足底板に関する最新理学療法研究紹介-股関節アライメントに与える影響-

投稿者: | 2018年12月7日

昨年まで行われた日本理学療法士学会が,今年度から完全に分科会学会単独での開催となりました.

平成30年12月15-16日に福岡県で第6回日本運動器理学療法士学会が開催されます.

今回はこの第6回日本運動器理学療法士学会の一般演題の中から足底板関連の面白そうな研究をいくつかご紹介いたします.

 内外側ウェッジが走行時の後足部運動と膝・股関節運動に及ぼす影響 

内側・臥位側ウェッジによる足底板療法は古くから用いられる装具療法の1つです.

理学療法士も足底板を用いてマルアライメントに対して介入を行う機会は少なくありませんが,この足底板を使用した介入研究というのは日本では実はあまり多くありません.

膝蓋大腿疼痛症候群や腸脛靱帯炎等のランニング障害には,動作時の後足部外返し角度や,膝関節内外転・内旋角度、股関節の内転・内旋角度の増大が関連することが報告されております.

内側ウェッジを踵部に挿入することで動作時の後足部運動や膝・股関節運動を変化させることが報告されておりますが,内側および外側ウェッジ装着時の走行における後足部運動と膝・股関節運動を同時に検討した研究はないようです.

この研究では内側および外側ウェッジが走行時の後足部運動と膝・股関節運動に与える影響が検討されております.

対象は健常成人男性 14 例となっております.

反射マーカーを下肢に 17 個貼付し,赤外線カメラ 7 台を用いて,シューズ着用下でのトレッドミル走行(12 km/h)を記録・解析しております.

ウェッジに関しては外側 10°・外側 20°・内側 10°・内側 20°の 4 種類のウェッジを踵部に挿入し,これらにウェッジ非装着条件を加えた 5 つの条件での走行をランダムに実施しております.

下腿に対する後足部外返し角度および膝関節内外転・内外旋角度、股関節内転・内旋角度の最大値を算出し,これらの角度を一元配置反復測定分散分析を用いて比較しております.

結果ですが,内側 10°条件・内側 20°条件は,ウェッジ非装着条件・外側 10°条件・外側 20°条件比較して,後足部外返し角度最大値が有意に低値をであったと報告されております.

また内側 10°条件・内側 20°条件(6.0 ± 3.7°),ウェッジ非装着条件(4.7 ± 3.4°)に比較して,膝関節内旋角度最大値が有意に高値を示したと報告されております.

加えて内側 20°条件は,外側 10°条件に比較して,膝関節内旋角度最大値が有意に高値を示したとされております.

この研究の結果から内側ウェッジの装着が走行時の後足部外返し角度と膝関節内旋角度に影響を与えることが明らかになったわけです.

内側ウェッジの装着によって後足部外返し角度の制動は可能になるわけですが,膝関節内旋角度は増大し,膝および股関節運動の制動効果は十分でないと考えられます.

臨床では膝関節・股関節のアライメント修正を図る目的で,上行性運動連鎖を利用してウェッジを使うことも多いわけですが,この研究からは,ランニング障害に関連した膝・股関節運動の修正を目的としたヒールウェッジの使用は効果に限界があるということになります.

 変形性股関節症に対する入谷式足底板の効果について 

この研究は変形性股関節症例の疼痛に対する入谷式足底板の効果を検討しております.

変形性股関節症は関節炎や骨変形を主体とし,関節可動域制限と強い疼痛を認めることが知られております.

特に歩行時痛は大きな問題となりますが,歩行時痛を軽減させるためには股関節へのメカニカルストレスを改善させることが必要となります.

この研究では入谷式足底板の使用が変形性股関節症例の荷重時の疼痛を即時的に改善するか否かを検討しております.

対象は変形性股関節症例12 名,15 肢となっております.

対象の股関節の平均屈曲角度は 65.3 ± 14.64°であり,病期は日本整形外科学会の病期分類にて進行期 10 肢,末期 5 肢と,関節症が進行した症例を対象としております.

歩行時痛の評価には,Numerical Rating Scaleが用いられておりますが,足底板作成前後の歩行時痛を評価しております.

結果ですが入谷式足底板作成前における歩行時痛はNRS6.0±1.2であり,入谷式足底板作成後は1.7±1.4と有意に疼痛が軽減され,全例にて作成の前後で疼痛が軽減しております.

気になる足底板ですが,全例で距骨下関節回外誘導,第 1 列底屈/回内誘導となっております.これはテーピングを用いて事前に評価を行った上で足底板が作成されております.

距骨下関節回外誘導は運動連鎖にて股関節を内旋させ,大腿骨頭と寛骨臼の被覆率を高め,股関節を安定させます.

距骨下関節回外誘導は足部を硬くし,第1 列底屈/回内誘導は立脚期中期以降に下腿の前方移動を促すことができます.

足部剛性の向上と足関節底屈モーメントの増加による立脚期後半の股関節伸展の代償が,歩行時痛の軽減に寄与したものと考えられます.

先ほどの研究ではウェッジのみの足底板では股関節の運動に変化をもたらすことは難しいといった結果であったわけですが,この研究では足底板が股関節のアライメント変化に寄与し,股関節症の疼痛軽減に有効だと結論付けられております.

やはり距骨下のみならず足部全体に対してアプローチすることが重要だと言える結果ではないでしょうか?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です