人工膝関節はどのような材質でできているのか?飛行機に乗れるのか?

人工膝関節全置換術
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人工膝関節はどのような材質でできているのか?飛行機に乗れるのか?

人工膝関節全置換術例の理学療法を行う上で,クライアントから頻繁に問われることの1つに人工膝関節の材質が挙げられます.

特に医療機関では医師は多忙を極めており,クライアントが医師とゆっくりと会話できる時間というのは非常に限られております.

その一方でわれわれ理学療法士は職種の性質上,一定時間クライアントと時間を共にすることができます.

クライアントはわれわれ理学療法士にさまざまな不安や疑問を投げかけます.

その中でも「人工膝関節ってどういった材質でできているのか?」といった質問は受けることの多い質問の1つです.

今回は理学療法士の視点で人工膝関節の素材について考えてみたいと思います.

 

 

 

 

人工膝関節の材質

人工膝関節は主に大腿骨コンポーネント,サーフェイス(インサーと),脛骨コンポーネント,膝蓋骨コンポーネントの4つのコンポーネントから構成されます.

材質の視点で分類してみますと,①金属,②プラスチック,③セラミックの3種類からなり,適材適所で使い分けられております.

①金属には,コバルトクロム合金,チタン合金,ステンレス合金,ジルコニウム等があります.

これらは生体適合性に優れており,高い信頼性を得ております.

現在,主に大腿骨コンポーネントにコバルトクロム合金,脛骨ベースプレートにチタン合金が使用されることが多いです.

コバルトクロム合金というのは,もともとは航空機開発から生まれた素材で,ジェットエンジンのシリンダーなどにも使われるほど摩耗に強い素材です.

医療用としては,歯科分野でも多く利用されております.

ポリエチレンはもっと身近で,コンビニなどでもらう買い物袋等が代表例です.

もちろん人工関節で用いられるのは医療用で,特に摩耗に強い超高分子量ポリエチレンが使用されます.

②プラスチックは,超高分子ポリエチレン(ultra high molecular weight polyethylene)で,プラスチックの中でも摩耗に強いため,脛骨ベースプレートの表面を覆うサーフェイスや膝蓋骨コンポーネントとして使用され,関節軟骨の役割を果たします.

③セラミックは,アルミナとジルコニアの複合材料が現在の主流になっております.

金属アレルギー対策として生体親和性が良いのでコンポーネントに使用されることが多いです.

 

 

 

金属を体内に入れて安全性は問題無いのか?

クライアントからは金属を体内に入れて安全性は問題無いのかといった不安の声をよく耳にします.

人工関節には腐食防止処理を施されており,国際基準に基づいた高い安全性があります.

人工関節は特に安全性が重要で,各メーカーとも細心の注意を払っています.

基本的には医療機器品質管理システムに基づいて開発・製造が行われております.

また製造工程の最終段階では,滅菌処理がなされており,処理後は有害・無害を問わずすべての微生物やウイルスが生存する確率が100万分の1以下という,国際的に採用されている無菌性保証レベルで実施されているのです.

さらに人工関節の金属の部品については,製造工程で不動態化処理が施されます.

この処理は金属がそれ以上酸化しない安定した状態へと加工することで体内での腐食を防ぐためのものです.

結論から言えば,最善の対策がなされており腐食防止・安全性ともに問題無いと考えてよいと思います.

 

 

 

 

人工関節全置換術を施行してから足が重たくなった?

クライアントからは人工関節全置換術を施行後,足が重たくなった気がする,金属を入れたので重たくなったのではないかといったような意見を耳にすることもありますが,基本的には人工関節に置換したからといって足が重たくなるということはありません.

人工関節というのは,実際の骨とほぼ同じ質量で作られておりますので,金属だからといって重たいということはないわけです.

確かに実際に人工関節のインプラントを持ってみると,ずっしり重たく感じられるかもしれません.

しかしながら実際には私たちの体内にある骨とそれほど変わらない重さなのです.

骨というのはなんとなく軽いイメージがあるかもしれませんが,そもそも骨の中には血液や骨髄が通っていますし水分も含まれておりますので,実際には結構な重さがあります.

ではなぜクライアントが足の重さを感じるかいう点ですが,これには関節可動域や筋の柔軟性の影響が大きいと思います,膝関節を例にすると関節を可動させる際のスティフネスが高くなると,当然ながら歩行中に膝を屈伸するのに大きな力が必要となりますので,足が重たくなったような感覚に陥るわけです.

 

 

 

 

飛行機には乗れるのか?

術後,空港の保安検査場(金属探知機)を通過できるかを心配される方も多いです.

結論から申し上げますと,人工膝関節の材質は主に金属ですので,金属探知機の警報が鳴ってしまう場合はあります.

ただ人工関節置換術を施行していることをきちんと伝え,係員に規定に則りボディチェックを行ってもらえば,特に問題無く保安検査場を通過することができます.

問題なければ通過できるわけですが,通常よりも少し時間がかかってしまう可能性は否めませんので,飛行機を利用する場合には少し早めのチェックインすることをお勧めいたします.

 

今回は理学療法士の視点で人工膝関節の素材について考えてみました.

クライアントからの質問に的確に回答できれば,クライアントからの信頼を得られる可能性も高くなります.

こういったクライアントから良く受ける内容に関しては正確な情報を伝えられるように準備をしておきたいところですね.

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