地域の通いの場に関する最新理学療法研究紹介2

投稿者: | 2019年1月6日

一昨年まで行われた日本理学療法士学会が,今年度から完全に分科会学会単独での開催となりました.

平成30年10月20-21日に福岡県で第5回日本予防理学療法士学会が開催されました.

今回はこの第5回日本予防理学療法士学会の一般演題の中から地域の通いの場に関する研究をいくつかご紹介いたします.

 

 

 住民主体の「通いの場」における継続支援について 

住民主体の通いの場では活動の継続性が問題になることが少なくありません.

活動の継続が困難となる原因として多いのは,マンネリ化や私的社会統制が挙げられます.

こういった参加者だけでは解決できない課題を解決するためには,リハビリテーション専門職や行政による継続的な支援が必要となります.

この研究では住民主体の介護予防自主グループに対しアンケート調査を行い,理学療法士による効果的な継続支援の方針と内容を決定するために,自主グループの課題と専門職や行政に求められている支援の内容を検討しております.

対象は行政主体の介護予防教室から住民主体の自主グループを立ち上げて3カ月,9カ月が経過した29 グループとして,集団面接法による定性調査を行っております.

調査内容はですが,1)活動して良かった事,2)活動を長く続けていくために必要な事,3)活動をして困ったこと,難しいと感じること,4)専門職・行政に関わってもらいたいこととなっております.

参加メンバー全体に質問を投げかけ,メンバーの意見を聞き取り得られた回答について集計を行っております.

29 グループのうち,3カ月経過していたグループが14 グループ,9カ月経過していたグループが15 グループであったようです.

活動してよかったことの回答では,「健康・筋力・体力の向上」「仲間・友人ができた」「楽しい」「定期的に行く場ができた」といった意見が多かったようです.

活動を長く続けていくために必要なことでは,「体操以外の活動の広がり」「それぞれの参加者が役割をもつ」「楽しく活動をする」「無理をしない」といった回答が多かったようです.

活動をして困ったことや難しいことでは,「活動場所の確保」「参加者が増えない」「活動費」が挙がっております.

専門職や行政に支援してほしい内容については,「体操やストレッチの指導」「健康に関する情報提供や生活指導」「疼痛時の対処法」「活動内容を広げる提案」が挙げられております.

 

この研究結果から考えると,活動により健康や筋力・体力が向上し , 仲間や友人とのつながりができたと感じ,長く活動を続けるためには体操以外の活動の広がりや参加者同士が役割をもつことが必要だと感じていることがわかります.

また歩いて通える範囲に活動場所が無いなど活動場所に関して困難と感じているグループが多くあります.

さらに介護予防活動を進めるにあたり,介護予防に効果のある体操の紹介や指導が専門職や行政に求められているとうことがわかります.

 

 

 

 

 地域の通いの場を立ち上げ,運営するボランティアの実態調査 

通いの場の運営においてボランティアとしてリーダー的に体操指導を行う人材は不可欠です.

最近ではリーダーとかサポーターとか呼ばれるような中心となって運動指導を行う人材を育成する事業に取り組む市町村も多くなっております.

この調査では地域で活動するリーダー(サポーター)の実態に関して質問紙調査を用いて調査を行っております.

対象は平成29 年12 月時点でリーダー(サポーター)として登録している503 名となっております.

この503名を対象に郵送による質問紙調査を行った結果,回収数は318 通(回収率63.2%)となっております.

主な調査内容ですが,性別・年齢・居住地域等の基本属性に加え,サポーター養成講座受講以前の地域活動(老人クラブ,自治会,サークル,サロン等)への参加状況と,現在参加しているサポーターの活動状況としております.

けっかですが,サポーターの基本属性は,男性128 名(年齢73.4 ± 4.8 歳),女性190 名(年齢70.9 ± 4.4 歳)と男女比率は男性41.7%,女性58.3%とやや女性が多い結果となっております.

実際にサポーターとして活動しているものについても,男性96 名,女性163 名で男女比率は男性37.1%,女性62.9%とやはり女性が多い結果となっております.

サポーター養成講座受講以前の地域活動への参加状況は,「あまり参加したことがない」及び「参加したことがない」が101 名と3分の1を占めていった一方で,現在サポーターの活動状況として「2 箇所以上に参加」,「1 箇所に参加」,「不定期に参加」と返答したものが79 名(男性27 名,女性52 名),「参加していない」が20 名(男性11 名,女性9 名),未回答が2 名であり,男性サポーターの活動参加率は71.1%と非常に高い結果となっております.

一般に男性は,現役時代に地域社会との関係が希薄であると,定年退職後,孤独化するケースが多く,その防止には地域との接点を作るきっかけが必要と言われております.

この研究の結果から男性は女性よりもサポーター割合は低いものの,サポーター養成講座受講前後での地域活動への参加状況の変化は非常に大きく,こういった事業は男性の興味・関心を引き出すことができ,地域に潜在するボランティアの掘り起こしに一定の効果を得られるのではないかと考えられます.

もともと人の前に立って仕事をされていた男性が多いわけですから,そういった方々にサポーターとして活躍していただければ,本当に効率的ですね.

 

 

 

 男性高齢者における通いの場へのニーズ調査と特化型介護予防教室 

この調査も男性にスポットを当てた研究です.

近年,活動と参加等に焦点を当てた新しい介護予防が推奨されておりますが,地域サロンなどの通いの場への男性参加率は低い水準に留まっており,この原因に対する直接的な調査も十分に実施されていないのが現状です.

この研究では地域における通いの場に参加していない男性高齢者を対象に,健康づくりを目的とした通いの場への参加を促進または阻害する因子を調査し,結果を反映させた男性特化型介護予防教室を行い,その効果を検証しております.

対象は通いの場に参加していない男性高齢者201 名としております.

調査内容は男性参加の促進因子,通いの場への不参加理由となっております.

またこの調査結果を基に男性参加の促進因子である「目的の明確化」「1 人でも参加可能」「選択性のあるプログラム」などを反映させた男性特化型介護予防教室「男の運動教室」を週1回,6 週間実施し,教室前後での身体機能評価および事業評価アンケートを行っております.

運動プログラムは「体力の向上」を目的とし,マシントレーニング,ストレッチング,有酸素運動を中心とし,機器の選択および負荷量は理学療法士の助言の下に参加者自身で設定できる様にしております.

身体機能評価には握力,長座体前屈,膝関節最大等尺性筋力を測定しております.

まずニーズ調査の結果ですが,男性参加の促進因子については「1 人でも気軽参加できる場」(41%)「目的が明確」(35% ) を選択する者が多い結果となっております.

一方で通いの場不参加の理由は「面倒くさいと感じる」が最も多く(32%),続いて「行く必要性を感じない」の順位となっております.

男性に適した運動プログラムに関する設問では「少人数・個別プログラム」(39%),「種目を自身で選択できる」(31%)の回答数が多い結果でありました.

最終t頸に男性特化型介護予防教室を定員15 名で実施しておりますが,脱落者はなく,身体機能の変化では握力および長座体前屈において有意な改善を認めております.

事業アンケートの結果では教室の満足度(非常に満足47%)は高く,次回開催時の参加意向も高い結果となっておりますが(是非参加したい38%,できれば参加したい56%),マシンなどの設備については「設備が無くても参加したい」(13%),「どちらかと言えば参加したい」(47%)に対して,「どちらとも言えない」(20%),「あまり思わない」(13%),「全く思わない」(7%)となっており,トレーニング機器に依存している傾向が伺えます.

健康づくりを目的とした「通いの場」への男性参加には目的の明確化や選択性のあるプログラムの実施が適しており,これらのニーズを反映することにより身体機能向上と満足度の高い教室の実践が可能と考えられます.

一方で男性の場合には機器への依存度が高いといった点が大きな課題であると考えられます.

 

 

 

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