高齢者に対する退院時指導の基礎知識

投稿者: | 2018年12月11日

 高齢者に対する退院時指導の基礎知識 

われわれ理学療法士・作業療法士はクライアントの退院にあたって退院時に退院後の生活や運動方法に関して指導を行う機会が少なくないと思います.

今回は理学療法士・作業療法士が行う退院後の生活や運動方法に関する指導について考えてみたいと思います.

 

 

 

 退院時指導の定義 

退院時指導は退院計画の一部であり包括的かつ組織的に行われるものです.

退院計画は入院中のクライアントとその家族を対象に退院後の生活における諸課題を解決するためにケアプランを立案し,実践し評価する一連の流れのことを指します.

つまり退院時指導は「クライアントまたその家族などに対して,退院後の生活を見据えて入院時行う指導」と定義することができます.

 

退院時の指導の内容は,動作指導や自主トレーニングなどクライアントに対して直接的に行われるものに加えて,家族や住環境,また地域へ引き継ぐための働きかけなど間接的に行われるものも含めると,非常に多岐にわたります.

クライアント・家族にとって退院というのは,病院といった守られた環境で行われていたさまざまなことを実際の生活場面で行う必要性がでるなど状況が一転します.

つまりわれわれ理学療法士・作業療法士は退院はクライアント・家族にとって,ゴールではなくスタートであるといった認識をもつ必要があります.

 

 

 

 知っておきたい社会資源 

社会盗源は,地域生活を送るうえで社会的ニーズを充足するために活用できる制度的・物的・人的資源の総称です.

社会資源には,法律や歴史などに基づく介護保険や身体障害者手帳などで給付される「フォーマルサービス」と.法律や制度などに基づかない家族・親戚・友人・老人会・ボランティアなどからなる「インフォーマルサービス」に分類できます.

なお社会資源はさまざまな制度があるが、提供されるサービスが重複する場合には,現状では基本的に介謹保険が優先されます.

 

介護保険サービスは他の社会資源と比較して,申請からサービス利用までの期間が短いといった特徴が挙げられますので,臨床上も介護保険サービスを使用して短期的に環境調整を行ってといったケースが多いと思います.

いずれにしてもわれわれ理学療法士・作業療法士も介護保険法や身体障害者法等の制度を十分に把握しておく必要があります.

介護保険だけでも通所介護・通所リハ・訪問介護・訪問リハ・訪問入浴・福祉用具貸与・福祉用具購入・住宅改修など様々なサービスの種類が存在します.

各種サービスごとに特徴があり,利用制限もありますので,退院するクライアントにどのサービスが必要かを環境面も含めて考える必要があります.

サービスによっては介護度が一定以上でないとサービスを受けられない場合や,同居者がいるとサービスを受けられない場合もありますので,サービスごとの適応範囲も知っておくことが重要です.

また地域によってサービス供給量にもかなり差がありますので,クライアントの住む地域のサービス供給についても事前に情報を収集しておくとよいでしょう.

 

 

 

 理学療法・作業療法介入のポイント セルフマネジメント 

高齢者に対する運動のメリットとして,転倒リスクの軽減や歩行速度の増加,平均寿命の延長などが報告されております.

退院時の指導の1つにクライアントへトレーニングを指導することがあります.

しかし運動のメリットを理解していながらも継続できないクライアントも少なくありません.

運動の必要性,その目的,具体的成果をクライアントと共有しておくことで継続性を向上させることにつながります.

指導する時期が退院直前の場合には,正しく行えるかフィードバックする機会がなく,正確に行えない状態で退院となってしまうこともあります.

早い段階から計画的に介入することが重要となります.

その他,セルフマネジメントとして疾病や障害によって禁忌動作や特殊な動作方法の習得や体重コントロールなどが必要となることもあります.

 

 

 

 理学療法・作業療法介入のポイント 家族指導 

自宅退院に影響を与える要因の一つに介護力が挙げられます.

主な介護者となることの多い家族の存在は非常に大きいわけです.

入院中に主介護者へ計画的な技術指導,教育が行われた場合には,疾患に対する知識の理解が進み,退院後にクライアントが抱く不安やうつの発症率が減少するとともに,介護者自身の介護負担感の軽減にもつながります.

さらには主介護者が,クライアントに合わせた練習プログラムを継続することで,クライアントの身体機能にもつながります.

こういった報告の多くは,脳卒中例を対象としておりますが,さまざまな障害を抱える高齢者においても,同様のことがあてはまるわけです.

近年,家庭を取り巻く環境は大きく変化しており,独居高齢者の増加,核家族化の進行,共働きなどによる介護力の低下が懸念されます.

こうした背景がある中では.ますます懇切丁寧な家族指導が求められます.

場当たり的な家族指導は,介護背の不安や負担感をあおるばかりか.家庭崩壊をまねきかねませn.

理学療法士・作業療法士は,家族指導を行う上で介護者がすべての役割を背負い込むことが無いよう,技術指導だけでなく社会資源の利用についても検討することが肝要です.

 

 

 

 理学療法・作業療法介入のポイント 住環境調整 

加齢とともに生理機能や運動機能に変化が生じることについては周知の通りです.

長寿社会対応住宅設計指針によると,加齢に伴う変化が生じた場合においても住宅に住み続けることができるよう、旧建設省が発表した住宅バリアフリー化のための設計指針です.

住環境評価や家屋改修案を提示する機会が多い理学療法士・作業療法士にとって参考にすべき基準となります.

一方で高齢者は加齢変化に加えて多椛多様な疾病や障害を抱えている背景もあることから,これらの特性に応じた住環境を個別に調整する必要があります.

住環境設定にあたり住宅改修や福祉用具を導入する場合には,住宅改修や福祉用具使用の目的や生活情報について十分なシミュレーションを行って,その必要性を確認しておくことが重要となります.

十分に事前のシミュレーションが行われていない場合には,導入した住宅改修や福祉用具が,退院後使用されていないことにつながりかねません.

例えば念のために設置するような手すりや福祉用具は使用されない場合も少なくありません.

人浴サービスを利用するクライアントに手すりを導入して不要となってしまうというケースもあります.

またクライアント本人にとって便利であっても,同居家族にとっては邪魔になってしまうなど,住環境調整にあたっては、クライアント本人のみならず一緒に暮らす家族の生活についても十分に考慮する必要があります.

 

 

 

今回は退院時指導について運動指導・社会資源・住宅改修といった視点で考えてみました.

皆様も改めて日々の退院時指導を見直してみてはいかがでしょうか?

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