人工膝関節全置換術(TKA)後の膝関節可動域(ROM)制限を考える

投稿者: | 2018年11月21日

 人工膝関節全置換術(TKA)後の膝関節可動域(ROM)制限を考える 

変形性膝関節症に対する人工膝関節全置換術(TKA:total knee arthroplasty)は年々,施行件数が増加しており,手術主義やインプラントの技術革新によって,術後の入院期間も短縮傾向にあります.

理学療法士も人工膝関節全置換術(TKA)の理学療法に携わる機会は少なくないと思われますが,人工膝関節全置換術(TKA)後には関節可動域(ROM)獲得に難渋するケースも少なくないと思います.

今回は人工膝関節全置換術(TKA)に対する関節可動域(ROM)運動について考えてみたいと思います.

 

人工膝関節全置換術(TKA)後の関節可動域制限の原因としては様々な要因が考えられますが,人工膝関節全置換術(TKA)例にの関節可動域(ROM)に影響を与える要因として,手術における進入方法手術における術中操作術後炎症術後アライメント変化インプラントによる等が考えられます.

 

 

 手術侵襲による影響(進入方法) 

進入方法として,一般的には前内方アプローチが多く,そのなかでもmedial parapatellar approachsubvastus approachmidvastus approachなどが用いられることが多いです.

術式によっても内側広筋への侵襲の程度が異なるため,理学療法士が関節可動域運動を行うにあたっても,アプローチ方法(進入方法)を確認することが重要となります.

人工膝関節全置換術(TKA)後の創傷治癒過程においては,皮虐と皮下組織の癒着や筋・筋膜切開後の癒着が生じやすいといった点を考慮する必要があります.

膝閲節屈曲時には膝関節前面の軟部組織が伸張されるため,屈曲可動域が制限されることが多いわけです.

 

 

 手術侵襲による影響(術中操作(軟部組織の剥離,骨鰊の切除)) 

膝関節内反変形が顕著な場合には,関節包内側や内側側副靱帯,縫工筋などが短縮しているため,術中に癒着剥離を行う必要があります.

この癒着剥離によって一時的には関節可動域制限は解除されるわけですが,術後炎症期には再癒着する可能性が高いため注意が必要となります.

また手術手技として,骨切りと軟部組織の剥離操作による膝関節内・外反のバランス確認も重要となります.

術中にはコンポーネント設置後に,下腿を牽引してコンポーネント同士がどの程度離開するかを確認する捜査が行われます.

このコンポーネント同士の接触の程度をギャップと呼びますが,一般的には伸展ギャップと屈曲ギャップを同程度にすることが理想となります.

 

 

この屈曲ギャップ・伸展ギャップが術後の関節可動域(ROM)獲得に関与するとの報告ありますが,現在のところ一定の見解は得られておりません.

しかしながら屈曲ギャップ・伸展ギャップが屈曲時や伸展時の関節安定性に影響を及ぼすため,ギャップが関節可動域(ROM)に影響を及ぼす可能性は十分に考えられるため,手術所見にてギャップを確認しておくことが重要です.

 

 

 術後炎症による影響 

人工膝関節全置換術(TKA)後急性炎症期には瘤痛閾値が低下することで,膝関節運動などの物理的ストレスによって,容易に瘻痛が誘発されます.

また人工膝関節全置換術(TKA)後に特徴的な疼痛として伏在神経膝蓋下枝による膝内側痛も重要となります.

 

 

伏在神経は内転筋管のなかを通っており,アライメント変化に伴う筋緊張変化による絞拒や,手術における進入時の侵襲による神経障害が主な要因と考えられている.

 

 

また術後炎症によって血管浸透性が亢進することで浮腫や血腫が生じやすく,膝関節周囲に腫脹が生じやすいといった点にも注意が必要です.

特に抗凝固薬を内服しているクライアントの場合には,術前・術後はへパリンに置換されるため,術後は抗凝固能の亢進に伴い腫脹が増加することが多いといった特徴があります.

 

さらに筋緊張の増加(筋スバズム)による関節可動域(ROM)制限にも注意が必要です.

術後炎症に伴う疼痛や腫脹によって,大腿四頭筋の筋出力は抑制されます.

加えて術後は,関節運動の際に患肢を動かすことに恐’布心があるため,筋緊張が増加しやすいといった点にも注意が必要です.

膝関節屈曲時には大腿四頭筋が,伸展時はハムストリングスや腓腹筋などの筋緊張が増加しやすく,運動方向と拮抗作用を有する筋群の過緊張には注意が必要です.

 

 

 

 術後アライメント変化による影響 

内側型変形性膝関節症例では,術前は関節変形により膝関節軽度屈曲位かつ内反位を呈していることが多いわけです.

人工膝関節全置換術(TKA)によって膝関節かつ生理的外反位に矯正されると,膝関節内側および後方の関節包,靱帯,筋などが相対的に伸張位となり短縮が生じます.

この関節包の短縮や縫工筋をはじめとする筋群の短縮もまた膝関節の可動域制限の原因となりますので注意が必要です.

 

 

 

 インプラントによる影響 

インプラントにはいくつか種類があり,関節内運動のロールバックを誘導する機構がそれぞれ異なります.

そのため関節内運動を確認する際には,使用インプラントの種類を確認することが重要となります.

本邦における人工膝関節全置換術(TKA)で用いられるインプラントとしては,Posterior Stabilized(PS)とCruciate retaining(CR)の2種類が多く用いられます.

 

PS型では後十字靭帯は切離されるため,ポスト・カム機構により関節運動が制御されます.

ロールバック機能がポスト・カム機構によって人工的に生じることになるわけです.

一方でCR型では後十字靱帯が残存しており,比較的生理的なロールバック機能が生じます.

インプラントによって関節包内運動の制御機能は異なりますが,人工膝関節全置換術(TKA)後には関節構成体による関節包内運動が可動域制限の因子となることは少ないとされております.

 

 

今回は人工膝関節全置換術(TKA)後の関節可動域制限について考えてみました.

人工膝関節全置換術(TKA)後における関節可動域運動は理学療法士が携わることも多いので,関節可動域制限を引き起こす原因を知っておくことが重要です.

 

 

 

 

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