大腿骨近位部骨折例におけるバランス評価

大腿骨近位部骨折
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目次

 大腿骨近位部骨折例におけるバランス評価 

 

大腿骨近位部骨折例の多くは転倒が受傷機転となっていることが多く,受傷前からバランス機能が低下しているクライアントが少なくありません.

理学療法を行う上でも大腿骨近位部骨折例のバランス機能を評価することが重要となります.

今回は大腿骨近位部骨折例に対するバランス評価について考えてみたいと思います.

 

 

 

 

 大腿骨近位部骨折例におけるバランス機能低下 

大腿骨近位部骨折例においては疼痛や筋力低下といった機能的な問題,脚長差や変形といった構造的な問題によって術側下肢での安定性が低下してしまいます.

荷重時の安定性が低下してしまうと,重心移動が不十分となり,骨盤や体幹での過度な代償運動が生じやすいわけです.

代償運動の習慣化は,股関節周囲筋の活動にインバランスや異常な筋緊張を生じさせます.

また股関節周囲のみならず,腰部や膝関節にも過度な力学的ストレスが加わりますので,疼痛や変形などの二次的な問題につながります.

大腿骨近位部骨折例を受傷する高齢者の多くは,加齢によって全身的な運動機能低下を呈していることが多く,受傷前からすでにバランス能力が低下していた可能性があります.

 

 

 

 定性的なバランス評価 

バランス評価は定性的な評価と定量的な評価に分類されますが,必ずこの両者の視点でバランスを評価することが重要となります.

非術側と比べて術側へ重心移動した際には特にバランスを崩しやすいのも特徴です.

また大腿骨近位部骨折は後側方への転倒による受傷が多いので後側方へのバランスを評価することが重要となります.

定性的な評価としては,立位で術側と非術側へ重心移動をさせながら代償性アライメント異常やバランス安定性を評価します.

術側への重心移動時には,歩行時にみられる代償性アライメント異常の有無や程度を確認します.

また坐位でも術側へ重心移動を行えるかどうかを確認すれば,立位において術側へ重心移動を妨げる原因が股関節以遠の機能低下が原因になっているのか,頭部・体幹の機能低下が原因になっているのかを評価することができます.

 

 

 

 定量的なバランス評価 

定量的なバランス評価を行うときには,バランス機能評価の難易度を考えることが重要となります.

一般的に実施される片脚起立テストによるバランス評価では,ほとんどの大腿骨近位部骨折例がテストを遂行することが困難なわけです.

大腿骨近位部骨折例のバランスに影響を与える要因としては,筋力・可動域・疼痛・体性感覚・平衡感覚などの様々な要因が考えられますが,大腿骨近位部骨折例の多くは筋力や疼痛の問題で片脚起立を遂行できないことが多いです.

バランスというのは非常に多くの機能によって構成される能力なわけですが,中でも平衡機能を評価することが重要となります.

大腿骨近位部骨折例の平衡機能を評価するためには,閉脚立位・継足立位・健側での片脚立位の時間を測定すると,術側下肢の筋力や疼痛から独立したバランス機能(平衡機能)を評価することが可能となります.

姿勢保持が可能な時間を計測しておいて,経時的な変化を見れば術後のバランス評価としても簡単に使用できます.

また片脚への重心移動,荷重が十分にできない場合には,最大荷重量を体重計で確認し記録しておくとよいです.

その他にもFunctional reach testやTimed up & Go testなどバランス機能を評価するパフォーマンステストは多く報告されております.

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以前の記事でもバランス機能の階層構造についてはご紹介させていただきましたが,テストによって測定している要素が異なりますので,各テストの特性を考えた上でパフォーマンステストを選択することが重要となります.

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またバランス機能を定量的に評価する上では,バランス機能評価の難易度を考えることが重要となります.

片脚起立は静的バランス評価ではありますが,難易度が高く床効果が生じやすいので,急性期の大腿骨近位部骨折例のバランス機能評価を経時的に評価する上ではあまりお勧めできません.

 

 

今回は大腿骨近位部骨折例のバランス評価について考えてみました.

大腿骨近位部骨折例のバランス能力を評価するためには,筋力・疼痛から独立した平衡機能を評価する視点が重要となります.

またバランス評価を選択する上では,パフォーマンステストの難易度を考慮した上で経時的に変化をみていくことが重要となります.

大腿骨近位部骨折の既往があると反対側の骨折のリスクが高くなりますので,再転倒を予防するためにもバランス能力を評価しバランス能力の向上を図ることが重要となるでしょう.

 

 

 

 

 

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