理学療法士・作業療法士に重要な股関節内転筋群の働きについて

人工股関節全置換術
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目次

股関節内転筋群の働きについて

股関節内転筋群ってどういった印象があるでしょうか?

内転可動域にしてもそうですが,股関節内転方向というのは他の股関節の運動方向に比較すると,これまであまり着目されてこなかった印象があります.

今回は股関節内転筋群の働きについて理学療法士の視点で考えてみたいと思います.

 

 

 

股関節内転筋群の特徴

股関節内転筋群には,大内転筋・長内転筋・短内転筋・恥骨筋・薄筋等があります.

考えてみますと股関節内転筋群は,大腿筋群の中で大きな割合を占めます.

また股関節周囲におけるの単関節筋としても重要な筋でああります.

しかしながらこれまで股関節内転筋群の機能についてはあまり議論されてきませんでした.

多数存在する股関節内転筋群に共通する機能は,当然ながら前額面上で股関節の内転する作用です.

しかしながら,われわれの日常生活を考えた場合には,前額面で股関節を内転する動作というのはあまり多くありません.

スポーツ動作を考えれば,サッカーのキック動作をはじめ,股関節を内転する動作というのはいくつか考えられますが,健常人の日常生活動作の中にはほとんどなく,Open Kinetic Chainで股関節を内転する動作というのは足を組む動作くらいでしょうか?

もちろんClosed Kinetic Chainで骨盤の側方動揺を制御する作用も考えられるわけですが,これについては後述いたします.

 

 

 

股関節内転筋群が体幹下部の安定性に与える影響

理学療法を行う上で,身体の運動制御を改善するためには,体幹下部の安定性が必須となります.

体幹下部の安定性には,インナーユニットと呼ばれる腹横筋・横隔膜・多裂筋・骨盤底筋群といったいわゆるコアを構成する筋群が重要な役割を担っております.

このコアを構成する筋群の中でも,コアの下層を構成する骨撚底筋群の役割は非常に大きいのです.

骨盤底筋群といえば尿失禁の予防・改善を目的にトレーニングが行われます.

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尿失禁に対する骨盤底筋群の役割は以前の記事でもご紹介させていただきましたが,骨盤底筋群のトレーニングというのは運動をイメージすることや,自覚的に収縮感覚を得ることが難しいわけです.

特に高齢者に骨盤底筋群のトレーニングを指導するのは難しいですね.さらに骨盤底筋群のトレーニングというのはエクササイズに取り組んだ感覚が薄いのでトレーニングの継続性が低いのも特徴です

 

股関節内転筋群の中でも,大内転筋は骨盤底の筋膜に連続するとされております.

股関節内転筋群は骨盤底筋群よりも収縮感覚が得られやすいため,股関節内転筋群を利用して骨盤底筋群の収縮を促す方法が有用です.

股関節内転筋群を収縮させながら,下部体幹筋群の安定性の向上を図ることができれば,コアの安定性を向上させることにつながりますし,高齢者における尿失禁の予防・改善にも有効だと思います.

 

 

矢状面における股関節内転筋群の作用

前述したように日常生活動作では,前額面上で股関節を内転させる機会というのは非常に少ないわけです.

股関節内転筋群には大内転筋・長内転筋・短内転筋・恥骨筋・薄筋等の多くの筋が存在するわけですが,これらの筋は股関節の無い・作用に加え,股関節を屈曲・伸展させる作用があるといった点にも注意が必要です.

股関節内転筋群のほとんどは,各筋の起始・停止を考えれば股関節屈曲作用を有しているわけですが,屈曲角度が大きくなると伸展作用に転じる筋があります.

Kapandjiによると,長内転筋には大腿骨屈曲50°の位置では屈曲作用がありますが,屈曲70°では伸展方向の作用に変わります。短内転筋も同様に,大腿骨屈曲50°までは屈曲方向の作用があり,その後は伸展方向の作用があります.

つまり股関節内転筋群には,股関節屈曲位での伸展作用と,股関節伸展位での屈曲作用があると考えられ,股関節内転筋群は前額面上で股関節を内転するといった主な機能に加え,矢状面上で股関節を閉じる機能を有すると考えられます.

こういった股関節屈曲・伸展作用は本来の伸展筋群を補助するといった役割がある一方で,股関節伸展筋群の機能低下によって過度に股関節内転筋群が収縮し,そのために疼痛が出現するといった場合もありますので,注意が必要です.

特に股関節外転位・膝関節内反位アライメントを呈した内側型変形性膝関節症例においては,大内転筋群によって股関節伸展運動を行っているケースが少なくありません.

 

 

股関節内転筋群の身体を正中化させる機能が重要

股関節内転筋群が前額面上・矢状面上の両方で股関節を閉じる機能を有するとすれば,下肢を前額面上・矢状面上で正中位に近づける機能があると考えられます.

また上述した下部体幹安定化機能を考えると,骨盤帯および下肢を正中化する働きがあるということになります.

 

 

 

今回は股関節内転筋群の働きについて理学療法士の視点で考えてみました.

股関節内転筋群には下部体幹安定化機能に寄与し,前額面・矢状面上で身体を正中化する機能があると考えられます.

普段あまり着目することのない股関節内転筋群ですが,われわれ理学療法士も改めて股関節内転筋群の機能を見直す必要があると思います.

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