膝蓋骨脱臼の理学療法評価

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 膝蓋骨脱臼の理学療法評価 

膝蓋骨脱臼は理学療法士がリハビリテーションを行うことの多い疾病の1つです.

特に膝蓋骨脱臼の理学療法では,動的なアライメントに着目した上で再発予防を目的とした介入が重要となります.

前回は膝蓋骨脱臼の病態についてご紹介させていただきました.

今回は理学療法士の視点で膝蓋骨脱臼の理学療法評価について考えてみたいと思います.

 

 

 

 

 

 

 

 理学療法評価 

 

 視診 

まずは腫張や発赤の有無を確認します.

MPFLの損傷を合併している場合には,大腿骨側での損傷が多く,大腿骨内頼部に腫張が出現する場合が多いです.

また関節内には血腫を伴うこともあります.

また内側広筋の機能不全が膝蓋骨脱臼の危険因子となりますので,内側広筋の筋委縮の非対称性を確認し,筋萎縮や筋力への影響を評価しておくとよいでしょう.

 

 

 

 

 

 

 問診 

膝蓋骨脱臼では受傷機転を確認することが重要となります.

特にマルアライメントに伴う接触性の受傷なのか,外傷に伴う接触性の損傷なのかが非常に重要です.

前者の場合には,再発予防を目的としたアライメントコントロールが理学療法を行う上で非常に重要となります.

また受傷前にも脱臼・亜脱臼の既往歴があったかも合わせて確認しておくことが良いでしょう.

さらにスポーツ動作での重症の場合には,競技特性,練習量や練習頻度,練習内容や方法,練習強度などを確認し,練習への段階的な復帰への参考とします.

 

 

 

 

 

 

 主訴 

疼痛が主訴となる場合がほとんどですが,荷重時の不安定感や関節運動の不安感を訴える場合もあります.

疼痛は部位,出現場面,出現動作とフェイズ,強さや痛み方(ズキズキする,瞬間的に痛むなど)を確認します.

 

 

 

 

 

 

 疼痛誘発テスト 

疼痛の出現する負荷の大きさや関節角度,疼痛の程度を把握します.

圧痛検査も行いますが,圧を加える強さで損傷の程度を推測することが可能となります.

運動時痛の検査としては自動,他動,抵抗下の順序で膝伸展,屈曲運動を行い,疼痛の出る膝関節角度や疼痛の部位や程度を確認するとよいでしょう.

荷重時痛の確認については急性期には控えるべきですが,疼痛が減少してきたら,スクワットや前方踏み込み,両脚もしくは片脚のジャンプなど,荷重量や関節肢位を変えて荷重することで,疼痛の出現する関節角度や程度を把握します.

最終的には歩行やランニング,スポーツ動作などを行い,疼痛の出現を確認する段階へ移行します.

 

 

 

 

 

 

 腫脹検査 

関節内の腫脹の程度を評価し,受傷後の経過を判断する目安とします.

腫張の評価にはPatella ballottement test (膝蓋跳動検査) を使用します.

膝蓋骨上部を片方の手でつかんで貯留液を下方へ押し出し,もう一方の手で膝蓋骨を大腿骨側へ押し,関節内水腫により膝蓋骨が浮いていれば、押しつけたときにコツコツと当たる感覚が確認されます.

またIndentation testも関節腫張を評価する上で役に立ちます.

Indentation testは膝関節を他動的に屈曲させ,関節内水腫により膝蓋腱両脇の窪みが消失しているか否かを評価します.

 

 

 

 

 

 

 アライメント評価 

アライメント評価では膝蓋骨再脱臼のリスクを高める要因について確認します.

 

 

中でもQ-angleの確認は必須です.

Q-angle測定に当たっては,膝蓋骨中心と上前腸骨鰊および脛骨粗面を結ぶ2本の直線がなす角度を測定します.

とくに大腿脛骨関節における下腿の外旋や外方偏位アライメントはQ-angleを増大させるので,大腿脛骨関節のアライメントを評価しておくことも重要です.

膝外大腿関節においては,膝蓋骨のアライメント不良が大腿骨滑車内での安定性を低下させ,内側広筋の機能低下を招くことになりますので,膝蓋骨の外側不安定性の評価も欠かすことはできません.

急性期を脱して,アライメントを評価する際には,静的なアライメントだけでなく,スクワットやランジ動作などの動的なアライメントを確認することも重要です.

特に過度の膝関節外反・外旋運動に着目し,歩行の中で股関節の内転,下腿の内旋,膝の外反を助長している要因が何かを見極めることが重要です.

 

 

 

 

 

 

 

 関節可動域検査,膝蓋骨可動性評価 

まずは膝関節の屈曲,伸展および股関節の可動域と膝蓋骨の可動性を確認します.

股関節の可動域については,大腿直筋,腸脛靭帯は膝蓋骨に連続するため,それぞれ股関節伸展・内転可動域を確認するとともに,大腿直筋や腸脛靭帯のタイトネスを確認します.

膝蓋骨の可動性評価も重要です.

伸展時の挙上,屈曲時の下制,およびさまざまな屈曲角度での内方への可動性を評価し,周囲軟部組織の拘縮による制限を確認します.

受傷からしばらくは屈伸に伴う疼痛や不安感が強いため,確認しながら丁寧に実施する必要があります.

 

 

 

 

 

 

 

 徒手筋力検査(MMT),安定性評価 

安定性を確認し,筋力発揮の程度を評価します.

既定のMMTに加えて,伸展抵抗や屈曲抵抗と同時に下腿外反方向にも力を加えて安定性を評価します.

安定性の低下がみられる場合には,伸展運動では膝蓋大腿関節アライメントや大腿四頭筋筋力,屈曲連動では大腿脛骨関節やハムストリング筋力の問題があることが推察されます.

さらに可能であれば荷重位における膝関節の安定性も評価します.

 

 

 

 

 

 膝蓋骨評価 

膝蓋骨脱臼のクライアントの理学療法評価を行う場合には,膝蓋骨の運動の軌跡(トラッキング)の評価することも重要です.

いくつか膝蓋骨のトラッキングを評価する方法がありますが,まずはJ-signと呼ばれる方法をご紹介いたします.

 

J-sign

膝関節屈曲45°から膝を伸展させ,最終伸展にて膝蓋骨が大腿骨の滑車から外側に逸脱する場合を陽性とします.

 

Active quadriceps test

膝関節を完全伸展位とし,大腿四頭筋を収縮させ,膝蓋骨が外方に引かれる場合に陽性とします.

 

 

 

 

今回は理学療法士の視点で膝蓋骨脱臼の理学療法評価について考えてみました.

ポイントは膝蓋骨の外側不安定性と動的アライメントの捉え方だと思います.

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