なぜ人工関節の耐用年数は長くなったのか?

投稿者: | 2019年3月16日

 なぜ人工関節の耐用年数は長くなったのか? 

変形性股関節症や変形性膝関節症に対する人工関節全置換術の施行件数は年々増加しております.

われわれ理学療法士が人工股関節全置換術例や人工膝関節全置換術例の理学療法に携わる機会も増えてきております.

人工関節を考える上では耐用年数の話は避けては通れません.

以前は人工関節の耐用年数は10年未満でしたが,最近は30年以上の耐用年数を謳う機種すら登場しております.

今回は人工関節の耐用年数がなぜ長くなったのかについて考えてみたいと思います.

 

 

 

 人工関節手術の進化 

人工関節置換術の目覚ましい発展を考える上では,整形外科医の技術デザインや素材といった人工関節そのものの要素を考える必要があります.

整形外科医の人工関節置換術に対する手術手技が標準化され,手術自体が安定したという点も人工関節の発展を考える上では重要ですが,それ以上に重要なのが人工関節そのもののデザインや素材の変遷です.

整形外科医としての技量はもちろん重要ですが,手術主義の改善だけでは今のような長い耐用年数というのは実現されなかったでしょう.

とりわけ手術手技が話題に上りますが,デザインや素材などの進化も技術の向上と同じくらいのウエートを占めているわけです.

 

 

 

 人工関節に用いられる素材 

特に素材については,金属側も格段に良くなりました.

金属以上に進化を遂げているのが,ポリエチレン素材です.

人工関節置換術では金属と組み合わせてポリエチレンが用いられますが,特に1990年代にポリエチレンに関する研究が進んで飛躍的に耐用年数が向上しました.

今では当たり前に使われている「クロスリンク・ポリエチレン」が革新的な耐用年数の延長をもたらした主役と言っても過言ではないでしょう.

人工関節は除痛に優れ日常生活動作能力にも著しい改善が得られるわけですが,一番の問題は耐用年数でした.

昔のポリエチレンでは摩耗しやすく,摩耗粉が骨溶解を招くことから,膝関節や股関節に不安定性が生じるといった大きな問題がありました.

 

 

 

 クロスリンク・ポリエチレンとは? 

膝関節では膝蓋骨や脛骨のコンポーネントに用いられることが多いわけですが,クロスリンク・ポリエチレンというのはγ線を照射することでポリエチレンの架橋レベルを上げて分子量を高めるため,強度を落とさずに摩耗を大幅に低減させることに成功した材質です.

今となっては人工膝関節で当たり前に存在するクロスリンク・ポリエチレンですが,実際に製品化されたのは人工股関節の方が先だったようです.

当時の膝関節外科の専門家の間では,この硬さによって膝関節では大きな衝撃荷重がかかると,かえってインプラントの破損を招くのではないかといった懸念がありました.

股関節の構造は膝関節に比べればシンプルなので,まずはそこで導入に向けた試験が盛んになり,2000年(平成12年)前後から普及速度が速まったのです.

 

股関節で全く問題ないことが確認されると,膝関節でも急速に応用されるようになりました.

膝関節は荷重が大きく,靱帯とのバランスを調整するのがより難しいため,クロスリンク・ポリエチレンが使われ始めた当初は,苦労もあったようです.

股関節に関しては,今やほとんどのポリエチレンがクロスリンク・ポリエチレンに入れ替わりましたが,膝関節では従来のものも使用されています.

膝関節はどうしても骨頭の中心を軸に回旋運動など特殊な動きをするためまだまだ難しい面もあるようです.

 

 

 

 人工関節の手術手技の発展 

最近ではコンピュータ支援によるナビゲーションシステムによる手術も増えてきました.

これにより素材だけでなくより正確な手術がどの整形外科医でも可能になってきているわけです.

ランニングコストもかなりかかるようですし,システム自体が非常に高価なため,日本で人工関節を扱う施設で導入しているところはまだまだ少ないようですが,今後導入が広がるかもしれませんね

 

人工関節全置換術の理学療法を考える上では,人工関節の素材や手術手技についての理解が必須となります.

われわれ理学療法士も日々変化する目覚ましい手術手技の進化に遅れをとらないように情報を収集しないといけませんね.

 

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