態としては,肝不全(静脈圧亢進,低アルブミン血症),腎不全(尿量低下),心不全(ポンプ機能低下によるうっ血)などがあり,これらは非常に短期間で体重増加をきたすことが多く,肥満症と異なり運動療法におよる病態の改善が見込めないため,まずは原疾患に対する治療が優先されます.

 

 

 

 体重減少 

体重というと体重増加ばかりに目が向けられがちですが,近年は体重減少も注目されるようになってきております.

がんや心不全,慢性閉塞静肺疾患などの慢性疾患を原因とする炎症の亢進,異化亢進,インスリン抵抗性,栄養失調などにより体重が減少した状態をカヘキシア(悪液質)と呼びます.

カヘキシアは加齢による身体機能低下,骨格筋減少の状態を表現したサルコペニアの一因でもあり,サルコペニアに低栄養や低活動が加わり健康障害が生じやすい状態とフレイルと呼びます.

このように体重増加だけではなく,体重減少にも着目して理学療法を行うことが重要になってきているわけです.

 

 

 体重の体脂肪の評価方法 

体重の測定は市販の体重計にて可能であり,身長と合わせればBMIも算出可能ですが,肥満に関連する健康障害の原因となる体脂肪については体重計での測定は困難です.

より正確に体脂肪を測定する方法としては二重エネルギーX線吸収法(DEXA)がありますが,これには大掛かりな装置が必要であり,臨床場面での汎用は難しい場合が多いです.

最近,臨床において使用頻度が高くなっているのが生体電気インピーダンス法(BIA)を用いた体脂肪の測定です.

この方法では四肢に電流電極と電圧電極を装着し電流を流すことで四肢・体幹の部位別インピーダンスを測定し,筋量・水分量・脂肪量を算出することができます.

さらに脂肪の中でも特に肥満による健康障害と関連が強い内臓脂肪の蓄積量の測定方法としては腹部CTが使用されるのが一般的です.臍レベルのCT断層撮影により算出された内臓脂肪面積が100cm2を超えると,高血圧,脂質異常,高血糖の心血管疾患危険因子を1つ以上合併するとされておりますので,日本肥満学会では男女ともに100cm2以上を肥満の内臓脂肪蓄積の基準としております.

この内臓脂肪面積と強い関連を持つのが,臍レベルの腹囲です.

男性の腹囲85cm,女性の腹囲90cmが内臓脂肪量100cm2に相当するとされており,簡便に行える腹囲の測定が内臓脂肪量を評価する上では有用です.

 

 

 

今回は体重の評価についてご紹介させていただきました.

体重って簡単に得られる指標ですが,あまり着目することなく理学療法を行っている方も少なくないと思います.

BMIやBIA,腹囲などの簡単に評価が可能な指標も少なくありませんので,こういった情報を理学療法の中に活かせると良いですね.

 

参考文献

1)Tokunaga K,  et al:Ideal body weight estimated from the body mass index with the lowest morbidity. Int J Obes. 1991 Jan;15(1):1-5.
2)Jensen MD,  et al:2013 AHA/ACC/TOS guideline for the management of overweight and obesity in adults: a report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines and The Obesity Society. J Am Coll Cardiol. 2014 Jul 1;63(25 Pt B):2985-3023.
3)Whitlock G,  et al:Body-mass index and cause-specific mortality in 900 000 adults: collaborative analyses of 57 prospective studies. Lancet. 2009 Mar 28;373(9669):1083-96.

 

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