人工股関節全置換術(THA)症例における術前理学療法や術前教育って効果があるのか?

人工股関節全置換術
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目次

 人工股関節全置換術(THA)症例における 

 術前理学療法や術前教育って効果があるのか? 

人工股関節全置換術や人工膝関節全置換術を行う症例に対して,術前に理学療法を行う機会は少なくありません.

術前に可能な限り関節拘縮を改善しておけば,術後の可動域改善が得られやすくなりますし,術前に可能な限り関節周囲筋の筋力低下を改善しておくこおとは重要であると考えられます.

何より術前にクライアントとの信頼関係を気付いておくことも重要です.

しかしながら術前の理学療法介入というのは本当に意味があるのでしょうか?

今回は30,000例を超える人工股関節全置換術例に対して行われた術前教育および術前理学療法の効果を検証した論文を紹介させていただきます.

 

 

 

 

 

 紹介する論文 

Acta Orthop. 2019 Aug;90(4):306-311. doi: 10.1080/17453674.2019.1605669. Epub 2019 Apr 17.

Minor influence of patient education and physiotherapy interventions before total hip replacement on patient-reported outcomes: an observational study of 30,756 patients in the Swedish Hip Arthroplasty Register.

Torisho C, Mohaddes M, Gustafsson K, Rolfson O

今回ご紹介いたします論文は2019年に掲載された新しい論文です.

スウェーデンの人工股関節登録システムを用いたかなり大規模な研究となっております.

 

 

 

 

 

 

 研究背景と目的 

It is unclear whether physiotherapy interventions or patient education before total hip replacement (THR) is beneficial for patients postoperatively. Utilizing the Swedish Hip Arthroplasty Register (SHAR), we retrospectively studied the influence of preoperative self-reported exposure to physiotherapy and/or patient education on patient-reported outcomes 1 year after THR.

人工股関節全置換術例に対する術前教育および術前理学療法の有効性というのはこれまで十分に明らかにされておりません.

この研究では,スウェーデンの人工股関節登録システムを用い,後方視的に術前教育および術前理学療法の効果を術後1年における患者立脚型のアウトカムを用いて検討することを目的としております.

 

 

 

 

 

 対象および方法 

Data covering all THRs performed in Sweden for osteoarthritis, between the years 2012 and 2015, was obtained from SHAR. There were 30,756 patients with complete data. Multiple linear regression modelling was performed with 1-year postoperative PROMs (hip pain on a visual analogue scale [VAS], with the quality of life measures EQ-5D index and EQ VAS, and surgery satisfaction VAS) as dependent variables. Self-reported physiotherapy and patient education (yes or no) were used as independent variables.

対象は2012年から2015年の間に人工股関節全置換術を行い,スウェーデンの人工股関節全置換術登録システムに登録した30,756例となっております.

術後1年の疼痛,QOL,手術に対する満足度を従属変数,術前教育および術前理学療法の有無を独立変数として,重回帰分析を用いて術前教育および術前理学療法の有無が術後1年の患者立脚型アウトカムに与える影響を検討しております.

 

 

 

 

 

 結果 

Physiotherapy was associated with slightly less pain VAS (-0.7, 95% CI -1.1 to -0.3), better EQ-5D index (0.01, CI 0.00-0.01), EQ VAS (0.8, CI 0.4-1.2), and better satisfaction VAS (-0.7, CI -1.2 to -0.2). Patient education was associated with slightly better EQ-5D index (0.01, CI 0.00-0.01) and EQ VAS (0.7, CI 0.2-1.1).

術前理学療法の実施は術後1年における疼痛軽減,QOL向上,満足度向上に寄与していることが明らかにされており,患者教育についてもQOLの向上に寄与しているといった結果でありました.

しかしながら95%信頼区間を見てもわかるようにその寄与率は非常に小さく,効果はあるがあってもわずかなものであるといった結果でありました.

 

 

 

 

 

 

 考察 

Even though we found statistically significant differences in favor of physiotherapy and patient education, the magnitude of those were too small and inconsistent to conclude a truly positive influence. Further research is needed with more specific and demarcated physiotherapy interventions.

この研究では術前理学療法および術前患者教育が人工股関節全置換術後1年の患者立脚型アウトカムの改善に有効であることが明らかにされておりますが,その寄与率は非常に小さいものであると考えられます.

今後はさらに特異的な術前理学療法介入の有効性を検討していくことが必要であると考えられます.

 

今回は30,000例を超える人工股関節全置換術例に対して行われた術前教育および術前理学療法の効果を検証した論文を紹介させていただきました.

術前理学療法と一言で言ってもさまざまな介入方法が考えられると思います.

もう少し術前理学療法の介入内容を明確にした上で比較を行えば,必ず術前理学療法は意義のあるものだと思っております.

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