肥満と変形性膝関節症

変形性膝関節症
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目次

 本邦における肥満の現状 

肥満と変形性膝関節症の関係を把握するためには,まず肥満のことを十分に知っておく必要があります.

日本人の肥満の実態を知るには,毎年行われている国民健康栄養調査(2002年までは国民栄養調査)のデータが有用です.

「平成25年国民健康・栄養調査」の結果では,男性の肥満者の割合は28.6%であり,2003年からみると2010年までは増加傾向であり,2011年からは変化がみられておりません.

女性の肥満者の割合は20.3%であり,10年間で減少傾向にありますが,加齢とともに肥満者の割合が増加しております.

男性は40歳代から肥満者が増え,40歳代で34.9%と最も高値を示します.

女性では20~40歳代で肥満者は少なく,50歳代以降増加し,70歳代では男女がほぼ同率になります.

国際比較においては, Organization for Economic Co-operation and Development(OECD)のHealth Dataに登録されているobesity(BMI≧30)および”overweight(25≦BMI<30)’の有病率に基づき,日本人のデータを比較したものがあります.

男女ともに, “obesity”と”overweight”をあわせた割合は韓国よりも低く,30カ国中最低であったとされております.

またBMI≧30の割合は,最も高い米国と比較して約10分の1であったと報告されております.

つまり日本人の肥満割合というのは実は低いということになります.

 

 

 

 肥満と変形性膝関節症の関係 

変形性膝関節症の危険因子は,加齢,女性,肥満,膝内反変形,外側スラスト,大腿四頭筋の筋力低下などであるといわれております.

その中で,肥満は変形性関節症に対する重要な危険因子であり,膝関節症のほうが股関節症より,より関連が深く,肥満の重要な危険因子です.

変形性膝関節症はO脚変形や椅子からの立ち上がり動作時・歩行時・階段昇降時の膝の内側痛や膝窩部病などが特徴です.

体重60kgの人が静止立位時に片方の膝にかかる負荷量は約30kgですが,歩行時には静止立位時の3倍の90kgであり,階段昇降時には静止立位時の5倍の150kgであり,体重が増加するとさらに膝への負荷が多くなり,膝関節の軟骨をすり減らし,肥満による変形性膝関節症の発症リスクが増大します.

変形性膝関節症の発症を予防するためには,40歳以下の時点でBMI25以下に維持することで発症リスクを低下させることができることから,適切なBMIを維持することが重要となります.

また肥満の変形性膝関節症例のQOLを維持させるためには,減量することにより症状を抑制することができます.

減量においては,体重の約5%(体重60kgであれば3kg)を減量することにより症状が軽減するとの報告や,肥満者では人工膝関節全置換術の術後成績が劣るという報告が多くあります.

体重の約5%の減量では腹囲の短縮はわずかであっても,変形性膝関節症の症状の改善以外にも,血糖値や脂質,血圧も改善させる効果があります.

しかし減量によりさまざまな効果が認められますが,筋肉の重量を減らさないように,栄養療法のみならず運動療法も組み合わせて実践する必要があります.

また肥満や生活習慣病の乱れは,メタボリックシンドローム(メタボ)とロコモティブシンドローム(ロコモ)の共通要因であるといわれております.

肥満がロコモティブシンドロームの主要疾患である変形性膝関節症のリスクを高めること,またメタボリックシンドロームの構成要因にあてはまる数が多いほど変形性膝関節症のリスクが高まるとされており,介護予防の2大要因であるメタボリックシンドロームとロコモティブシンドロームは,どちらも最大の予防は,肥満の解消と生活習慣の改善にあります.

 

 

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