医師の「師」と理学療法士・作業療法士の「士」は何が違うの?

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医師の「師」と理学療法士の「士」は何が違うの?

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は「士」ですが,医師・看護師なんかは「師」ですよね.

これに関して不思議に思ったことはありませんか?

この「師」と「士」にはどのような違いがあるのでしょうか?

今回は「師」と「士」の相違について考えてみたいと思います.

 

 

 

 

 

医療・福祉系資格における「師」と「士」

「師」が使用されている医療系資格としては,医師・歯科医師・薬剤師・看護師・助産師・臨床検査技師・診療放射線技師・柔道整復師・はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師などが挙げられます.

 

「士」が使用されている医療系資格としては,理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・歯科技工士・救急救命士・管理栄養士・臨床工学技士・歯科衛生士・健康運動指導士・義肢装具士などが挙げられます.

 

 

 

 

 

 

福祉系の資格における「師」と「士」

「士」が使用されている福祉系資格としては,保育士・社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士・手話通訳士などが挙げられます.

「師」が使用されている福祉系資格としては,理容師・美容師・クリーニング師・調理師・製菓衛生師などが挙げられます.

 

 

 

 

 

 

医療・福祉系以外の資格における「師」と「士」

医療・福祉系以外で考えてみると,「士」が使用されている資格として,行政書士・司法書士・弁護士・社会保険労務士・中小企業診断士・弁理士・税理士・建築士・測量士・施工管理技士などが挙げられる一方で,「師」が使用されている資格というのはあまり無いわけです.

例外として考えられるのは「教師」「牧師」でしょうか?

 

 

 

 

 

「師」と「士」はなぜ異なるのか?

「師」と「士」はなぜ異なるのかについては以前からさまざまな議論がなされておりますが,師弟関係のあるものは「師」,「士」は「一定の資格・役割をもった者」,「師」は「専門の技術を職業とする者」などと説明されることもあります.

ただこの説明と上述した医療・福祉資格における「師」と「士」というのは一致しないところが大きいと思います.

 

「師」と「士」ともに,主に専門的な仕事を表すときに用いられていると思います.

それでは,医師の師はなぜ士ではなく師を使うのかと不思議に思われると思います.

総務省の日本標準職業分類に設定されている小分類職業をみると,「〜師」又は「〜士」の表記になっているものは,その大半が大分類「専門的・技術的職業」に位置づけられています.

それらの職業は,建設・測量,保健医療,社会福祉,法務,経営,その他の 6つの分野にわたります.

 

 

 

 

 

 

実は「師」と「士」の違いは国家資格の制定時期に関連する?

医師の名称は既に明治2(1869)年に実施された人口調査の職業分類に使用されています.

歯科医師の名称は明治10 (1877)年の日本職業区分稿に登場します.

薬剤師の名称は明治38(1905)年に職業分類として内閣統計局に設定されております.

このように医師・歯科医師・薬剤師といった職業名は既に明治時代(獣医師のみ昭和初年)に広く使われていたと考えられます.

あん摩マッサージ指圧師,はり師,きゅう師,柔道整復師も既に明治 44(1911)年には免許鑑札の交付による営業許可制になっております.

 

気になる看護師ですが,日本で最初の看護学校は明治18(1885)年に設立されております.

当時はまだ看護に関する資格制度が導入されておらず,そのため看護の仕事に従事する者は看護婦や看護人と呼ばれておりました.看護婦に資格制度が導入されたのは大正4(1915)年の看護婦規則によります.

保健婦は昭和 12(1937)年の保健所法で名称が確立し,昭和 16(1941)年の保健婦規則によって資格が規定されております.また平成14(2002)年には,男女を問わず保健師,看護師の名称を使用することになりました.

これらの「師」のつく職業の共通する点としては,①医療分野の技術的な職業であること,②第二次大戦前に既に職業として成立していたといった共通点が挙げられます.

この2つの基準が職業名に「師」がついた基準になっていると考えられます.

 

同じ医療職であっても診療放射線技師と臨床検査技師には「技師」が,臨床工学技士には「技士」がそれぞれ使用されております.

技師と技士の使い分けは職業の性質ではなく,当該職業の成立時期に関係しているとみられます.

人体のレントゲン撮影の業務と医療分野における検体検査業務は,既に第二次大戦前に職業として認知されており,1951 年には診療放射線技師法が,1958 年には衛生検査技師法で技師の名称が使用されるようになったとされております.

一方で臨床工学技士は職業として成立したのは 1987 年の臨床工学技士法が制定されてからです.

理学療法士・作業療法士法はというと1965年(昭和40年)に制定されておりますので,やはり第二次世界大戦後ということになります.

 

今回は「師」と「士」の相違について考えてみました.

今回ご紹介した「師」と「士」の相違についてはあくまで推測です.

ただよくよく考えてみると,「師」は古くから認められている職業に,「士」は比較的新しい職業に用いられているなと思っていただけると思います.

 

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