急性期と生活期ではリスク管理の重要性は異なるのか?

投稿者: | 2018年9月30日

われわれ理学療法士・作業療法士はさまざまなクライアントに運動療法をはじめとする理学療法・作業療法サービスを提供するわけですが,運動には必ずリスクがつきまといます.したがって理学療法や作業療法を実践する上で,リスク管理について学んでおくことは非常に重要であり,新人教育においてもまずは徹底したリスク管理教育が必要となります.

臨床実習生が実習目標として,急性期病院なのでリスク管理をしっかりと学びたいといった目標を立案していることが多いのですが,リスク管理というと急性期における理学療法・作業療法のフィールドにおいてその重要性が強調されてきた印象があります.

しかしながら果たしてリスク管理というのは急性期における理学療法・作業療法のみで重要視されるものなのでしょうか?

今回は急性期と生活期ではリスク管理の重要性は異なるのかについて考えてみたいと思います.

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 リスク管理は急性期でのみ必要なもの? 

実は脳卒中の約7~8割,心停止の約8割は家庭もしくは高齢者施設で起こっているのです.

これらの血管系の疾病というのはまさに生活期に関わる理学療法士・作業療法士の活動の場で発症しているということになります.

リスク管理は急性期が最も重要であるといった認識のもと,急性期以降ではリスク管理に対する意識が薄れていく感覚を持った理学療法士・作業療法士が多いと思いますが,生活期の理学療法士・作業療法士こそが,発症の場に立ち会う可能性があり,もし疾病発症の前駆症状を見逃すことがあれば理学療法・作業療法は有害にすら成り得ます.

実は生活期というのは見かたを変えれば「超」急性期であるともいえるわけです.

したがって理学療法士・作業療法士が運動療法や動作練習を通じて身体へ負荷をかけていく以上,病期に関わらずリスク管理は必須であるといった認識を持つ必要があると思います.

 

 

 

 

 

 

 急性期・生活期におけるリスク管理の相違 

発症早期の理学療法・作業療法では急性期医療と並行して実施されるため,病態や使用薬剤などの医学的情報を医師や看護師と同等に理解する必要があり,十分な知識とリスクの分析力が求められます.

特に急性期では病態が不安定であるために,その管理のために使用される生体モニタ情報や各種検査所見を得られやすいこれらの所見を活用することは高度な技能を要しますが,考え方を変えればたくさんの客観的な情報が入手できるため,全身状態や病態の変化を捉えるうえで極めて有用であり,リスク管理のための大きな武器になります.

 

一方で急性期から亜急性期・生活期へ移行していくにつれて,病態は安定し医学的情報というのは少なくなっていきます

生活期であれば心電図モニターを装着しているわけでもないでしょうし,血液検査の情報なんてものもほとんどありません.

血圧や自覚症状といった数少ない数値と,変化の少ない身体所見や自覚症状をもとにリスク管理を行っていくことになり,その状況下でのリスク管理は想像以上に難しいと言えます.

病態の安定に伴いリスクは少なくなり,リスク管理の重要性は小さくなると考えられがちですが,あくまで病態は「安定」するのであって消えてなくなることはなりません.

生活期にもリスクは潜在化した状態で常に存在し一生涯にわたってつきまとうわけです.

また逆に病態が安定することでリスクは見えにくくなり,リスク管理を一層難しくするといった側面もあります.

 

 

急性期に遭遇する機会の多い有害事象としては,心停止などの重篤なものに加えて感染症・心疾患・深部静脈血栓症・肺塞栓症などが挙げられます.

日々の臨床では転倒や不整脈,血圧低下,ライン類の抜去などにも遭遇する機会少なくありません.

一方で生活期では転倒・皮下出血・誤嚥などが主に挙げられます.

生活期では医学的管理が少なくなるため見過ごされている事例も少なからずありますので,われわれ理学療法士・作業療法士が些細な変化を汲み取り,リスクを事前に回避するということも非常に重要な役割となります.

実はこういったリスクマネジメントの視点を持った理学療法士・作業療法士というのは訪問看護師からも強い信頼を得ることができます.

 

 

 

 

 

 

 急性期と生活期におけるリスク管理の注意点 

急性期では状態変化や急変に直面することも多く,高度な対応が求められる場面も多いわけです.

豊富な情報や機器を十分に生かし安全に理学療法・作業療法を行うことが重要となります.

一方で生活期では急変は少ないものの,情報は急性期と比べ少ないため,対象者のわずかな変化やリスクを察知する能力が理学療法士・作業療法士にとって非常に重要となります.

 

 

リスク管理として真っ先に思いつくのはバイタルサインの測定だと思います.

そもそもバイタルってどういった意味かご存知でしょうか?

Vitalというのは必要不可欠なといった意味ですが,血圧や脈拍数などが必要不可欠な徴候ということになります.もちろんバイタルサインの中には呼吸や顔色,疼痛等の評価も含まれます.

われわれが目安にすることが多いのは,血圧や心拍数(脈拍数)ですが,血圧や脈拍数は病期を問わず測定され,リスクを察知したり運動量を調整したりする際の重要な情報となります.

しかしながら単に血圧や脈拍数を測定するだけではリスクを十分に拾い上げられず.特に医療機器の少ない現場では一歩踏み込んだ評価が必要となります.

また得られる情報が少ないからこそ,血圧や心拍数の意味をしっかりと理解しておくことが必要となります.以前の記事でもご紹介いたしましたが,血圧の上限値や下限値だけであれば素人でも知っています.

血圧が何を意味するのかを専門職としてきちんと理解しておくことが重要です.

 

 

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今回は急性期・生活期におけるリスク管理について考えてみました.

リスク管理は急性期において必要なものといった認識は捨てましょう.

病気を問わず運動にはリスクが付きまとうといった認識を持ったうえで,サービスを提供することが重要です.

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